思春期に片足つっこんだ小3女子とのニンテンドーSwitchを巡る攻防。
これは、2019年5月~12月にかけて、
思春期に片足つっこんだ小3女子が、
幾多の困難を乗り越えて、
ニンテンドーSwitchを手にするまでの、
壮絶な物語である……
2019年5月20日の夜のこと。
風呂上がりに、思い詰めた表情で、「ママ……」と長女(当時小3)が声をかけてきた。
何事かと思うと、かく訴える。
「ニンテンドーSwitchが、欲しいの……」
友達の家に遊びに行って、ニンテンドーSwitchで遊ばせてもらえることが増えてきていた。
曰く、
「マリオカート、いつも負ける」
「どうしても、勝てない」
と。
……そりゃ~そうでしょうよ。
だってあなた、Switchもマリオカートも持ってないんだもん。マリオカートはそれはそれはやりこみテクニックが物を言うソフトで……(とは、さすがに言わなかったけれども。元ゲームマニア母)。
「だから、ニンテンドーSwitchを買って欲しいの!」
勝手に感極まって、すでに涙目の小3女子。
待て待て。今5月だから。
あなた誕生日は1月だから。
しかも今年の誕生日プレゼントは超奮発して夢のロフトベッド&デスクを買って大出費したとこだから。
クリスマスのサンタさん来訪もまっだまだ遠いから。
何の名目で、今このタイミングでSwitch買わなアカンねん!!
母も負けない。Switch1台30,000円。
そう簡単に、首を縦に振るわけにいかない。
「買って欲しいのおおぉぉぉぉ!!!!」
言いながら、稀に見る大号泣の小3女子。
そして、こう言い放つ。
「これでもいろいろ、我慢してきてるんだよ!!!」
……グサリ。
これを言われると辛い……
日々、手のかかる妹の相手をしてくれて、
自分のことは自分でやり、
母のパズル教室運営にも理解を示し、
留守番もお手伝いも嫌な顔1つせずこなし、
ほめられもせず、苦にもされず、
決して怒らず、いつも静かに笑っている……
さふいふものに、させててゴメン……
わかってる……わかってるよ……
いつもついつい我慢させてしまってるの……
我慢してくれてることに、甘えてしまっているの………
津波のごとく、急激に襲い来る罪悪感。
そもそもこの性格の長女が、意を決して母親に自分の欲求をストレートにぶつけるために、どれほどの勇気を振り絞ったことか………
ひとまず、大号泣の小3女子を、久しぶりにしっかり抱っこして。よしよしして。
(デカい……重い……という心の声は封印しつつ)
「ゲームというのはね……恐ろしいものなのよ……」
と、かつて昼夜問わずゲームに没頭して生活グッチャンコになったハタチ前後の自らの経験談などを話して聞かせる母。(ちなみにそのゲームはFF10)
「もし、本当にSwitchが欲しいなら、『決められた時間以上は、絶対にやらない』という約束を、『絶対に守れる!』という証拠を示しなさい。それができたら、購入を検討してもいいよ」
……我ながら、なんつ~鬼母か。
自分ができなかったことを我が子に強いる、という、子育て母あるある。
(ねぇみんな!いつもそうして我が子を追い詰めているよね☆)
しかし長女、なんと、それを聞いて妙に納得。
「わかった。どうすればいい?」
どうすれば……?
どう……すれば…………?
ど~~うすれ~~ば~~
いい~~でしょ~~う~~……かね?
無計画に発言した母、前のめりの小3女子を前に、急ピッチで脳みそフル回転。
「……わかった。こうしよう。
あなたが毎日、タブレット(Kindle)でダラダラと2時間も3時間も、Amazonプライムの『あたしんち』を見続けているのが、ママはとーーーっても気になってたの。
それを、『1日30分間までにする』と決めて、その約束を3ヶ月間、守りなさい。3ヶ月間、達成できたら、ゲームも時間を守ってできるものと判断します!」
「わかった!がんばる!3ヶ月がんばったら、買ってくれるの?」
「いや、買ってはあげない」
「???」
「3ヶ月がんばったら、自分のお小遣いを貯めて、買っても良いものとする!」
「ええええええ?」
……だって3ヶ月後って8月じゃん。何もないじゃん。
母も負けない。Switch1台30,000円。
そう簡単に、買ってやるわけにいかない。
その後、さらに詳細を協議した結果、以下のような内容で合意。
目標金額は、Switch本体価格に消費税と、マリオカートのソフト代込みで40,000円。
3ヶ月間のタイムマネジメントに挑戦した上に、さらに自分でお小遣いも貯めねばならない。
より早く達成するためには、祖父母からの誕生日プレゼントなどをことごとく「現金でください」という交渉をしなければならない。
これは何年後になるかしらフフフ……
ママの戦略勝ちね♪
と、思っていたの、だが。
さすが、我がパズル教室の生徒コード001番。
やると決めたら、ぜっっっったいにやり抜く根性の持ち主。「このパズルを完成させない限りは帰らないっ!!!」という執念で、これまで幾多のパズルを制覇してきた元祖「猛者」。
翌日5月21日から早速、Kindle見る時は片手にストップウォッチ。
そしてその記録を、冷蔵庫に貼ってある家族カレンダーに毎日記入。
ちなみにKindleの利用状況は父親のスマホにて管理されているため、ウソはつけない仕組み。
31日の「27分53秒」とかの文字に気迫を感じる母。
続けること10日余り。
音を上げるかと思いきや、意外なことを言う。
「ほんとは、自分でもKindleダラダラ見ちゃうの、イヤだったんだ。でもついつい見ちゃってて。時間制限、ある方がいいね♪」
スッキリと、目の前が開けたような、悟り開いたような表情で、このように。
なんと皆さん。
子どもの方も、動画ダラダラ見るの、ほんとはしたくないのかもですよ。
我々大人が、見たくもないのについダラダラと、スマホいじってSNSチェックしてまうのと、同じ感じらしいですよ………
さらに驚くべきことに。
6月17日以降、ずーーーーっと「0分00秒」を継続。
完全に、「Kindle断ち」に成功。
なんてこった!
1日に2時間も3時間もダラダラ見ていたのに!
この状況に感服し、
「0分00秒を1週間継続するごとに、チャレンジ期間を1週間短縮するものとする」
というルールを追加。
その後、なんと5週間にわたって「0分00秒」を継続。
当初8月20日に終了予定だった「Kindle 30分チャレンジ」は……
7月23日、遂に完結!見事成功ーーー!!
かくして、思春期に片足つっこんだ小3女子は、「自分は決められた時間を必ず守ることができる」という、確かな証拠を母に示したのであった。あっぱれあっぱれ。
しかーーーし!!!
まだこれは、第1段階をクリアしたに過ぎない!!!
次は、40,000円という、途方もない金額を自力で貯めねばならないのであーる。
我が家には、長女が年長さんの頃に参加した「おこづかい教室」で自作した貯金箱(貯金瓶?)があり。
……その名も「おかねあつめるよう」瓶。
正月のお年玉(の一部)や、毎月300円渡しているお小遣いは、わりと計画的にここに貯められていて。
7月23日時点で、12,000円ほど貯まっていて。
(画像はほぼ中身が空の状態で撮影したもの)。
あと28,000円!
そんな状況下で、夏休みに島根に帰省。
年に1度しか帰らないため、親戚からお年玉的なノリで結構な額のお小遣いをいただいたり……
「次の誕生日の分を、『今』現金で欲しいの」などと祖父母に交渉したり……
なんやかんやで、10,000円ほどプラス。
あと18,000円!!
「まだまだ足りない……毎月の300円のお小遣いを貯めても貯めてもまだまだ足りない……」
絶望の淵にある長女に、母、悪魔のささやき。
「パズル教室のお手伝いする?きちんと仕事として働いてくれたら、バイト代出すよ♪」
我が家では、家の中のお手伝い程度では、びた一文出さない方針なので(家族のための家事労働は、金のためにするものではない)。
当然、鼻息荒く「やるっ!!!」と言う小3女子。
これまた協議の結果、「その日の参加者から集めた参加費の5%にあたる金額を支給」というルールに。
(だいたい1回手伝うと300~500円ぐらいになる)
しかし仕事となると甘くはない。
親子と言えど、容赦はしない。
現場にいるのはさながら、親方と徒弟。
「○○出して!」「これ片付けて!」「これ切って!」「これ穴開けて!」「モタモタしないで!」「違う!何してんの!」「よく見て!」「考えて動きなさい!」
普段、家ではあまり怒らない母、仕事場となると鬼の形相。
もちろん、いい加減な働きぶりの場合はその日の報酬は無し。
それでも歯を食いしばり、怒号に耐えて働き続ける根性を見せる小3女子。
実際、パズル教室参加者でもある長女は、どのパズルがどんな形で、どのワークシートとセットなのかもよくわかっており、超有能なアシスタント。
ある日は300円……
ある日は450円……
またある日は350円……
チャリン。
チャリン。
チャリン。
「おかねあつめるよう」瓶に、少しずつ貯まる小銭。
お金を入れる度に、「今○○○円、あと○○○円」と計算したメモを書き。
9月、10月、11月……
塵も積もれば、山となる。
40,000円には届かないまでも、12月上旬には、間もなく30,000円に到達するというところまで貯まり……
「じぃじばぁばからのクリスマスプレゼントは、お金でちょうだいって、お願いすることにするよ……(ちょっと寂しげ)
でもサンタさんは、お金ダメだよねぇ……」
とつぶやく。
お金で済んだら世の中のパパママは楽だよねぇ…という言葉は飲み込んで、
「お金はダメだと思うけど、『マリオカートのソフトください』は、ありだと思うよ」
と、ささやかな入れ知恵。
「そうか!!それなら本体を買う分だけ貯めればいいよね!!
……でももしクリスマスにソフト届いて、その時まだ本体買えるお金貯まってなかったら超悲しいよね……」
まぁもう、そこまで考えられてるなら、多少バイト代にボーナスつけつつ12月を過ごさせてあげてもいいかな……と思いつつ……
いろいろとタイミングも良く、長女がパズルの手伝いをできる日数的に、ちょうど12月24日、終業式の日の午後の出張パズル教室お手伝いのバイト代で……
見事、30,000円に到達!
じぃじばぁばからのクリスマスプレゼント現金3,000円を加算すると、税込み価格のニンテンドーSwitch購入可能額に達し……
遂に、ニンテンドーSwitch、お買い上げーー!
自分でレジに30,000円を出す!!!
ヤッバイ、母が泣きそう………
本人はいたって上機嫌。
満面の笑みで、大事に大事にSwitch抱えて、ヨドバシ前で記念撮影。
本体を買った翌日12月25日の朝には、サンタさんからの「マリオカート」ソフトも届き。
かくして、
5月からの通算7ヶ月に渡る苦闘の末、
思春期に片足突っ込んだ小3女子は、
念願のニンテンドーSwitch&マリオカートを
手に入れたのであった!!!
めでたしめでたし。
《完》
……………
……………
(以下蛇足)
最初に「ニンテンドーSwitchが欲しいの!」と言われた時に、頭ごなしに「ダメ!!」と言わず、条件を提示することで一緒にどうすれば良いかを考える方向で進むことができたのは、以下の内容が私の記憶に残っていたからでした。
我が家の場合、この思春期への転換期と、「Switch欲しい」が時期的に重なり、「大人として扱う/扱われる」を親子とも強く実感する期間となりました。そのことの意味は、とても大きかったと思います。
また、Switch関連のことではとことん大人扱いしつつ、一方で「いつも我慢してるんだよ!」という叫びにも耳を傾け、2019年5月20日以降、週1回程度、長女と2人だけで過ごす「1人っ子タイム」を設定して、おもいっきり長女のワガママを聞いてあげる時間を取るようにしました。次女が生まれてから、ずっと下の子にかかりきりだったことを私も大いに反省しました。そうして「1人っ子タイム」でワガママを聞いてあげているからこそ、「親方と徒弟」状態の厳しいバイトも耐えてくれたのだと思います。「子ども扱い」と「大人扱い」の、ハイブリッドな対応が必要な、実に難しい時期なのが、「小3女子」なのだと思います(ちなみに男子はまた全然違うと思います。小3だとまだまだ子ども扱いだけでいけるかと)。
その後、コロナ休校初期の3月は、「学校は休み、幼稚園はあり」という状態で、1ヶ月まるっと「1人っ子タイム」だったため、気が済んだのかその後は「1人っ子タイム」を求めなくなっていきました。そして、そのままハイブリッド対応は卒業となり、今はもうすっかり大人対応1本です。そうなったらなったで、少し寂しい母であります(笑)
ゲームの時間制限については、コロナ休校を機に「1日あたり最長60分まで」と条件緩和。その範囲内で、毎日楽しく遊んでいます。というか、コロナ休校期間中は親も子もSwitchの存在に救われまくり、価格高騰のニュースを見るにつけ、「昨年末に買っておいて良かったーーーー!」と安堵する母なのでした。
ここに辿り着くまでの長女の様子を、私も夫も高く評価しており……
2020年10月現在も、ニンテンドーSwitchは、我が家の大人2人も、長女の許可なくしては遊べません。
1回60分につき、利用料10円をお支払いして、遊ばせていただいております。私は古いゼルダやマリオやFF7、夫はドラクエHEROS。
大人がルールを守ると、子どももルールは破りません。
購入から10ヶ月が経ちますが、長女を「ゲームしすぎ!」と叱ったことは1度もないように思います。
小4になり、学校の宿題も塾の宿題も増える中で、いかにSwitchやる時間を確保するか?1日の時間の使い方をどう考えるか?Kindleチャレンジでタイムマネジメントに挑戦した経験が、今に生かされているようにも見えます。
たかがゲーム。されどゲーム。
我が家なりの信念を貫き、長女もド根性で目的を達成し、親子ともなかなか良いハードルの乗り越え方だったように思います。
今ほど、この言葉の重みを実感することはないです。
欲しいものを、苦労して手に入れた経験を胸に、幸せな人生を歩んでいって欲しいと願っています。
*****
約1年越しの熟成下書き、ようやく書けましたーーー!いやはや、思い入れの深い出来事だったので、またむちゃくちゃ長くなってしまいました……
でも書ききれて良かったです。どうしても、どこかに記録を残しておきたかったので。満足(笑)
たぶん10年後にこれ読み直して私、泣く(笑)
明日は「# とは だけで30本書くチャレンジ」に戻り、「優れた接客# とは」について書きたいと思います。
本日もご覧いただき、ありがとうございました☆
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