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19.ティーチングとコーチング

前回、重要なのは、与えられた能力や資源をどう活用するか。
人の強みを見出し、最大限に引き出す方法が成功の鍵となる。
とお伝えしました。

▼前回の記事はこちら▼

人材育成において必要なのは、ティーチングとコーチングです。
どちらも教わる側の成長を促しますが、そのアプローチは異なります。

ティーチングは、会社のマナーやルール、または過去の経験に基づく知識や事例を、考えさせるよりも教える方が効率的だと判断される場面で使用されます。教わる側の主体性は重視されません。
また、教える側が一人でも、多人数に対応可能という点は、ティーチングの大きな利点です。

学校の授業は、ティーチングの典型的な例です。先生が生徒に対して一方的に教える形態は、まさにティーチングと言えます。
最近では、この詰め込み方式に疑問が呈され、徐々にコーチングも取り入れられています。ただし、一人の先生が大多数の生徒に教える場面では、依然としてティーチングが有効です。

一方、コーチングは教えるのではなく、伴走者のように一緒に考えながら導く方法です。教わる側の主体性を尊重するアプローチがコーチングです。一対一、もしくは少人数で行われることが多いです。

新しいプロジェクトを立ち上げる際には、コーチングが適しています。プロジェクトを進めるには、計画に沿って主体的に行動することが求められるため、その主体性を尊重し、支援しながら導く必要があります。

ティーチングとコーチングの適切な割合は?

社員に教える場合、ティーチングとコーチングの適切な割合はどれくらいが良いのでしょうか?

新入社員の場合、ティーチング8:コーチング2の割合が理想です。主にティーチングで進めても問題ありません。コーチングを多用すると、会社が混乱してしまう可能性があるからです。

たとえば、ハンバーガー屋さんでパティ(ハンバーグ)を焼く時間が1分と決まっているとしましょう。もし、コーチングのアプローチで「うちのハンバーガー屋では、パティを1分で焼くけど、それについてどう思う?」と上司が質問したときに「私は良く焼くほうが好きなので、2分が良いです。」と部下が答えたら、品質の統一ができなくってしまいます。このような場面では、ティーチングで「パティは1分で焼いてください。」と教えなければいけないのです。

当社では、新入社員には必ず1名の教育係がつき、会社のルールやマナーをティーチングしています。週に一度のミーティングで、できていることと改善が必要な点を確認し、その場で必要な指導を行います。
この段階では、新入社員に主体性は求めていません。まずは会社の基本に従うことが重要だからです。

リーダークラス以上になると、ティーチング4:コーチング6が理想です。主体的に動いてもらう必要があるため、コーチングの割合が増えます。

当社では、施設長に年1回、施設の経営計画を作成してもらいます。このとき、私は指示はせず、施設長にどう運営すべきかを考えさせます。しかし、最初はうまくいきません。施設長自身、やりたいことがあるものの、それを明確にイメージできていないのです。
そこで私が共に考え、アドバイスをします。こうして、明確ではなかったイメージが徐々に明確になり、計画を形にすることでやりがいを感じ、成長へとつながっているのです。

柔軟な対応が必要
今回提示したティーチングとコーチングの割合は、あくまで当社におけるバランスに過ぎません。もちろん、会社の方針によって変わりますし、社員の個性や成長段階に応じて割合を調整することが重要です。
一方で、上司の指示を迅速にこなす社員にはコーチングを多くして主体性を発揮してもらうことが効果的ですが、上司の指示を無視するような社員には、在籍期間が長くてもティーチングを重視すべきです。

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今日のまとめ
ティーチングは決まった方法やルールを教える手法で、コーチングは主体性を尊重しながら導く手法。
状況や社員の役職に応じて、適切に使い分けることが重要。