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友達の力

「ちょっと、電話代わってもらっていいですか?うちも子どもに代わるので。」

ママ友からの電話だった。
息子に電話を代わって欲しいと言っている。

うーん、電話に応じてくれるかなぁ、うちの子…

私のママ友と呼べる唯一の人。
保育園のときから家族ぐるみで仲良くしている。
お互いに心地良い距離感で付き合っていると思う。

今日はその家族とお祭りに行こうという話になっていた。
でも、ちょっと無理かも。ごめんなさい、連れ出せなさそうですってLINEをしたら、電話がかかってきたのだった。

息子は朝から寝室にこもってゲームに熱中している。
文字通り、熱中している。
話し掛けることは愚か、物音を立てるだけで神経質に反応し、怒り出す。
これが自閉症と言われる所以かな、なんて考える余裕が出てきた私。
いつものことだ。
だけど、ゲームばかりでは、やはり心配だ。
夢中になると、トイレや水分補給も忘れて際限なくのめり込んでしまうのだ。
できることなら外に連れ出して、他のことにも目を向けて欲しいな、と常々思っている。

「おーい、リョーマから電話だよー」
スマホをスピーカー通話にして息子に差し出す。

「もしもし?お祭り行こうよ。もう準備して待ってるよ」友達が言う。

「あ、リョーマ?俺、今、〇〇っていうゲームやってるんだ!知ってる?めっちゃ良いとこまで来てて!あのアイテムもゲットしたし、今、5ステージまで来てて!あとね、▲☆△●☆◎!!!…」ゲームから視線を離さず、興奮気味に早口で喋りまくる息子。

「うん。音で分かるよ。お祭り行かないの?」
音で何のゲームか分かるのか。リョーマも中々だな、と心の中で思う私。

「行くけどさ、ちょっと待ってて!今まじでいいとこなんだよ!うわぁぁー!!!うおぉぉー!!!▲☆△●☆◎!!!…」


「…今から迎えに行きますね。」と、ママ友さん。
わざわざうちまで来てくれた。

「おーい。お祭り行くよー!早くしろー!」と友達が部屋まで呼びに行ってくれた。

ゲームをやりながら(ゲームを友達に見せたい)友達に着いてくる息子。やっと寝室から出てきた。
そのまま流れで車に乗り込むことに成功。

連れ出せた…!!

友達ってすごい。
母にはできないことを、あっさりとやってのけた。

そして、ママ友さんもありがとう。

人付き合いを避けてきた私にとっても
「友達って、いいな」と思える出来事だった。

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