今が旬の濱口竜介監督の新作映画「偶然と想像」(^。^)
映画(偶然と想像)(敬称略)
「ドライブ・マイ・カー」が話題の濱口竜介監督の新作映画です。今が旬の監督なので、観られた方も多いと思います。今回は3編の短編映画からなるオムニバス形式の作品で、いずれも短編映画ゆえのメリハリのついた構成になっており、こういう内容はついネタバレしたくなりがちですが、今回は敢えてネタバレなしでいきたいと思います。
3話の登場人物は、第1話の「魔法」が元カレと元カノ、第2話の「扉は開けたままで」は大学教授と主婦でもある学生、第3話の「もう一度」は同窓会に出席した女性と同級生と思われた女性が、それぞれの会話を通じて物語が進行していきます。
映画タイトルの「偶然と想像」は、3つの短編に共通するテーマである訳ですが、それを最も端的に表現しているのが、やはり最初に上映される1話であり、妙な例え方をすると、1作目がど真ん中の直球であり、2作目が緩い変化球、そして最後が決め球のフォーク?あたりでしょうか。
確かに濱口監督は「ドライブ・~」でカンヌ映画祭の脚本賞を受賞しており、その秀逸した脚本のストーリーテラーぶりは、短編集のオムニバス映画ゆえに、その面白さがそれぞれの作品に凝縮していると感じました。
「ドライブ・~」が村上春樹の原作よりもよりシリアスに死生観を描いたのに比較すると、今回はペーソスさえ漂うほろ苦い喜劇仕立てに仕上げていたのではないかと思ってしまいました。
勉強不足のせいか、「ドライブ・~」に主演した西島秀俊のような有名な俳優ではない初見の俳優陣でしたが(朝ドラに出演した古川琴音や中島歩はさすがに知っていましたが)、それにより自然体の日常を切り取ることができたのだと思います。
3話それぞれの会話にもテンポや抑揚、感情などを織り交ぜながら、各ストーリーの特徴を出していたと感じました。
個人的に日本映画の系譜で言えば、小津安二郎のような淡々とした日常生活でもなく、大森一樹や周防正行のようなユーモアに裏付けられた、いわば乾いた感性とも違う、この映画を通じてペーソスとユーモアを併せ持つ表現力の新しい才能に出会ったような気がしました。
話題の「ドライブ・~」よりも、こちらの方が印象に残った映画でしたね。
(ポスターは公式サイトより引用しました。)