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日揮ホールディングスの事業戦略(会長兼CEO 佐藤氏/モーサテ 2023 Sep)
日揮ホールディングスは、主に海外で石油やLNG等の化石燃料プラント、EPC事業を展開している。
EPC事業は、設計と調達を全て担い、この事業では国内最大手となる。売上高比率を見ると、EPC事業が大部分を占める総合エンジニアリングがおよそ9割に達している。
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株価を見ると、9月半ばに年初来高値となる2238円をつけ、2023年3月期の売上高は6068億円と前期比42%増加した。そして今期は32 %増の8000億円を見込んでいる。
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業績は好調に見えるが、日揮ホールディングスは脱炭素化の加速を受け、化石燃料に依存したビジネスモデルを大きく変えようとしている。どのような変革を考えているか見てみよう。
2023年5月、大阪府堺市で、日揮ホールディングスやコスモ石油など4社共同で、SAFの大規模生産実証設備の建設を始めた。この施設は年間30,000キロリットルのSAFを生産し、2025年に供給を開始する予定である。
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SAFは、植物や排食用油を原料とするため、従来の化石燃料から製造する航空燃料と比べて、CO2排出量を7割から8割削減できると言われている。
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航空業界では、空の脱酸素社会の利用が広がり始めている。2030年までに航空燃料の10%、170万キロリットルをSAFに置き換える目標を立てている。
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なぜ今SAFの製造に乗り出したのか?
国内の限りある資源を循環させ、脱炭素化社会を構築することが大きな意義であり、それがきっと先進国や発展途上国にも役立てると考えている。特に、SAFは社会実装に最も近い次世代エネルギーだと思うと佐藤CEOはコメントを残している。
スシローなどを運営するフード&ライフカンパニーズでは、揚げ物で使用した排食用油をSAFの原料として、年間900キロリットルを提供している。脱炭素化について、未来を見据えた持続可能な取り組みが欠かせないと考えている。
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一方で、SAFの製造には大きな課題もある。
まだまだ我々の主張する年間3万キロリットルの量に達していない。キーポイントとして、廃油回収のネットワークを全国規模で構築していくこと。現在、排食用油の価格が上がっており、主な原因は輸出、日本よりも海外で高く売れることから、大量に海外流出している。
日揮ホールディングスが挑む第3の変革とは?
第3の変革とは、ビジネス領域、ビジネスモデル、組織の3つの変革を意味する。
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特に、ビジネス領域の変革では、エネルギーの移行進めるために、脱炭素化、そしてクリーンエネルギーの拡大を最も重要な変革としている。
これを実現するために、福島県にある旭化成などが運営する大規模太陽光発電設備の隣に併設された施設では、太陽光で発電した電気を用い、水を分解し、1日4トンの水素製造している。CO2を排出せずに作られるクリーンな水素は、脱酸素の次世代エネルギーとして今注目が高まっている。
メタン等の化石燃料から水素を作ることはできるが、CO2を大量に排出してしまうため、太陽光や風力で得られた再生可能エネルギーからクリーンな水素の利活用を考えている。
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また、2023年11月より、水素と窒素合成させ、クリーンなアンモニアを製造する事業を開始する。アンモニアは燃焼してもCO2を排出しないため、発電燃料として使用したり、取り扱いが難しい水素を別の状態にして運搬ふる水素キャリアとして活用が広がっている。
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世界の生産量は、右肩上がりで上昇し、日本政府は2030年に300万トン、2050年には3000万トンに増えると見込んでいる。日揮ホールディングスは将来、アンモニアプラントの販売をビジネスの柱として育てたい考えである。
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また、カネカと共同で、微生物がCO2を原料として土や海で分解されるバイオプラスチックを生成する技術を開発している。直接CO2を消費する消炭素技術となる。
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さらに、既存のオイル&ガスEPC事業においても、CO2を回収し、地中に貯留する設備を建設している。
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それらの取り組みにより、2023年3月期の売上高は6068億円、2024年3月期では8000億円を見込んでおり、2023/9/15には年初来高値となる2238円をつけた。
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しかし佐藤会長は、中国景気の減速リスクを気にしている。米中問題が今以上に緊張すると、日揮ホールディングスが中国で製造したプラントを外に運び出せないリスクを懸念しているものの、8000億円の売上達成に向け、大きな売り上げ構成比を示す総合エンジニアリングでの受注残から計算して、達成できると考えている。
現在の株価について、2018年はプラントマーケットの回復時期に、2600円を付け、そこをひとつの目安としている。
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