【嵐と私ものがたり】vol.1相葉ちゃん
2005年に出会ってからずっと、嵐という存在は片時も離れずに私の中心で輝き続けている。
私はもう、嵐なしに人生を語れない。
一緒に歩んだ16年の時を経て、彼らは完全に私の一部になり、心身を形作っている。それくらい自分の価値観や経験に大きな影響を受け続けている。
Netflixのドキュメンタリー「Voyage」では、今まで見たことのなかった嵐の姿を目の当たりにする。ショッキングな言葉もあるが、5人の心に少し近づけた気がするのが嬉しくて、毎回楽しみに視聴している。
昨日からメンバー1人1人への密着企画が始まった。
この企画にあわせて、私と嵐の繋がりを感じる瞬間を辿っていきたいと思う。
5×20ライブの後に愕然としながら感じた「嵐は、こんなにも私の人生だったのか」という気づきを、番組の内容に沿いながら紐解いていこうという自己満足の企画だ。
読者の方も、自分と嵐が辿ってきた道をじっくりと振り返るきっかけになれば嬉しい。
第一回は、相葉ちゃんだ。
◎中華料理店
相葉ちゃんの過去と共に思い出される私の記憶は、2007年に遡る。
2007年は、中学校に進学した年だ。新しい友達ができるかという心配は、嵐という趣味を持っているおかげですぐに吹き飛んだ。休み時間は飽きもせずひたすらきゃあきゃあと盛り上がった。
相葉ちゃんの故郷は、千葉・幕張本郷。嵐が好きという理由で仲良くなったクラスメイト2人と長い時間総武線に揺られ、彼の実家である「チャイナレストラン佳花楼」を一度だけ訪れたことがある。
初めて降り立った場所。快晴のもと、広い土地が広がる。住み慣れた東京とは違う景色だ。
ここが、憧れの人が育った地なんだ。聖地巡礼をするような気分で、人気のない陸橋をワクワクしながら渡ったのを覚えている。
開店前に到着したのに、すでに長蛇の列ができていた。運良く一回転目で入店した。当時12歳、親の同伴なしにレストランで食事など、まだほとんどしたことがない。ドキドキしながら注文する。
運ばれてきた鶏肉とカシューナッツ炒めは、素朴でどこか懐かしく、優しい味がした。何よりデザートの杏仁豆腐のなめらかな甘さは忘れられない。今まで食べた杏仁豆腐の中で一番美味しかった。
会計時ふと視線を上げると、嵐全員のサイン色紙や、ファンが贈ったのであろう相葉ちゃんの大きな肖像画が飾られており、どくんと胸が鳴った。
嵐が、ここに来たんだ。相葉ちゃんは、この家で、この食事で生きてきたんだ…
やっぱり信じられない、という思いと、嬉しくて飛び上がりそうになるのとで、あの日の小さな冒険は記念に持ち帰った店の紙ナプキンと一緒に大切にしまってある。当時は気づかなかったが、あの時お会計をしてくれたのは相葉ちゃんのお母様かもしれない。
◎演劇との出会い
さて、中学で部活を決めるにあたり、私は迷わず演劇部を選んだ。小学校で熱中していた演劇に、もっと本格的にのめり込みたいと思っていたからだ。中1から高2まで40名以上が所属するマンモス部は小学校とは比べものにならないほどハイレベルで、上下関係も厳しく忙しい体育会系だった。それでも部活に打ち込む日々が刺激的で楽しくてたまらなかった。
そんな時、両親に連れられて紀伊國屋ホールを訪れた。演目は劇団青年座による「悔しい女」。大人向けの演劇らしい演劇を観るのが初めてだった私は、あまりの面白さに雷が落ちたような衝撃を受ける。
演出は、宮田慶子さんだった。なんと母校の、それも私が入部したばかりの演劇部の先輩だ。終演後に宮田さんとお話しする機会をいただいてさらに興奮し、私もいつかこんな舞台を創りたい、と決意した。
宮田さんがどれほどすごい方なのかは、後になって知った。しかも彼女は、当時嵐の中でも極端にドラマや映画への出演が少なかった、相葉ちゃんの主演舞台を演出したことがあるというのだ。
自分のいる部活から卒業した先輩が、嵐と仕事をしている。それはとてつもなく大きな希望のように感じられた。
その後も相葉ちゃんと宮田さんがタッグを組んだ舞台を何度も行こうとするもなかなかチケットが取れず、2010年の金子ありささん脚本の舞台「君と見る千の夢」のDVDを購入してようやく画面越しに観ることができた。
そこには、髪を振り乱して滂沱のごとく涙を流す、見たことのない相葉ちゃんがいた。彼の素直な芝居に強く惹かれた。
◎あたたかな深夜ドラマ
相葉ちゃんの待望の主演ドラマは、テレビ朝日金曜ナイトドラマ枠で素晴らしい舞台が用意されたことによって実現した。私も初めて深夜帯のドラマを観る機会を得た。ドラマとは、こんなにも丁寧に作れるものなのかと、驚いた。
「マイガール」も「バーテンダー」も、彼の柔らかく素直で優しい人柄をそのまま映し出した秀作だ。大きな事件は起こらず、穏やかに日々の幸せを拾い上げていくようなストーリーは、深く心に沁みた。
マイガールは原作漫画やオフィシャルブックも購入し何度も泣きながら観返した。
バーテンダーにいたっては私だけでなく父がハマり、ミニバーテンダーセットとカクテルレシピ本を買って、高校生ながらドラマの見よう見まねでマティーニやジントニックをせっせと練習し家族に振る舞っていた。私のお酒好きは、そういえばこんなきっかけから生まれたのである。
同枠に久しぶりに戻ってきた「僕とシッポと神楽坂」も、嵐がまだ勢いに乗っていない時から歯を食いしばって懸命につとめ続けてきた志村どうぶつ園での、彼の愛らしいキャラクターがあってこそのオファーに違いない。やはり素晴らしいドラマだった。
◎影をたたえた太陽
相葉ちゃんのイメージといえば、素直でちょっとおバカで泣き虫で、いつも明るく笑っている、誰もに愛される人。
ご友人が言っていたように、「人を柔らかくさせる」、楽しいね、と相手と目を合わせてくしゃっと笑うその人の良さに、お茶の間の誰もが"ご近所のお兄ちゃん"のように親しみと安らぎを感じるのだろう。
でも彼は、楽しいから笑うんじゃなく、笑っていればいいことがあるのだと考えているという。
ファンが1人しかいなくても、その1人のために全力でパフォーマンスをする、とも言った。
体が弱く、病気の恐怖と闘っていること。熱が出ても笑顔で踊り続けていること。表には出さないけれど、黙って努力し続けていること。本当は大好きなお芝居の仕事が増えないことに焦りながらも、真摯にバラエティの仕事に打ちこんでいたこと。
おそらく誰よりも嵐を失うのがこわくて、誰よりも休止後の活動再開を信じていること。大好きだけど、この世界で生き続けるうちに自分という人が分からなくなる瞬間があること。
笑顔の裏で、押し殺してきたたくさんの苦しみがある。言葉に出さず、1人で抱えて考え抜いてきたたくさんの悩みがある。そうではないかと想像していたが、番組内で本人の口から珍しい本音を聞くことができた。
時々ふっと悲しそうな、寂しそうな瞳をする。底抜けの明るさとは対極的な、影をも併せ持つからこそ、相葉ちゃんはセクシーな魅力を放つのだと思う。
中学時代の恩師に自分から長文のメッセージを送り、会いに行く律儀な姿は、人として深く尊敬する。大切なものを変わらずに大切にしてきた人だからこそ、周りからも大切にされるのだろう。
ジムに足繁く通うのだって、きっと、ただムキムキになってかっこつけるためではない。
体力をつけて、もっともっと強くなって、過去の自分に打ち勝って、
もう二度と、嵐から離れることがないように。
二度とあんな地獄のような思いをしないように。
5人でいるために。
無心でパンチやキックを繰り出す彼の瞳に、そんな覚悟が滲んでいるように見えてならなかった。
相葉ちゃんは、思春期の好奇心に溢れた私に知らない世界を教えてくれた人だ。
深い思いを含んだ明るい笑顔で、たくさんのあたたかさをくれる人だ。
嵐になってくれて、ありがとう。
出逢ってくれて、ありがとう。