⑤『ティール組織』ざっくりまとめ「発達段階について」(p64〰p72)
衝動的(レッド)〰進化的(ティール)の発達段階は、それぞれ特定の文脈に順応している。発達段階の間で優劣がつくものではない。
段階と色に関する議論は現実の抽象化にすぎない。人類は非常に複雑な存在であり、一つの段階に収束できるものではない。
たとえば、達成型パラダイムに基いて行動するようになったとしても、時と場合によっては順応型や衝動型のパラダイムで行動する能力は持っている。
また、多元的パラダイムの人に囲まれている場合、自分が十分にそのパラダイムの世界観に達していなくても、一時的に多元的の行動をとるかもしれない。
認知面、倫理面、心理面、社会面、精神面など、人の発達にはいくつもの次元があり、すべてが同じペースで成長するわけではない。
たとえば、達成型の認知能力をもってビジネスに取り組みながらも、精神面では順応型のキリスト教原理主義を信奉しているという場合もある。
そのため、せいぜい人はある特定の瞬間に、ある一つのパラダイムに「基いて活動している」としか言えない。特定の個人の全体が特定の発達段階にあると決めつけることはできない。
なお、同じ発達段階のパラダイムに基いて活動し、一定の認知的・倫理的・心理的特徴を共有していても、人によって世界がかなり異なって見える場合もある。(たとえば、派手なトレーダーと、内向的な科学者、流行の最先端のデザイナーは同じパラダイムにあっても共通の話題は少ないだろう)
別の段階に移行する
人の意識がより複雑な段階に発達するきっかけは、現在の世界感からは解決できない人生の大きな試練との出会いである。
つまり、問題を解決するための複雑な視点を持つように成長するか、現在の世界観にこだわって問題を無視するか、による。
これまでに経験のない意識の段階に進もうとすることは非常に個人的で、独特で、やや神秘的なプロセスである。
いくら善意によるものであっても、意識の進化を強制などできない。
いくら組織のリーダーに複雑な世界観を身に着けてほしいと願ったとしても、説得を通じて実現することはできない。
できることは、次の段階への成長に役立つ環境をつくりだすことだ。より複雑な世界観を獲得している仲間に囲まれ、安心して自分の心理的葛藤を探求できる環境が与えられると、その人が大きく成長できる可能性は高い。
発達段階を組織にあてはめる
「〇〇組織」と言うとき、その職場のあらゆる行動や交流がそのパラダイムに従っているということではない。また、組織ではたらく人すべてがそのパラダイムに基いて活動しているというわけでもない。
「〇〇組織」とは、その組織の構造、慣行、プロセスの「大半」が〇〇というパラダイムによって形成されているということだ。
リーダーシップ
どんな組織もリーダーの発達段階を超えて進化することはできない。
たとえば、達成型組織のリーダーが何らかの価値観やミッションステートメントをつくったとしても意味がない。多元型に達していない限り、口先では社員の価値観を支持したとしても、利益か価値観のどちらかを選ばなければいけない局面では間違いなく前者を選ぶからだ。
リーダーは、自分が到達している段階の次の発達段階で生まれる慣行や文化を支えられないのである。
リーダーが組織の構造、慣行、文化を整えると、従業員は以前は個人として十分吸収できなかった複雑なパラダイムの行動を取りやすくなる。自分だけではできなかったはずの結果を成し遂げさせてしまうのだ。
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