Handsome is as handsome doesの"as"
先日「黄リー教を楽しむ会」のDMグループのなかで「Handsome is as handsome does.の構造がわからない」という話題があがりました。
これはいったいこれはどういう文なのでしょう。このasはどういうものなのか、アレコレしらべましたが、どうにもよくわかりません。ようやく答えがみえてきたところで、Twitterのフォロワーの方々から有益な情報をいただくことができました。今回はその顛末をまとめてみたいとおもいます。
英語学習の息抜きによんでいただければさいわいです。
Handsome is as handsome does.という諺
中辞典以上の辞書でhandsomeをひいてみてください。Handsome is as handsome does.(見目より心)ということわざがのってるとおもいます。たとえば、プログレッシブ英和をひくと以下のような説明がでてきます。
Handsomeは形容詞ですが、ここでは主語のはたらきをしているようです。形容詞は「the+形容詞」のカタチで「〜な人」「〜なこと」という意味になることがあります。そして、『英文法総覧 大改訂新版』p.33によると、「形容詞をそのままの形で名詞として用いることもできる」 とあります。つまり、ここでのhandsomeはtheなしの単体で「ハンサムな人」や「ハンサムなこと」という名詞としてはたらいています。
それにしてもhandsomeの副詞的用法とはなんでしょうか?
とりあえず、お次はジーニアス英和をみてみましょう。
このasはthatにおきかえらえるようです。また、Handsome is he who does handsomely.というふうにパラフレーズできるみたいです。「ハンサムとはハンサムにふるまう人だ」という意味ですね。このheは一般的な人を指す古めの用法ですね。昨今はポリティカル・コレクトネスの影響もあって使われなくなってきています。
前述の副詞的用法とは、2回目の形容詞handsomeがこのhandsomelyの意味にちかくなってるということでしょうね。
Handsome is as handsome does.があらわす意味はわかったものの、いったいどういう構造をしているのでしょうか?
従属接続詞のasだろうか?
Handsome is as handsome does.のasについて。まず最初にあたまにうかんだのは「〜のように」という様態をあらわす従属接続詞のasでした。そうするとas以下は「ハンサムがするように」という意味になります。
もしこれで、isが第一文型の動詞だったらどうなるでしょう。全体で「ハンサムは存在する、ハンサムがするように」という意味になるかとおもいます。なんとなく成立しそうな気がしますが、ジーニアス英和にのっていたHandsome is he who does handsomely.(ハンサムとはハンサムにふるまう人だ)という英文と意味がはなれている気がします。このパラフレーズされた英文は第二文型です。
それではHandsome is as handsome does.のisが第二文型の動詞だったらどうでしょう。「ハンサムは、ハンサムがするように、である」……うーん?? いや、そもそもS is C.という第二文型においてC(補語)になれるのは原則として名詞か形容詞です。「〜のように」というasは副詞節です。副詞節が補語ってムリがあるんじゃないでしょうか。
『英文法総覧 大改訂新版』のp.60をみてみると、The list is out.やTime is up.のように副詞が補語になっている例がでてきます。なるほど、これなら副詞節が補語になっても……いやいや、なったとしても、今回の「ハンサムは、ハンサムがするように、である」って意味的におかしくない??
疑似関係代名詞のasだろうか?
ここで『英語構文全解説』で次のような例文をみつけました。関係代名詞のwhatとおなじように、as以下が名詞節として補語になっています。
asは疑似関係代名詞として「such 名詞 as」や「the same 名詞 as」のようにsuchやthe sameなどと相関的につかわれる用法と、それから「As is often the case, …(よくあることだが、…)」や「The question is as follows: …(質問は次の通りです: …)」のように、前後の内容を先行詞にする用法とがあります。
それ以外にも、上に引用した例のように、asが名詞節をつくることもあったのですね。
つまりHandsome is as handsome does.のasは疑似関係代名詞のasがつくる名詞節で、文全体の直訳は「ハンサムとはハンサムがすることである」という意味ということです。
一応これで解決かとおもいますが、疑似関係代名詞のasがつくる名詞節についての説明が『英語構文全解説』以外でみつけることができなかったので、消化不良に感じていました。
英語史の堀田隆一先生による解説
そこでTwitterのタイムラインでつぶやいてみたところ、すぐにフォロワーの方から情報を提供していただきました。ありがとうございます。
いのほた言語学チャンネルに出演されている堀田隆一先生がブログでまさにHandsome is as handsome does.をとりあつかっているとのこと。くわしくは引用元をご確認していただくとして、注目すべき箇所を引用します。
はじめのほうでジーニアス英和から引用した英文は、Handsome is that [as] handsome does.となっていましたが、thatもasも関係代名詞のwhatのように先行詞をふくむことがあったようです。もちろん本当にあったかは定かではないが、当面はそう解釈するしかないと。
英語史が専門の堀田先生がそういっているのだから、これはそういうものだとうけいれるほかはなさそうです。
黄チャートの小寺茂明先生による解説
さらに、すぐに別の方から新しい情報をいただくことができました。本当にありがたいことです。
数研出版からでている『チャート式デュアルスコープ総合英語』(いわゆる黄チャートですね)の監修者・小寺茂明先生も、このことわざについて解説していました。
こちらのPDFにある「4. Handsome is as handsome does.の表現について」あたりをお読みください。こちらのPDFはチャートネットワーク71号2013年9月に掲載されたものです。
関係ある部分を抜粋いたしますと以下のような感じです。
Handsome is as handsome does.のasは先行詞が省略された関係代名詞で、現代ではあまり使われない。言っていることはほとんど堀田先生とおなじですね。
ここまできたらもう完全に解決したといっていいでしょう。
おわりに
ことわざなどの慣用表現は、現代の英文法の原則からはずれたものが多々あります。最終的には「それはそういうもの」としてうけいれるほかありません。そもそも言語自体「なぜ?」という問が成り立たないこともおおい気がします。
今回はたまたま有名な先生のコラムがあったことで比較的はやく解決しましたが、いつまでもこだわると沼にハマって抜けだせなくなるので、気をつけないといけないなぁとおもいました。
でも、今回も知的欲求をみたすことができましたね。Handsome is as handsome does.のhandsomeをいれかえていろいろ表現してみたくなります。ながい記事となりましたが、ここまでよんでいただいた方に感謝をもうしあげます。
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