海の見える旅館で2泊3日の貸切結婚式を挙げた話①
結婚式は家族だけでしよう。
自分たちの人生の節目の儀式について考えるにあたり、私たち夫婦はわりと早い段階でその結論にたどり着いたと思う。
◇
私は「結婚式」が好きだ。
初めて招待された結婚式で友人代表のスピーチをした日を皮切りに、有難くも本当にたくさんの友人の結婚式に参加させてもらってきた。
どの子がどんな会場で愛を誓い、どんなデザインのドレスを着て、パートナーの隣でどんな笑顔で笑っていたか、今でも一つ一つ鮮明に思い出すことができる。
それぞれの友人らしさとおもてなしのこだわりがぎゅうっと詰まったその空間に、私のための席が用意されているという幸福。
私もあんな時間をみんなのために用意したい。
これまで共に過ごした日々を振り返り、その友情に報いたい。
いつか叶うだろうと思っていたそんな憧れを実現させることは、新型コロナウィルスの感染拡大によって、とんでもなく難しいものになってしまった。
親族以外の友人を招いての結婚式や披露宴が法的に禁止されているわけでもないし、対策を講じた上で決行されるご夫婦もいる。
だけど、私にはどうしてもできなかった。
これまでの人生を見守ってくれてありがとう。
こんな私も幸せになれたよ。だから安心してね。
そんな想いを伝えるための、みんなに安心してもらうための結婚式なのに、コロナ禍の結婚式に招待されたことで友人本人やその家族を少しでも不安にさせてしまうのだとしたら。
それは本末転倒で、自分のエゴでしかないと思った。
友達甲斐がない奴だと思われても、「結婚式に呼ばない」という決断こそ、私にできる最大限の友情の表明だった。
◇
とはいえ、結婚式はやりたい。
マッチングアプリで知り合い、夫の適応障害や休職を乗り越えて結婚という道を選んだ私たち。
せめて家族にだけはその覚悟と決意を示す必要があると思ったし、何より二人にとってもけじめとなるような儀式が欲しかった。
そんな訳で私たちは当初、
・都内神社での神前挙式
・その後、料亭などで会食
・ドレスとタキシードでのウェディングフォト
という計画で情報収集を始めていた。
そんな中、運命の旅館「桐のかほり 咲楽」との出会いは訪れる。
◇
きっかけは、テレビ東京で放送された「ガイアの夜明け」のコロナ禍におけるホテル・旅館業界の特集だった。
茨城のとある写真館が後継者不足に悩む伊豆の高級旅館を買い取り、「感動体験」を提供する事業を始めた。
放送では、その写真館が経営を始めた旅館「桐のかほり 咲楽」を丸ごと貸し切って、親族のみで結婚式を行う記念すべき1組目のご夫婦が紹介されていた。
私たちと同じように「結婚式」の形に迷い、悩み、苦しんだご夫婦が2泊3日という時間の中で両家の交流を深め、じっくりとこれまでの人生に向き合い、大切な家族に見守られて未来を誓う。
そんな素敵な結婚式を目の当たりにして、それまで心のどこかで「家族挙式“で”いい」と思っていたものが「こんな家族挙式“が”いい」に大きく変わっていくのを感じた。
都内なら、挙式と会食を合わせても家族と過ごせる時間はせいぜい数時間。
遠方からいらっしゃる夫の両親にはその数時間のためだけに東京に来てもらい、満足に観光も外食もできない都内でリスクと隣合わせの宿泊をしてもらわなくてはならない。
でも、そもそも結婚式の会場が伊豆で、しかも家族貸切の旅館に挙式後そのまま宿泊できるとしたら。
話はまったく変わってくるのではないか。
▼海の見える旅館で貸し切り結婚式を挙げた話②へ続く
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