3月の本棚
最寄りの駅の近くに桜が咲いていた。花びらがホームと線路に降り注ぐのを見て、ここに引っ越してきて良かったなと思った4月。
昨年引っ越しをして、また図書館にも通うようになって、3月の連想ゲームのような読書体験が楽しかったので、記録を残しておきます。
1冊目:『ファンタジーを書く~ダイアナ・ウィン・ジョーンズの回想~』/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
最初のきっかけは、図書館で偶然見かけたダイアナ・ウィン・ジョーンズ『ファンタジーを書く』を手に取ったことでした。
私がまだ小学生や中学生だった頃に、夢中になって読んだ本がハウルやクレストマンシーでした。この本が出たときに、挿絵の佐竹美保さんの原画展にも行って、サインももらったのに、なぜか読んでなかった1冊。
図書館の棚を巡っているときに出会ったのは、運命だった気がして。
講演記録やエッセイをまとめた本ですが、指輪物語の評論や彼女の生い立ちを追うのは面白かったです。なかなか凄い人生を歩まれていましたが、彼女の息子が「母は子供時代をそのように記憶するしかなかったのだろう」と言っていたのが印象に残っています。
2~4冊目:ハウルと動く城シリーズ/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
・魔法使いハウルと火の悪魔
・アブダラと空飛ぶ絨毯
・チャーメインと魔法の家
ダイアナの本を読もう!と思い、久しぶりに再読しました。ハウルは映画も好きですが、原作にはパワーがあります。ハウル側の視点がラスト近くまでミスリードされていく展開だったり、実は現代との繋がりがあったり。わたしは、何をしているのかよく分からないハウエル・ジェンキンスおじさんが結構好きです。
アブダラとチャーメインはハウルの続きでありながら、彼らの物語ではないのですが、事件に巻き込まれてゆくハウルとソフィ、そしてアブダラと<夜咲花>やチャーメインたちが愛しくなります。
5冊目:『これは王国のかぎ』/荻原規子
アブダラを読んで、アラビアンナイトの世界といえば!ということで再読したくなった1冊。
失恋した上田ひろみが、ドナルド・ダックのぬいぐるみに導かれた先は、アラビアンナイトの世界だった。魔人族になった上田ひろみ(ジャニ)が、出会ったひとびとの願いを叶えようとする話なのですが、このアラビアンナイトの世界で生きる人々と現実世界の友人たちの姿が重なり、ひろみちゃんの気持ちが整理されてゆくのが好きです。
今思えば、不思議の国に行って帰ってくる話が好きなのは、この本の影響かもしれないと思いました。
(いくつかの出版社から出ていますが、1番好きなのは中央公論新社のノベルス版です。文庫も同じイラストのカットが使われています)
6冊目:『樹上のゆりかご』/荻原規子
『これは王国のかぎ』の上田ひろみちゃんが高校生になり、高校で起こる事件に巻き込まれてゆく話です。
巻き込まれてゆくけれど、ラスト近くまで主人公なのに第三者的な立ち位置で進むので、「これは君の物語ではない」というのを突き付けられている気持ちになります。ひろみちゃんの通う高校が、男子中心で進む風潮があり、その疎外感とリンクしているのが、すごいなと思いました。
(この本もいくつかの出版社から出ていますが、わたしは理論社の本が好きです)
7冊目:『サロメ』/原田マハ
『サロメ』の挿絵を描いたオーブリー・ビアズリーと姉のメイベル、作者のオスカー・ワイルドの間で起こる、サロメ誕生に纏わる話。
何も考えず、『ファンタジーを書く』と同じタイミングで図書館から借りていて、偶然に驚きました。『樹上のゆりかご』のなかで、文化祭の出し物で「サロメ」を演じる場面があり、それがとても需要な場面になります。
わたしが『サロメ』とはじめて出会ったのも、『樹上のゆりかご』でした。文庫版の『サロメ』を購入した記憶があります。
『サロメ』が出版されたときの社会の風潮も、ビアズリーのことも詳しくなかったので、とても興味深く読みました。メイベル視点で進む話ですが、彼女の弟への愛がとても重く、それがまた、この話に花を添えていると思います。
今は、クレストマンシーを再読しています。
こういう、読みたいと思う本が繋がってゆく読書体験はとても楽しいですし、面白いです。本が溢れているので、まだ手にしたことがない本を読むべきなのは承知しつつ、つい再読してしまう。
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