Customer Success Cafe ~カスタマーサクセスと、ひとりひとりのためのコミュニティマネジメント~に、行ってきた!
新書「逆説のスタートアップ思考」や「セールスアニマルになろう」「カスタマーサポートのことは嫌いでも、カスタマーサクセスは嫌いにならないでください」といった白地に青文字のSlideShareでおなじみの馬田さんの登壇セミナー!知ってる人!!本もSlideも読みました!的なミーハーなノリと勢いでアウトプット枠で参加したことを後悔することになったイベントレポートです。
■概要
日時:2019/07/05(金) 19:00 〜 21:20
場所:TECH PLAY SHIBUYA
東京都渋谷区宇田川町20-17 NMF渋谷公園通りビル 8F
■登壇者
東京大学 産学協創連携本部 馬田 隆明 氏
HiCustomer株式会社 高橋 歩 氏
馬田さんのコミュニティとの関わり
マイクロソフト時代→デベロッパーリレーションの部署。
東京大学→技術学生向けのコミュニティ。
現在→起業家に向けたコミュニティの提供。
1.前提の共有
コミュニティ関連活動について調べると色々な用語が存在する。まずは概念を整理。
オーディエンスとコミュニティを明確に分けるべき。オーディエンスマネジメントはユーザとの関係性。コミュニティマネジメントはユーザー同士の関係性。どのつながりをマネジメントするか、対象が異なる。
何故SNSとコミュニティマーケティングが混同されるのかというと、Web/SNSの立ち上がりに起因する。SNSにより双方向の繋がりが生まれただけで、SNSを運用しているからと行ってコミュニティがマネジメント出来ているとは言えない。
つながりと注意の方向性
誰かを中心とした繋がりなのか、関係性に起因したものか。既存の繋がりを活用するだけか、新たにつくるのか。関係性のマネジメントにより企業などがメリットを得るような取り組みが、コミュニティマネジメント。
コミュニティの分類
コミュニティとアソシエーションの違い:コミュニティは、地域や感情に基づいた集合体。アソシエーションは、共通の関心や目的に基づいた合理的な集合体。
コミュニティの動的と静的:コミュニティを動的か静的かで分けることで多少見通しがよくなる。
動的⇔静的 情緒愛着⇔目的の2軸で分けると分類しやすくなる。
※今回のコミュニティの話はアソシエーション寄りの話。
2.なぜコミュニティが今大事なのか
ビジネスでのコミュニティに注目が集まる。従来からコミュニティが大事な領域→スポーツ、ゲーム、OSSなど。新領域→SaaSなど。サブスクリプションの影響。
コミュニティに期待されるビジネス貢献は主に「継続率」「製品へのアイデア」「サポートコストの削減」の3つ。コミュニティが良くなるとカスタマーはサクセスしやすくなる。3つの要因はカスタマーサクセスと重なる。
コミュニティが使われる職種と施策例
・マーケティング:アンバサダーマーケティングなど
・プロダクト:製品へのFBなど
・プラットフォーム:デベロッパーリレーションズ活動など
・カスタマーサポート:課題解決フォーラム、アフターケアの一部、ロイヤリティの向上など
・カスタマーサクセス:継続率やエンゲージメント向上、顧客の学習促進など
・HR:従業員継続率、エンゲージメントの向上など
・イノベーション:オープンイノベーション、コワーキングスペース運用など
すべての領域においてコミュニティマネジメントのノウハウが活用できる。
コミュニティを使って顧客を成功させる
カスタマーサクセスでもコミュニティは利用できる。顧客の課題を誰かが解決出来ればいい。CSMがヒーローになる必要は無い。コミュニティタッチによって、サポートコストの削減、スケールできる組織を作ることができる。
知識はコミュニティに貯まる。ノウハウを持つ人が多くなればなるほど、手助けできる人が増え、使える人が加速度的に増える。皆が使っているようになれば同じノウハウが使える。それによりランニングコストが下がる。
従来はユーザーと自分たちとの関係性強化だったが、コミュニティをうまく使うことで、ユーザー同士の繋がりを強化し、集団を強くできる。
カスタマーサクセスのFlywheelモデルをつくる。
ファネルからFlywheelモデルへのシフト。
従来の企業のやり方→主にアウトバウンドを活用したセールス手法が中心。
アトラシアン(Flywheelモデル)の場合→製品の優秀さを軸に顧客内にコミュニティを作り、部署から全体に広めていく手法を撮っている。アトラシアンはセールス&マーケのコストが低く、18%でしかない。
Flywheelモデルモデルとコミュニティは支えあるモデル。ただし、T2D3みたいな劇的なスケールは望みにくい。
コミュニティを活用して製品チームにFB
プロダクトチームは社内からの声を軽視しがちだが顧客の声は聞いてくれやすい。顧客と繋がり続けることが競争力に繋がる時代になってきている。コミュニティは長期になればなるほどROIが伸びる傾向にある。
コミュニティでカスタマーサクセスサクセスは更に進歩する。
つながりの維持と強化→つながりの活用→繋がりによる顧客の成功の連鎖
3.コミュニティとはなにか
コミュニティの種類の違い
・インタレスト:興味や関心
・プレイス:場所
・アクション:行動
・プラクティス:実践
実践コミュニティ→明確な目的を持った学び
暗黙知と形式値の統合の場としての実践コミュニティがある。実践コミュニティは暗黙知と形式地を統合し、学びを促進する。
メンバーの違い
コーディネーター:イベントを計画し、メンバーを結びつける。
コアグループ:コミュニティに積極的に参加し、導き、コーディネーターを助ける(10〜15%)
アクティブグループ:定期的に参加したり、時折参加する人
周辺グループ:めったに参加しない人たち。コミュニティが組織と異なるのはこの周辺グループを許すため
アウトサイダー:メンバーでは無いがコミュニティに関しを持つ人たち
インフルエンサーよりも「少数の親しい仲間」からの影響の方が強い。
イノベーターハブが出発点となるが、一般に到達するまでにはフォロワーハブを経由する。
人のつながりは「回数」と「時間」で強くなる。25%の人が変わると社会運動が起きる。
クリエイターは1%。貢献者は9%、ロム専は90%。コミュニティには偏りが出るもの。
コミュニティの殆どは失敗する
プレスリリースを行なった700以上ののオンラインコミュニティのうち、意味のあるレベルの活動していたのは0.7%にすぎない。
コミュニティのライフサイクルは色々なモデルとコミュニティとを照らし合わせて、行うべきタスクや役割等を考えるべき。代表的なモデルをいくつか紹介。
1.Feverbeeモデル 2.実践モデル 3.その他モデル
ライフサイクルの段階
初期→コミュニティ感なし。中心人物が頑張るフェーズ。
コミュニティマネージャーの役割はコミュニティの段階に応じて変わる(大事なことなので2回言いました)。コミュニティメンバーの段階によっても果たすべき役割、タスク等は異なる。
自己決定理論とのモデルとコミュニティへの動機づけ
モチベーションの変化の例『ツールのために来て、コミュニティのためにとどまる』
個人のライフサイクルに沿ったアプローチを行う、行動変容を促すようにする。
4.コミュニティのデザインの技法
①戦略と統合のデザイン
コミュニティマネジメントで抜けがちだが最も大事なのは「戦略」と「ビジネスとの統合」。
ほとんどのコミュニティには戦略や目的が無い。コミュニティの戦略キャンバスを描くべき。何をするのか、何をしないのか。コミュニティのトレードオフを決めること。
【参照】
SPACEモデル、戦略をまとめるための「コミュニティキャンバス」
コミュニティのTo-Be像を想像できるか?
このコミュニティは「いつまでに」「どうなっているか」についてSMARTに言えるかどうか。一度決めたらとにかく目的とビジョンを繰り返し伝えること。オーバーコミュニケーションを取る。経営にも言えること。
②構造のデザイン
サイズ、比率、階層 構造が決まればつながりもある程度決まる。
強い繋がりは暗黙知の伝達に有利。弱いつながりは多様な伝達に有利。どちらが良いかはコミュニティ次第。
コミュニティにトランザクティブメモリをつくる。誰が何を知っているか、が、トランザクティブメモリ。コミュニティのサイズが大きくなったら名前の付いたサブグループをつくることで、コミットメントレベルがあげられる。コミュニティをメタコミュニティに進化させる。
③体験とプロセスのデザイン
コミュニティへのゲートをつくる。ゲートを設けることでコミュニティの構造を左右できるほか、オンボーディングに繋げやすくなるオンボーディングを繰り返すことで、関与の機会を増やす。
コミュニティの実行プロセスを決める。コミュニティ施策の実行を徹底することでコミュニティの中心人物になってもらう。
コミュニティを辞めてもらうプロセスも決めておくこと。個人にとってコミュニティの価値も変わってくる。コミュニティの価値や顧客のジョブをサクセスジャーニーマップで決めておく。
④ルールと規範のデザイン
ルールと規範によってコミュニティの文化を醸成する。
ポリシーやガイドの設定。ポリシーやガイドを決めることで特定の行動を促す。規範により明文化されていないコミュニティの文化を創り上げていく。
「文化が戦略を食う」ので気をつけるべき
⑤貢献のデザイン
貢献を促すことで他のメンバーへの価値が生まれる。貢献した人はコミュニティへの愛着が増す。コミュニティの中で貢献の経済を回す。貢献のトランザクションを増やしていく。
コミュニティによって求める貢献は異なる。(ALLIES:コミュニティメンバーの貢献や役割の種類)メンバーの状況に応じた貢献の仕方を提案する。
貢献を促すためのTips
貢献項目のリスト化、パーソナライズ、具体的かつシンプル、貢献の例を見せる、役割を与える、フィードバック、余白を残す、報酬を与える、etc
貢献したことに対して自己効力感を感じて貰う
自己効力感を変えると課題達成する率が高まり、努力を行うようになる。
自尊心は特定のタスクに関わらず自身の価値や自分を信じていること。自己効力感は特定のタスクや目標に対して誰しもが持てるもの。
⑥⑦内部・外部コミュニティデザイン
いろいろある!(書き取れず。。)
⑧評価とFBのデザイン
定性的調査、定量的調査の両方をデザインすべき。
エンゲージメントのトラップ:測りやすい活動を指標にしがち。コミュニティの戦略や目的に沿ったものを設定すべき。
コミュニティマネージャーのいくつかのポイント
・メンバーの取り組みのファーストフォロワーになる
・時期によって仕事は異なる
・スタートアップでは従業員全員がコミュニティマネージャーとして振る舞うような働き方が大事。
5.一人ひとりのコミュニティマネジメント
”あなたは最も時間を過ごす5人の平均といえる。”
”私は私と私の環境である”
所属するコミュニティ次第で人は変わる。
良いコミュニティが増えることで全ての人に良い帰属先・依存先が増えてほしいと考える。
自立とは依存先を増やすこと、とも言われる。
質疑応答
Q.うまくいってると思うコミュニティはあるか?
A.スタックエクスチェンジはうまくいっていると思う。サブコミュニティの作り方などのコミュニティの作り方、仕組みがうまい。
Q.今一番好きな本は?
A.今年何度も読んでいるのは「啓蒙思想2.0」今週末読もうと思っているのは「三体」。
Q.意味のあるレベルの活動の定義とは?
A.2012年の調査の直訳。エビデンスは見つからず。
Q.コミュニティの社内プレゼンスを高める方法
A.コミュニティがビジネスモデルにどれだけ関わっているか。トップダウンやT2D3モデルだと難しい。
Q.失敗するかもしれないコミュニティづくりに挑戦する意義とは?
A.コミュニティの良いところはNetwork効果が期待できる所。SaaSでコミュニティが果たす大事な役割。
Q.BtoB領域で顧客が競合する場合の共有する文化の作り方、インセンティブの設計
A.情報共有した人をきちんと称賛する、等。
Q.コミュニティのKPIの立て方、どのような指標を立てていることが多いのか
A.NPSがどれだけ高くても、実際に紹介してくれるかは別、という話は見たことがある
Q.つながりを作るにはある程度「心理的安定性」が必要だと思うが、何か気をつける点はあるか
A.時間をかけたり、会う回数を増やしたりすること。同じ時間を過ごすこと。
Q.インプットを好きになるコツ
A.インプットをして自己効力感を高めること。
感想、その他
スライド枚数400枚超!70分喋りっぱなし、スライドが秒で飛ぶ!濃密な情報の激流に巻き込まれたみたいでクタクタ。。今まで生きてきた中でタイピングした「コミュニティ」のテキスト量を軽く上回るレベルで「コミュニティ」ってタイプした。もう、コミュニティがゲシュタルト崩壊してる。
それはさておき、SuccessCafeの企画だったのでCSへの言及はあったが、コミュニティ全般に関するお話。特に、「コミュニティのデザイン技法」の内容は、コミュニティタッチにとどまらず、会社コミュニティのデザイン、HR的な話として聞いた方が自分はしっくりきた。というかそうとしか聞けなかった。「戦略と統合のデザイン」は「ビジョン・ミッション・バリュー」の話に、「構造のデザイン」は「会社組織」の話に、「評価とFBのデザイン」は「評価制度」の話に、それぞれ置き換えて考えることが出来るのでは無いだろうか。"スタートアップでは従業員全員がコミュニティマネージャーとして振る舞うような働き方が大事"、という最後のコメントは、スタートアップに身を置く立場として非常に共感するものだった。
その視点で考えると、従来型の会社組織はヒエラルキー型=逆ファネル型、最近流行りのティール組織や複業可の組織はそのコミュニティの戦略と統合を軸にしたFlywheel型、と言えるのでは無いだろうか。
めちゃくちゃ手が痛くなって来たので今日はこの辺で!
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