ウ・ヨンウ弁護士は天才肌
自閉症スペクトラム障害を持つ弁護士の奮闘を描くドラマ。
まず、法廷モノとして見応えを感じました。
各エピソードの前半で、争うべき論点が提示されますが、これまで僕が視聴した法廷モノと比べても、法律の割と細かい専門的なところに踏み込んでいるように思います。
日本の視聴者の中には、かなりの解説が必要な人もいるように感じます。
日本でここまでの内容の番組を制作しようとすると、視聴率がとれないなどの声が出てきそう。
悲しいことだと捉えるべきだと思います。
さて、このドラマでのウヨンウ。
自閉症の彼女ですが、記憶力に優れていて、名門を首席で卒業。
司法試験も超高得点。
第一話から、新人の彼女が、刑法で裁かれようとしていてる被告人に対して、執行猶予をとれば良いという既成路線で対処しようとする法律事務所の方針に反対の意向を示し、「これは民法の問題。被告人の今後の生活を考えて対処すべき」と見抜き、方針変更させる場面。
自閉症で、「普通」の人とは違う彼女の能力の高さを表現するシーンで感じ入りました。脚本が素晴らしい。。
ウヨンウの法律観にも、新鮮さを感じました。
ウヨンウは、一般には堅いものと捉えられる傾向にある法律を、人間の人権を守る、愛すべきもので、大好きなクジラと同じと捉えてる様子。
各エピソードでの案件に対して、そうしたウヨンウの独特の視点、卓越した知識、細やかな視点で真実を明らかにしていく様が痛快に感じました。
障害をもつウヨンウが、法曹界で力を発揮する様に、希望をもった方々は多いのではと思います。
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ただ、やはり差別の問題には胸が痛みます。
首席卒業なのに、なかなか職を得れなかったし、職場でも、法廷でも、街中でも自閉症を理由に差別される。
ドラマでは、ウヨンウが差別やイジメに苦しんできた過程、未だに差別され続けている様子も描かれています。
ウヨンウが同僚と歩いているとき、同僚の後輩が、ウヨンウ本人がいる前で、同僚に対して「自閉症の人をサポートするボランティア?」と言い、ウヨンウにも「ファイティン」と言うシーンなどは、無自覚な差別の恐ろしさを感じました。
自分も気をつけないとと、思います。
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その一方で、分け隔てなく彼女をサポートする人達のさりげない優しさも描かれいます。
分け隔てのないサポートと、言葉に出すとハードル上がるけど、何も難しいことはなく、できないことを周りがサポートする。
単純なことなのかなと感じました。
ごくごく当たり前のことだけど、なかなかできないのかもしれませんね。。
特に同僚の女性、スヨン。
彼女は、ウヨンウにも、平気で「バカね」と言ったりして、こっちがハラハラしましたが、彼女の行動をみると、さりげないサポートをしている。
分け隔てがないからこそ、彼女は「バカ」と言えるのですね。。
自分の感情を伝えることが難しいウヨンウが、スヨンに感謝の言葉を伝える場面。本当はもっと感謝の気持ちを伝えたいのに、このような形で伝えるシーン。
素敵なシーンだと思いました。
あと、もちろん、回転ドアのワルツのシーン。彼の優しさを象徴する美しいシーンでした。。
しかし、パクウンビンさんの演技がすごいですね。この二つを比較すると、全く別人です。
彼女が、百想芸術大賞受賞スピーチで語ったように、自閉症を扱うだけに、社会へ誤解を与えるリスク、批判されるリスクもあり、慎重かつ丁寧に取り組む必要があったものと思います。
このドラマは、自閉症の方々への理解を深めること、そうした方々も社会にとって必要不可欠な存在のうちの一人だという社会の受容性意識の拡大などの、マインド向上への貢献が大きいドラマだと思います。
ドラマという芸術形態、誠意と熱意ある演技者が拡げる可能性の大きさにも感じ入りました。