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遊園地にて

遊園地(るなぱあく)の午後なりき
子供たちの歓声響き
回転木馬のやさしく
串焼きの香り
群集の上を広がりつ。

今日の日曜を此所に来たりて
われら模擬飛行機の座席に乗れど
側へに思惟するものは寂しきなり。
なになれば君が瞳孔に
やさしき憂愁をたたへ給ふか。
座席に肩を寄りそひて
その顔を携帯電話に記録させ給へや。

見よこの飛翔する空の向うに
一つの地平は高く揚り また傾き 低く沈み行かんとす。
孟春に迫る落日の前
われら既にこれを見たり
いかんぞ人生を展開せざらむ。
今日の果敢なき憂愁を捨て
飛べよかし! 飛べよかし!

明るき一月の外光の中
嬉嬉たる群集の中に混りて
ふたり模擬飛行機の座席に乘れど
君の円舞曲は遠くして
側へに思惟するものは寂しきなり。


「遊園地にて」萩原朔太郎

遊園地(るなぱあく)の午後なりき
樂隊は空に轟き
廻轉木馬の目まぐるしく
艶めく紅のごむ風船
群集の上を飛び行けり。

今日の日曜を此所に來りて
われら模擬飛行機の座席に乘れど
側へに思惟するものは寂しきなり。
なになれば君が瞳孔に
やさしき憂愁をたたへ給ふか。
座席に肩を寄りそひて
接吻するみ手を借したまへや。

見よこの飛翔する空の向うに
一つの地平は高く揚り また傾き 低く沈み行かんとす。
暮春に迫る落日の前
われら既にこれを見たり
いかんぞ人生を展開せざらむ。
今日の果敢なき憂愁を捨て
飛べよかし! 飛べよかし!

明るき四月の外光の中
嬉嬉たる群集の中に混りて
ふたり模擬飛行機の座席に乘れど
君の圓舞曲は遠くして
側へに思惟するものは寂しきなり。

感想

実家の群馬に一泊二日で帰ってきました。
朔太郎の「遊園地にて」から名をとった「るなぱあく」にも、2年ぶりに行ってきました。新しい迷路系の遊具もあって楽しかったです。
息子が、この飛行機乗ったら帰るよ、と言ったら寂しい顔をするんです。
楽しいのに瞳の中に寂しさがある。
朔太郎の「遊園地にて」とは違うのでしょうが、そのつもりでオマージュしました。

群馬県前橋市のるなぱあく

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