没後50年 福田平八郎 展
4月の平日に時間がとれたので、「大阪中之島美術館」で開催されていた「没後50年 福田平八郎展」に行ってきました。福田平八郎は、大正期から昭和期にかけて、主に京都を拠点に活動されていた日本画家です。
日本画に分類される平八郎ですが、年代ごとに見ていくと、なんだか近代の西洋の画家のような道を歩んできたようにも感じます。写実的表現から抽象的表現に軸足を変えることによって、新たな表現方法を築て行こうとしたのではないでしょうか。膨大な写生や下書き及び習作等の資料を見ると、彼の絵画に対する誠実さが伝わってきます。写実表現の泥沼にはまっていく運命にあったのではないでしょうか。
今回、私が一番心惹かれた作品は61歳の時に描かれた《雨》(1953)です。《雨》には複数の要素がバランス良く含まれていると思います。瓦の外形は日本画的な、ある種無機的でのっぺりした線で表現されていて、抽象的で静的なイメージです。一方、瓦の表面は西洋絵画的なマチエールで表現されていて、雨粒が落ちてきて瓦の表面に染みこみ、そして今まさに蒸発しようとする瞬間を生々しく表現しています。きわめて写実的である意味動的な振る舞いを感じます。一見すると(今の時代感覚で解釈すると)、ポップでモダンな雰囲気も感じられます。
この作品「大阪中之島美術館」での展示は4/9からの後期のみだったようで私は偶然この絵を見ることが出来たようです。運が良かったかもしれません。写真では分からない、原画だけが持つ息づかいのようなものを感じる事が出来ました。次回「大分県立美術館」では前期のみの展示のようです…。
そしてこの《雨》は「週刊朝日」昭和28年12月20年号の表紙にも使われていたようで、当時の人がどう感じたのかが気になります。