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人体の構造について〜命と人体の境界線〜

だんだん人間が「物」にしか見えなくなってくる不思議。
手術もなんかの工事現場かな、ってなってくる。
インパクト使って脳にも脊髄にもゴリゴリボルト入れていくじゃん。
しかしすごい角度から来たなーこれ、という感想。
ずっと見たかった映画なので、とても楽しみに鑑賞しました。

自分も開腹手術を1回、腹腔鏡を1回経験しているので、自分の時もこんな感じだったんだろうなーと思いながら見た。
自分の手術なんて見れることなんてないからね。
面白かった。
見れてよかった。

そもそも説明がほぼ無くてなんの手術かわからないから、見ながら脳内で独り言が止まらない。

「これは小腸の何か……腫瘍的な何かの手術かな…」
「うわ内臓めっちゃ焼いてる!めっちゃ焼いてる!」
「眼球……角膜の手術?レンズ?……こんな感じなんだ……こわ……すご……しかも患者見えてるままやるのか……」
「これは尿道結石っぽいな……痛そう……」
「えっ、側弯症って手術できるんだ……えぐぅ……」
「帝王切開はっや……!3分で胎児出てきた!?」
「胎盤でかっ……!!胎盤ってそういう……」
「これは……乳ガンだ……」
「その話、脳の手術しながら本人とする会話じゃないくない……?」

とか思ってみてました。

モザイク一切無し。リアル。
切除した乳房、雑に扱われるペニス。
皮膚、皮下組織、筋肉、脂肪、血管、神経、臓器……全てが「私の体にもあるもの」だ。
えづらとしては結構えぐい。
劇場は思った以上に席埋まってたけど、途中退席した人も数人いた。

後半で、めちゃくちゃ陽気な音楽ガンガン流しながら冗談を言い合いながら、ガリガリの人に服着せていくシーンが印象的だった。
最初なんだか分からなかったけど、ああ、あれ、死体かぁ……ってなって、そのうちガンガン運ばれてきて……。
地下みたいな所を、通報を受けてた警察っぽい人達が見廻るシーンがある。
そうか、そういう所で野垂れ死んだ人が運ばれてきたのかもしれないな……と思うと、複雑な気持ちになった。
それは「私たちの町にもいるひと」だ。

映画と呼ぶにはあまりにもドキュメンタリーだが、ドキュメンタリーかというとそうとも言いきれない。
手術をしながら不満を言う医師。
徘徊する老人に嫌気がさす介護スタッフ。
医療従事者も人間。
介護施設で働く人も人間。
実際はこんな感じだよな、そうだよな、って思った。
医療の話って今までテレビドラマとか、脚色された物語のある映画とかでしか見たことがなく、「見て欲しいところしか見せない」事に慣れすぎていた自分を反省。
医療従事者の皆様には感謝と尊敬しかないのですが、なんというか、特別でもなんでもない、私と同じ、人間だ。
そして不具合のある「人体」を「修理する」のが仕事なのだ。
結果、命を救っているというだけなのだ。
そして救われた先に必ずしも豊かな人生が待っているというわけでは無い。
後遺症で苦しみながら生きる老人、それを介助する人たち。毎日毎日毎日、今も「同じこの世界のこの時間に存在する現実」だ。

字幕が養老孟司さん監修なんだよね。
それもとても良かった。
さすが、わかりやすい。
帰りに寄った本屋さんで壁シリーズの新刊を見かけたので購入。
目次だけでもう面白い。

最後、エンドロール手前の壁画のシーン、圧倒された。
音楽はNEW ORDERの「Blue Monday」
これも良かった。

映画としてどうなのか、というのはともかく、心にズシッとくる映画だったことは確かだ。
見てる時は「一体私は何を見せられているんだろう……」という感覚だったが、改めて良い映画だったなぁ。
でもきっとあんまり流行らないんだろうなぁ。




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