【売済】書評:『中学校・高校教師 実務のすべて』
この本は、明らかに現役の(新任の?)教師を読者として想定しており、非常に分かりやすく書かれている。(Amazonリンク)
さて、仮にこの本屋で現役の中学生・高校生がこの本をめくってみたら、どんな感想を持つのだろうか。世代によって生徒の雰囲気や課題もかなり異なるだろうから、今の中高生が持つ感覚や教室の雰囲気を具体的にイメージすることは私には難しい(私はもう27歳になってしまった)。想像したとしてどうせ妄想だろう。それに私は、奄美出身とはいえ奄美の中学・高校に行った訳ではない。
以下は奄美の現役の生徒でも卒業生でも教師でもない、ただの素人の感想だ。これをお断りした上で、以下の書評を書いていきたい。
私自身は特に教員免許を持っていないので、この本が生活に直接役に立つことはない。それなのに購入した動機としては、色んな奄美の生徒の悩み(主に勉学について)を耳にしてきたからだった。中には「もっと先生とかがこうしてくれたら良いのに」「学校の勉強のさせ方がこんなシステムだったら良いのに」というものがよくあった。
では逆に、教師の意見や考え、さらには悩みなどを聞く機会はあるだろうか?私には今のところ全くのゼロだ。そうなると実際にインタビューしにいくか、遠回りだが文献・書籍・記事をあたってみるしかない。前者より後者の方がはるかにハードルが低いので、まずはこうした本を購入してパラパラとめくってみた次第だ。
私個人としては、私が過去に体験した学校生活を教師の側から少しとはいえ見つめ直すことで、少しは俯瞰的・メタ的に振り返って捉えることができたと思う。
この本は「実務のすべて」というより、こういった多面的かつ基本的なマニュアルをベースにして、教師が実際の教室で、自身と実際の生徒(集団)との関係をどう展開していくかについて考えさせる本だと解釈した。
パラパラとめくってみると分かるように、教師がこなさなければならない実務は本当に多種多様だ。ストレスが溜まりそうなものも沢山ある。一方で、生徒・保護者の身になってみれば、どれも重視してほしいものばかりである。
教師としては、おそらくこの本に書いてあるすべてを初めから完璧にこなせる訳ではなく、生徒の学びを助けると同時に教師として日々必死に学びつつ、対応にあたって経験を積み上げていくのだろう(そうでない怠惰な人も中にはいるのかもしれないが)。
この本を読むと、場合によっては「あ、あの先生はこれがちゃんと出来ていないんじゃないか」と思ってしまう項目や、「もしかして、あの時の〇〇先生はこういうことまで意識した上で、ああいう話をしてくれたのかな」などという気づきがあるかもしれない。
話が変わるようだが、よく言われるように、完璧な人間など存在しない。同様に、完璧な人間関係は存在しないと考えるべきである。人間関係では、常に試行錯誤したり、気を配ったり、時にはこちらが少し我慢せざるを得ないタイミングもある。関係がひどく悪ければ、長期的にストレスを溜めてしまい、自身の活力が失われる時期が出てくるケースもある。
これを読むあなたと教師の関係、あるいはあなたと家族・友人の関係も、もしかしたら完璧ではないかもしれない。しかしその現実を受け入れた上でいかにうまく自身を勉学・部活で磨いていくかが重要なのは、きっと身に染みて分かっているだろう。
これは、何もあなたの周囲にいる人たち(教師・家族・友人)を変に庇うための話ではない。ただ単純に、他人を変えるのは難しい。もし困っていたら、自発的・主体的に自分の行動や発想を変えたり、良くサポートしてくれる存在を見つけることが重要だ。
この本で教師という仕事の裏側やその厳しさを多少なりとも知ることが、そのヒントにつながるかもしれない、という少し楽観的な考えを私は持っている。自分を変える際に、なるべく相手の立場に立ってみることの大事さやメリットは常に意識してほしい(別に殊更に道徳だけを説いている訳ではない)。
私も自分なりに意識しているつもりだが、特定の状況ではついつい忘れて感情的になってしまう。自省の意味もこめて書いておきたい。
それに、人間関係がうまくいかないせいであなたが結局色々と伸び悩んでも、教師や家族・友人が責任をとってくれることは決してない(そもそもとる手段がない)。
「先生」という、何やら「エライ」存在に盲目的に従ったり振り回されていれば良い訳ではなく、可能な限り、自分の頭で考えて、行動・探索・情報収集してほしい。
ちなみに個人的にこの本で最も印象に残ったのは、本の終わりのほうにある新任教師向けの「つらいときに思い出してほしい、先輩からのメッセージ」という項目である(126ページから)。非常に生々しい教師の現実やそれに対する思いを、体験者の立場から教えてくれる貴重な資料かもしれない。良ければぜひ目を通してほしい。
あなたも教師も、長所もあれば欠点もある、不完全な、そして生きた人間だ。どんなに教師が好きでも嫌いでも、これを忘れてはならないと思う。
本・書評に対する感想や疑問があれば、是非ともMasaya MUKAIまで寄せてほしい(奄美の中高生限定)。必ずお役に立てるかは分からないが、一緒により良い学校生活について意見交換してみたい。