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米中対立を軸としたウクライナ侵攻論「ウクライナ戦争と米中対立」

本(ウクライナ戦争と米中対立)(長文失礼します)

この本を読んだのは実は正月休みで、戦況のタイムラグが生じているのではと危惧しましたが、現状は今でも膠着した状況が続いています。

ウクライナ侵攻(=戦争)とその背景にある米中対立について分析し考察した本です。筆者の峯村健司さんは元朝日新聞記者のジャーナリストで、各分野の専門家と対談を通しながら、その情勢を分析していきます。
各章が対談形式になるので、一部内容の飛躍や各章間での重複などがありますが、いずれも重要な問題として提起されています。

各章の要点をピックアップし、それらの文章を羅列していくと、全体のストーリーとして以下のように組み立てられると思います。順番に書いていくと、
1.中国とロシアの現状の体制 2.ロシアの体制によるウクライナ侵攻
3.ウクライナ侵攻に対する日本の現状 4.世界の政治動向(パワーポリティックスの台頭)

先ず指摘されるのは、ロシアは対外的に大国でなければならないとするプーチン率いる独裁体制の思い込みです。それは中国にも共通するものであり、ロシアと中国の願望は帝国主義の復活であると断じています。
習近平政権の最優先は国家の安全であり、そのために経済や外交が犠牲になっても構わないと割り切っている。逆に言えばロシアも中国も、外国勢力によって政治体制が脅かされることを最も恐れているとも述べています。

こうして始まったウクライナ侵攻は、プーチンのナショナリズムを満足させる以外になんの波及効果もない戦争であり、力による現状変更を試みたプーチンの選択が失敗だった、という教訓を作ることが重要だとしています。ロシアは戦争防止のための人類の努力と英知の蓄積を破壊したものであり、この戦争における最大の目標は、ロシアの野望を挫折させることであると結論付けています。

翻って日本の現状を鑑みれば、学ぶべきなのは自衛能力がないと助けてもらえない、お得だからといって対外依存を高めるのは危うい、核の問題は正しい知識を前提に議論をする必要がある、などが指摘されています。

このような現状を踏まえ、世界的な軍拡が進行するのは、パワーポリティックス(力による政治)の結果であり、国際社会においては、価値の共有や正義感よりも軍事的な恐怖心や経済的な自己利益の方が、国家の行動を決めるインセンティブとして強いとしています。
2019年には、冷戦後初めて世界の人口ベースで民主主義国家が過半数を割っているという驚くべきデータも挙げています。

ただ文中に「全ての人を助けることができないからといって、我々は誰かを助ける努力をやめるべきではないのだ。」という言葉があるように、全体主義国家のロシアによるウクライナ侵攻という前世紀的な蛮行が行われながらも、民主主義と全体主義の葛藤は今後も続いていくものと覚悟する必要があるのでしょうか。

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