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ラーメンの味だけでなく歴史も綴るグルメ本「ラーメン記者九州をすする!替え玉編」
本(ラーメン記者 九州をすする!替え玉編)
九州のラーメンを紹介する新聞の連載記事を単行本化した前作の続編で「替え玉編」です。筆者の小川祥平さんは西日本新聞くらし文化部次長で、ラーメン好きな私も1冊目を新聞広告で見つけて、早速買って読んでみました。紹介された店は有名店ばかりで、地元の福岡市のラーメン屋さんは全て行ったことがある店舗でした。
それに比べると、2冊目は1冊目よりページ数も増えて、初めて知るラーメン屋さんも結構ありました。
この本が通常のラーメングルメ本と違うのは、ラーメンの味の他にもそれぞれの店の歴史を紹介し、開業当初からどのような経過を経て現在の店舗に至ったかという、史実を綴っていることが最大の特徴といえます。
終戦後に中国から引き揚げて来て、当地の中国人に習った料理を手本にラーメンを生み出したことや、そうしたラーメン黎明期にこうした店で修業した人たちが、独立のため九州全域に進出していったという歴史があります。各地の有名店もその源流をたどっていけば、1つの原点に行きつくことができるのです。
九州の豚骨ラーメン発祥の店は久留米市の「南京千両」が有名ですが、豚骨=白濁のスープを生み出したのは同じ久留米市の「三九」という屋台で、有名な逸話である「豚骨を鍋で煮込むのに火をつけたまま出かけて帰ってきたら、煮えたぎった白濁の豚骨スープになっており、それを飲むと意外にも美味かった。」というもので、それがこの店だとのことです。
先代の両親から店を引き継いで2代目、3代目になる人も多いですが、脱サラして開業したり、全く別の業種からラーメン業界に参入した人もいたりと、様々な経歴がありましたが、共通するのはラーメン好きが高じて、ラーメン作りを一生の仕事にしようというこだわりであり、その強い意志が行動に走らせたという背景があります。
紹介されるラーメンは豚骨だけに限らず、醤油や味噌、塩ラーメン、さらに家系やちゃんぽん(当初の名前は支那饂飩(しなうどん)であり、発祥の店の「四海楼」も登場します。)
巻末の「九州豚骨今昔物語」では、九州の豚骨ラーメンの歴史をコンパクトに把握することができるようになっています。各ページのラーメン店の紹介記事を読み終えた後に、復習のつもりで読み進めるとより理解が深まると感じました。
最後に、福岡では当時珍しかった中華そばの「信兵衛」で大将の朝の仕込み作業を、毎日通勤途中に見ていましたが、閉店後もその流れを引き継ぐ「中華そば ふくちゃん」を本書で知ったのは幸運であり、今度行って懐かしいあの中華そばを味わってみたいと思いました。