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東京湾に新東京駅計画‼️の回顧「丹下健三都市論集」

本(丹下健三都市論集)(長文失礼します)

世界のTANGEといわれた建築家丹下健三(以下敬称略)の都市論集です。以前読んだ建築論集と二巻構成の姉妹編であり、建築家と同時に都市計画家でもあった丹下の論文集となっています。

内容はⅠ都市の再建、Ⅱ東京改造計画、Ⅲ巨大都市の未来の3章で構成されています。Ⅰ章では終戦からの都市の復興と再建、Ⅱ章では東京改造計画の具体例としての東京計画―1960、Ⅲ章では1970年に開催された大阪万国博覧会計画などについて書かれています。

Ⅰ章で「建築技術は社会的生産力の基礎を作り出してゆき、その生産能力を媒介として人間の幸福に寄与する」と1948年「建築雑誌」に投稿していますが、戦後復興期はこうしたスローガンにも似た全国民一致の価値観の共有が肝要であり、この団結した価値観がその後の経済の高度成長に移行していくと思います。

そしてこのスローガンを引き継ぎ具体化したのが、Ⅱ章の東京改造計画となります。東京改造計画では、先ず建築と密接に関わりがあるモータリゼーションの交通体系に注目し、人口10万や100万都市と1000万都市の東京と比較した場合、それまでがヨーロッパの都市のような教会や役所が中心にある放物線状の都市構造では機能できなくなり、その解決策として平行線上の都市機能が可能な形状と提案し、その延長線上に東京湾の海上都市が出現します。

その東京湾の象徴が新東京駅であり、各路線への連結と延伸は海中地下の地下鉄で行う構想です。これには半世紀過ぎた現代でも驚きの発想であり、まさに壮大なスケールといえます。建築家がミリ単位でディテールにこだわるのに対して、丹下の建築家としてのディテール感と都市計画家としてのスケール感とを共有する感性が、やはり両方を使いこなせるバランス感覚なのでしょうか。

建築と都市の関係で、ヒューマン・スケール(人間サイズの建築)→マス・ヒューマン・スケール(市庁舎や教会など)→スーパー・ヒューマン・スケール(高速道路など)と認識して、そのバランスが取れたポジショニングを説いています。
さらに人口1千万人のメトロポリスが、連帯してくと帯状の人口1億人のメガロポリスが誕生するとして、アメリカ東海岸のニューヨークやワシントン、ボストンなどの都市を例に挙げながら、日本でも東京―名古屋―大阪の東海道メガロポリスの構想を打ち立てています。
また筆者は日本の都市計画の後進性を嘆いていますが、都市本来の自然性と計画性が調和したパリや、計画性以上に自然性が優位になって成長したニューヨークやワシントンの例を踏まえ、東京の都市計画が自然発生的な経過を辿って生々流転した「バラック性」とだったと回顧しています。

勿論こうした論文は、戦後の復興期から経済の高度成長を前提にしたものであり、都市社会自体が成熟し大都市も含めて日本全体の人口減少が加速する中で、ITを駆使したスマートシティ構想が発表される現在では、当然タイムラグはあると思います。

それでも丹下は戦後の都市の再建の時点から建築のハードだけではない、コミュニケーションなどのソフトの重要性や上記のモータリゼーションとの関係の重要性を説いていましたが、それは現代のDX(デジタルトランスフォーメーション)にも、多くが繋がる共通点が多いと感じました。

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