アルスエレクトロニカセンター特別ツアー【前編】
おはようございます。
リンツに来てから、毎週のお花を買うのがひそかな楽しみになりました。
(今週はピンク☺️)
さて、先日アルスエレクトロニカセンターの特別ツアーをしていただきました!この日は、センターチームのみなさんが私のために特別にプログラムを組んでくださって(本当にありがとうございます!)、朝から夕方まで丸一日かけてセンターをまるっと体感させていただきました。
今日は、その時のことを思い出しながら、「そもそもアルスセンターってなに?」という方に向けて、センターのことを紹介させていただきます。
ただ、はじめに書かせていただきたいのですが、写真も文章も到底追いつかないくらい、グインと身体を突き抜けるような体験がたくさんできるので、コロナが落ち着いたら、ぜひ実際にリンツにお越しください!୧(ᕯ˙ᗨ˙ᕯ)୨
すんごいボリュームだったので、noteも前編・後編の2回です^^
まず、アルスエレクトロニカセンターはドナウ川のほとり、リンツ市の中心にあります。
夜になるとカラフルに光るのが特徴で、リンツ市の観光案内では必ずと言っていいほど写真が使われるようなメインスポットになっています。
夜の川にうつる橋とセンターの景色は、何度見てもため息が出ます。
(センターの入り口にはミニオブジェが)
アルスエレクトロニカセンターができたのは、1996年。今年で25周年です。
「アート、テクノロジー、社会」をテーマにするアルスエレクトロニカが、「未来」を市民に提供することを目的に作ったのがこのミュージアム。
先日、同時期にアルスエレクトロニカ・フューチャーラボを設立されたホーストさんにインタビューさせていただいたのですが、そこでもホーストさんは「センターの最も大きな目的は、道を歩いている人、一般市民に問いかけることで、ひとりひとりが未来について考え、向き合う機会を提供することだ」とおっしゃってました。
世界的なメディアアート機関としてのイメージが強いアルスエレクトロニカですが、センターを見ると、すごく「市民」にフォーカスして活動をされていることが多いのに気がつきます。
credit: Barbara Heinzl
(過去のフェスティバルでの市民参加型プロジェクトの様子)
「未来」に関するミュージアムなので、展示内容も常にアップデートされていて、ここ最近では2019年に大きなアップデートが行われました。
こちらが現在の展示の様子。6月はじめに新しい展示がオープンしたのですが、それについてはまた別に書かせてもらいます。
主な展示内容は、
・Deep Space 8K(大きなシアタードーム!なんと8K!)
・Understanding Artificial Intelligence(人工知能に関すること)
・Global shift(気候変動や宇宙ゴミなど地球環境に関すること)
・Machine leaning Studio(実際に機械学習を体験できるもの)
・Ars Electronica labs(スマートマテリアルやバイオラボ、シティズンラボ、セカンドボディラボなど)
・AI×Music(個人的にときめき・・・)
・Mirage&Miracles(ARなどの展示)
・Kids' Research Laboratoty(こども向けラボ)
などなど。。。
アート×テクノロジーに関するいろんなトピックが並んでいます。
Credit: Ars Electronica / Robert Bauernhansl
今回、わたしを案内してくださったスタッフさんは全部で4名。
センター部門を取り仕切るスタッフさんや「インフォトレーナー」と呼ばれるミュージアムのコミュニケーターさんです。
このインフォトレーナーさんたちの存在が、アルスエレクトロニカの精神になっている、と言われるくらい彼らはとても重要な存在で、お客さんを誘導したり注意するだけでなく、問いかけながら話をすることで、お客さんの体験がより深いものになるようにサポートしています。(このあたりの話もまた別のnoteで書きたい)
Credit: Magdalena Sick-Leitner
まずはじめに案内してくださったインフォトレーナーさんは、リンツの歴史とアルスセンターの由来、そしてアルスが掲げる「アート、テクノロジー、社会」というのがどういう考え方なのか、について教えてくれました。
演劇のバックグラウンドがあり、今も劇場のディレクターとして働かれている方で、そのヒューマニスティックな視点から語ってくださる話はとてもおもしろかったです。
リンツはもともと第二次世界対戦時に、大きな軍事工場が作られたことで栄えたまちで、戦後も重工業を中心とした産業で成り立っていました。しかし、1970年代後半のエネルギー危機でそれらは一気に廃れてしまい、失業者にあふれ、街は危機に追い込まれます。
そんな状況を背景に、リンツの街を文化・アートで復活させようとできたのが、アルスエレクトロニカです。
実は、アルスセンターの独特の外観は、「コンテナ船」を意識して作られたそうで、斜めの線は、船が揺れている様子を表しています。
credit: Nicolas Ferrando, Lois Lammerhuber
なので、アルスが掲げる「アート、テクノロジー、社会」は、単に3つの言葉を並べているわけではなく、「アートやテクノロジーが、社会に対してどんな影響をもたらすのか。それがどうわたしたちの日常を変えていくのか」という視点が入っています。
街の名前に「アート」と「テクノロジー」という冠をかぶせただけではなくて、その先にはいつも「社会」があって。
「リンツ市」という本当に人々が生活する空間を舞台に、むしろそこをひとつの大きな実験場として、この3つの掛け算を常に実験し続けているような状態です。
アルスセンターの展示は、そうした「社会」という目線から読み解いていくと、よりおもしろいものになります。
credit: Robert Bauernhansl
そして、そのセンターの中でも、特に人気を集めているのが「Deep Space 8K」と呼ばれるシアター。
16m×9mのスクリーンに映し出される2Dや3Dの映像を、実際に中に入って見ることで、その映像の世界に没入することができます。
Credit: Ars Electronica Center / Florian Voggeneder
わたしも、実際の速さで走る象と競争してみましたが、完敗でした(象なめてました・・・)
ただ大きい、広い(!)だけじゃなくて、3Dグラスを使って立体的な映像の中に入れたり、最近では、リアルタイムに3Dオブジェクトを映し出してライブストリーミングするなど、まさに未来の「体験」が詰まったスペースです!
そして、今回のnoteでもうひとつ紹介したいのが、Global Shiftと呼ばれるエリア。
こちらは気候変動や宇宙ゴミの問題など、いわゆる「社会」の授業で習うようなテーマが、アートという切り口で展示されています。
Credit: Ars Electronica / Martin Hieslmair
文字の情報よりも、手に触れて遊ぶことができたり、音や映像で楽しめるものが多くて、感覚的に問いに触れることができます。
Credit: Ars Electronica / Robert Bauernhansl
(Hallo!)
Credit: Ars Electronica / Robert Bauernhansl
インフォトレーナーさんと話していておもしろいなあと思ったのは、アルスセンターは「未来」をテーマにしているけれど、このエリアに展示されているものは、過去のデータや現在のことがほとんどで、「未来予測」的なものはほぼ展示されていません。
それについてどうしてか尋ねたところ、「ここで過去と現在について知ってもらって、それをもとにそれぞれが未来を考えてほしいから」とおっしゃってました。
ひとつの答えのように未来を示すのではなく、未来について考えるきっかけを作る場所、「コンパス」を作る場所としてセンターが考えられています。
ちなみに、このGlobal Shiftエリアの上の階には、展示で得た知識をもとに、未来について話し合うための「Citizen lab」というエリアがあります。
ということで、今回はアルスエレクトロニカセンターについて、少し書かせていただきました。ウェブサイトにもたくさん情報が載っていますが、実際にセンターでインフォトレーナーさんとお話ししながら体験すると、何倍もおもしろくなると思います。
ご協力いただいたスタッフの皆さん、ありがとうございました!
次は【後編】でちがうエリアを紹介したいと思います^^
最後までお読みいただきありがとうございました!
(トップの写真Credit: vog.photo)