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中小ITショチョーの秘密②/「採用された理由」

2023.07.03(月)第二話待ってました。という方もそうでない方も読んでもらえると嬉しいです。┏○ペコ



あらすじ

中小IT企業に勤務する私(40代後半)は、東京事業所の所長である。

5年前に前任の所長と突然の交代。

システムエンジニアから経営層に東京事業所を任されることになる。

私の呼称は「ショチョー」

どこかのフィリピンパブで呼ばれているみたいだ。

突然の所長交代から事業は何とか軌道に戻り、何とか会社を立て直してきているところに新卒女性が入社してくる。

半年前の「新卒女性の採用」に話はさかのぼる。

半分以上実話で真実未満(全7話)

あなたは、自分の会社の採用プロセスを知っていますか?

2.まったくタイミングの違う「新卒採用」

弊社は、中小企業特有の悩みと東京事業所という特殊な環境で採用活動を行っていた。

2022年11月

大手メディアを利用した採用広告と受付。

それは大企業にとっては、大量採用できれば問題のない世界かもしれない。

中小企業にとっては1名採用するのは「宝物探し」に近い。

弊社は、大企業とは違い採用が夏からスタートする。

そのため、全国での内定率80%を超えたあたりからのスタートする。
残り10数パーセントの学生を取り合うことになる。

こうなったのにも、れっきとした理由がある。

大企業と足並みをそろえると学生側に企業を比べられることもあり、内定を出しても他の企業からも内定が出たときにどうしても競り負け。内定を辞退されることが多く、完全に時期をずらすことをもう20年以上やっている。

とうとうこの年の11月まで、
会社説明会を開いても「学生がやってこない」状態
が3カ月も続いていた。

大阪に「本社のある会社」で
東京に「支社」がある

そもそも採用自体は、15年前ぐらいまで大阪本社でしかしていなかった。

東京支社での採用で関東圏の学生が想像するのは「大阪への転勤」を想像する。弊社に限ってそのようなことはなく、東京で採用された人間は東京でしか配属されない。(大阪に転勤になった例がない・・・)

過去15年前まで大阪本社から東京支社への転勤で社員は構成されていた。

そしてその一人は、所長ショチョーである私でもある。

もちろんこのITでのシステム開発の仕事は、大阪は一地方都市とみなされ、東京のほうが人も集まることもあり、システム開発の規模も大きい。そのため、大阪で新卒採用をしても、こころざしがある学生は大阪で採用されて「東京勤務でもOK」という学生もいるぐらいだ。

ただし面接をするときには、相手学生の心情をくみ取って「東京勤務でも内定OKしてもらえるかどうか?」ということももちろん質問として聞くことがある。

これまでも、どんな新卒採用人材系企業の営業担当者が弊社を訪問して

「採用母集団の形成をお手伝いします。」

と言ってきても、この壁を乗り越えられた新卒採用人材系企業はいなかった。

そこで、この東京支社で学生が会社説明会に来ない状況を打開するために、2022年11月に東京採用担当だった私は大きな決断をする。

「新卒就活エージェント」を利用

新卒就活エージェントとは、

就活エージェントとは、就活に関する専門知識を持つプロのアドバイザーが、就活をサポートしてくれるサービスのこと。
自己分析や志望業界・企業探しのサポート、ES(エントリーシート)の作成支援や添削、面接アドバイスや模擬面接などを行うほか、自身の強みや志向に沿った求人の紹介も行っています。

就活ジャーナル:就活エージェントとは?受けられるサポート内容と上手な活用方法を紹介

学生の代わりにアドバイザーが企業側と学生側に分かれ、学生側のアドバイザーは希望をくみ取って企業を推薦する。

企業側は抱えている学生とマッチしそうな企業の担当者と繋がっており、説明会や選考へ学生を誘導する。

採用担当の私から見ると、企業側からSNSや広告媒体で大手企業と差別化されて届かない発信力とは別に、個別に学生と接触ができるサービスでもあり魅力的だった。東京事業所に一人でいる分、いろんなことを兼任していて、採用業務に時間を割いてられないという事情もある。

  • 事業部長として:メンバー管理

  • 営業として:技術者たちの契約管理

  • 個人情報保護管理者として:会社の個人情報の責任者

  • 衛生管理者として:健康経営推進者

  • 東京社員教育責任者

  • 東京での採用:東京支社の採用

私の業務はこれだけには収まらないが、思い付き限りでもこれだけは出てきて、基本的に間接部門と呼ばれる仕事はあふれている。

学生側にとっても「エージェント」と呼ばれるアドバイザー(社会人=大人)が判断する企業を推奨されるため、学生だけの探し方ではない企業と合える可能性もあるそのようなサービスである。

まさに恋愛で出会えないパートナーとマッチングをする「婚活サービス」のよう。

これは採用担当から見た「エージェントサービス」の曲がったとらえ方かもしれないので、その注記だけしておきたい。

昭和な考えの採用担当であれば

「自分の力で見つけた希望の企業へ自ら出向くから就職活動ではないのか?」

と言われる方ももちろんいると思われる。

その旧来の考え方は「自分が一方的に好きになった相手に告白していく」ようなものなのかもしれない。

そこに一定の大人が介在しているとするなら身の丈にあった紹介サービスなのかもしれない。

前述したとおり、失敗をしたくない学生自分の希望へ最短でたどり着きたいような学生は、大人がした判断の企業に行けば安心と思う学生もいるだろう。

弊社は、このエージェントサービスでは中途採用で実績(第一章の中途採用で採用した女性(20代前半))がある。

見事にIT技術は未経験から内定し、社内教育で現役で技術者として働いている。

ただ、新卒採用に関してはこの「エージェントサービス」は実績がなかった。

毎月行われる「採用検討会議」でエージェントサービス会社のリサーチからスタートするよう社長を含め、経営者たちに言われ、急遽インターネットで検索し始める。

2022年11月という時期は、もう新卒採用に時間はかけられないところまで来ている。

今まで社内で実績がないだけに調べるのは、必死だった。

エージェントサービスを提供する人材系紹介会社は、ぱっと見た感じはいいことしか書いていない企業が多い。利用料金や内定採用になった時の支払料金などが掲載されていない。

電話やメールフォームから申し込んで、3社に絞り込んだ。

3社ともウェブ会議での打ち合わせ。どれも似たり寄ったりのサービス。

しかし、新卒就活エージェントの取引先となる企業の決定には時間を要さなかった。

こういう時の決断は私は、この会社は「うまくやりそう」という「勘」だと思っている。くじ引き的ではあるが直感で決定後、すぐにこの新卒就活エージェントとの契約を結び、数週間後からITを業種とした企業に就職希望する学生が何人か送り込まれて、わが社の入社試験から受験していくことになる。

ここまでは、ドタバタだが私は

ここまでして必死に新卒採用することに意味があるのか?

所長の頭の中

とも思っていた。

簡単に「入社までのプロセス」

今回の内定までのプロセスをざっと書くとこんな感じである。

ほかの会社にはないものもあるかもしれないが、意外な部分もあると思う。

  1. 会社説明会
    東京事業所に関しては会社説明会はしていない※。
    ※理由は後述

  2. 筆記試験
    会社説明会後にすぐ試験となる。(希望者のみ)
    性格診断とIQ試験

  3. 筆記試験が問題なければ、インターネットで総合性格診断を受験

  4. 面接
    面接は1回。本社は大阪だが私が面接している風景をオンラインで大阪本社で社長ともう一名様子を配信している。

  5. 内定
    書類が郵送される

  6. 入社式(大阪本社)
    入社式になるまでは、わが社の社員にだれ一人会うことはない。

この流れを読んで、あなたはこの会社に入社するまで不安を感じることがないだろうか?

私たちの会社に入ってくる新人になった人たちは、口をそろえて内定までが不安だったという。

内定までに弊社の社員と合うのは経営層のみだから。
だから、何度も採用メディアサイトの弊社の「先輩社員のインタビュー記事」を読むようだ。

まずは、「東京事業所で会社説明会がない」という件。

所長の私が説明したくないというわけでもなく、会社説明会用のスライドも会社のパンフレットも存在している。

実際にそれを説明すると30分以内で説明が終わり、学生と会話する終わってしまう。なぜなら、今の学生は多少なり訪問する会社を事前にインターネットで調べている。

一度説明会を実施した時に学生から
「どの会社も同じ」

と言われ、ショックだったことがある。

説明会では学生のとっては、システム開発をするIT企業は、同じように聞こえているが、どの会社も入ってからはおそらく「みんな違う」

これこそ「みんなちがってみんないい」かもしれないが、それで不幸になる人間だっている。

「思ってたんと違う」になることだけは防ぎたい。

会社説明会こそしないが、筆記試験の前後で質疑応答や自由に話せる時間を1人15分以上とるようにしている。

これは実質的に「所長による一次面接」である要素が高い。

質疑応答で聞かれることが多いのが「大阪への転勤」だか、これはあり得ないので、次に多い質問が「仕事のタイムスケジュール」

システム開発をする人は一日どんな仕事をしているのか?

学生の持つIT企業で働く人の仕事の内容

私も学生の時はこれが想像できなかった。

そして、入社してからはシステム開発をする人の仕事の概念が変わったというのは間違いないと思う。

どんな時代でもシステム開発をする現場というのは、「パソコンにかじりついてプログラミングをしている」というイメージだがみんながみんなそうではない。

指示のためにメール(今ならメッセンジャーとか連絡ツールを利用)を書いたり、システム開発を依頼しているお客様と打ち合わせしたり、メンバーとのコミュニケーションのためにホワイトボードを利用してイメージを伝えていたり、システム開発要員の調達や面談、技術情報のリサーチなど。

学生が思っているような仕事ではないことは明らかである。

まずは学生が思っている「システム開発の現場とは?」を聞き出し、その仕事は全体の○%ぐらいで、いろんなタスクに切り割られた仕事というより「意思を持って動いている『作業』」をしていることを伝えたりもする。

また弊社では採用に関して「未経験・文系も歓迎!」と言っているところがある。間違いなく仕事が「プログラミング」やIT的な作業だけでないことを示している。

実際に弊社は文系出身者が多い。

入社後、理系出身者より大きく伸びる人材が多くいるのも特徴でその話を聞いて自信をもって我が会社にきてくれる学生もいる。

面接が一回

面接の前に「性格診断テストとIQテスト※」を行い、IQが低すぎたり、性格的にこの業界が向かないという判断が下る以外は基本的に面接まで呼ばれる。

※性格診断テストとIQテストに関しては、所長である私が新卒採用でこの会社を受けたときと同じで試験はバージョンアップしていない。25年以上も…

そういう意味で言うなら、年を重ねても精度が高く比べられる指標の一つかもしれない。

「人を見て判断する。」

というのが、わが社の社長の口癖でもあるが、内定までのルートが少ないことで、面談で不合格となる学生は多い。

これもほかの会社ではありえないのだが、私も面接するようになってから「面接1回で問題ない」というより「面接1回では見抜くことはできない」になった気がする。

一緒に仕事をしてみたいと思うかどうか

世の中でよく言われること

私が面接した中では、こう思うことが多く採用した学生が会社に貢献できる人物か?というよりは、この後会社のことを好きになってくれそうな人物か?で選ぶことがある。

わが社の採用の仕組みについて、ずらずらと書いたがこれらの内容は新卒就活エージェントにちゃんと伝えたうえで、中小IT企業でもシステム開発を今後の職業:システムエンジニアとしてしていきたいというものが紹介されて弊社にやってくる。

新卒女性について

新卒女性が来るまでは、いろんな学生が来た。

道に迷い、方角の違う見当違いな場所から遅刻の連絡電話がやってきて動揺したまま、受験。そもそもちゃんと地図も読み解けていないようでは不合格。

とても試験の成績がよさそうな学生。IQも高そう。実際にIQ高かったが、立ち振る舞いが、弊社を下に見た言動が見られ、不合格。

服装や立ちふるまいはいいが、話してみると芯がなかったり、言葉使いかおかしくなる。言葉使いは、大目に見ても発言はその人が大きく影響するため、不合格。

このときの新卒採用のことを振り返ると、今でもいろんな人がいたと感じることがある。

新卒女性に関しては、IQなどは普通で性格も「のめり込めばとことん」だが要注意な点もいくつかあった。課題から逃げたり、避ける傾向がある。

これは、ITを使って課題解決をしていくシステム開発の会社には、若干不向きな性格だったりもする。

ただ、面接ではそれをすべて覆すきちんとした面談で、映像配信先の大阪でもその様子が見られず内定を取ることに至った。

ただ、私も内定を出したが彼女は優秀だったからではなく、いま成績や判定がよくなくても、自身のコミュニケーション能力や人から意見を引き出せる能力などで、何とかやり切ってくれるような成長を見せてくれることも期待している。

はじめから自分の会社にジャストフィットした学生なんていない。

そして、この新卒女性以外にももう一名内定を出した男子学生がいる。

経営者会議では「1名採用」に対して新卒就活エージェントに利用料が支払われる。

「1名いくら?」という料金設定になることを相談はしていた。

この新卒就活エージェントも言い方は悪いが「人売り商売」である。
そしてそのサービスを利用する企業側としても、その利用料から1名の社員が何年働けば利益へ転換するのかも予算上考える必要はある。

ただこのことをウェブ会議で社長や経営者に話したところ

「所長のお前が責任持つなら2名でも構わない」

Web会議から聞こえる社長の音声

という意見をもらい、面談結果がよかった男子学生に内定を出している。

たが、この男子学生はわが社の内定は承諾せず、金融業界へ入社したそうだ。どうやらこの男子学生の先輩に「自分の会社に来てほしい」と新卒就活エージェント以外の就職活動ルートを持っていたようで、そちらに決めたそうだった。

本来だったら2名だった新卒採用は新卒女性1名で内定が決まる。

無事2023年4月から彼女は東京事業所所属予定として入社してくれた。

内定を承諾してもらえなかった男子学生には、特に残念という気持ちもなくこれも縁だろうと感じていた。

わが社を選んでくれた新卒女性に最大限がんばってもらえるように、こちらも努力せねばと大阪本社で開かれた入社式で思っていた。

一番の彼女の不安は、

内定から入社式まで、会社の人と誰も合わなかったこと

だった。

それは、2023年1月に就職活動が終わり、内定式もないからね。

新卒女性の彼女からそのあと、
面接前に私が言った言葉を覚えていてくれていた。

「入社するまでに勉強した方がいいですか?」という質問に対して

学生のうちにめいいっぱい遊んでおいた方がいいよ
その時間はもう戻ってこないんだから
ITの勉強は社会人になってからいくらでもできる

筆記試験の後に聞かれた質問に対して

この言葉は、私が就職活動する中でも言われた言葉であったりもする。

東京事務所に出勤してきた彼女は、学生時代に楽しく遊んだ話、コロナ禍でも学生生活のことなど、いまも時々話して私を楽しませてくれている。

ーーー第二話はここまで。


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みやもとまなぶ
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