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いつか立ちションができるようになりたい: トランスジェンダー男性に対する性別適合手術としての尿道延長術による立位排尿の実現
出先のトイレの憂鬱
私は、出先でトイレに行くのが嫌いだ。
空いているトイレは大抵汚い。綺麗なトイレは、大抵混んでいる。どちらも、嫌いだ。
男性用トイレで個室に並ぶ人はたいてい大用があり、その進みは遅々としている。最後尾へ加わり、小便器へ並ぶ人たちがサクサク流れていくのを羨ましく眺めて数分を——ときには十数分を過ごして、ようやく個室へたどり着く。
服を緩めながら、座面が汚れていないかしっかり検分する。便器へ陰部を晒して近づける不快感を耐える。跳ねっ返りが飛んでこないか祈りながら小用を足す。そして、ペーパーで股間を押さえながら身体を引き剥がすようにして立ちあがる。
なぜそうまでして、大便器で小用を? なぜなら、私はトランス男性で、男性器を持っていないからだ。
トランスジェンダー男性と性別適合手術について
トランスジェンダーは、生まれの性別と、自認の性別が異なる人のことだ。医学の領域では、性別不合(Gender Incongruence)と呼ばれる。
私は女性に生まれて、男性を自認している。ホルモンと乳房切除で体を加療し、男性として暮らしていて、「トランスジェンダー男性」「Female to Male」と呼ばれる。それぞれを短縮して、「トランス男性」「FtM」という。
詳しい説明や止まない議論は、他稿に譲りたい。
性別適合手術は、自認の性に合わせて、身体的特徴の性を変える外科的手術のことだ。FtMの場合、子宮と卵巣の摘出、腟閉鎖、尿道延長、陰茎形成、陰嚢形成を行う。なかでも立位排尿の実現に必要なのは、周辺組織や肥大した陰核で尿道と陰茎を作る、尿道延長術と陰茎形成術だ。
手術への不安
2024年現在の日本で、保険適用であるはずの性別適合手術を受けると、全額が自己負担になる。理由は、保険適用外であるホルモン療法との混合診療が避けられないからだ。金額はざっと300万円。もし問題が解消されれば、経済的負担は大幅に軽減される。
今の私に、300万円は大金だ。私は、うつ病で離職し、障害年金で生活しながら、職業訓練を受けている身だ。将来再就職できたとしても、貯金には長い年月が必要だろう。
また、性別適合手術の情報は少ない。特に、私が受けたい、国内の陰核陰茎形成術の情報は本当に少ない。そのために、手術の質が分からない。
合併症を避け、立位排尿が可能な長さの陰茎を得るには、高い専門性が必要だ。誰も下手な手術を受けたくない。私もそうだ。しかし、誰も手術を受けなければ、症例は増えず、医療技術は進歩しない。悪循環だ。
高額な費用と手術への不安が、私の夢を阻んでいる。
立位排尿への願い
タイトルの「いつか立ちションができるようになりたい」という夢には、5つのステップがある。「再就職」「貯金形成」「保険適用」「手術の成功」そして「立位排尿」だ。再就職して収入を得なければ貯金はできない。貯金ができても、保険適用されなければ費用の負担は難しい。手術を受けるなら、経験豊富な医師に成功させてもらいたい。全てが叶って初めて、私は立位排尿ができるようになる。
立位排尿は単なる排尿方法ではない。日常での不便と精神的な負担を解消し、生活の質の向上に直結する重要な行為なのだ。
ボディイメージ通りの物理的身体を保有すること。満足と納得のある外観を得ること。男性トイレで気兼ねなく過ごせること。当たり前のことが当たり前にできること。
それはまさしく夢であり、半ば「夢物語」の域にある。道程は長く、障壁は多い。
でも、道は見えている。一歩ずつ進むことが、確かにできる。