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MasamichiM
2019年9月7日 12:01
支店の一員として溶け込んでからは、僕は銀行に対して何の疑問も抱かなくなっていた。つまり、思考が停止し完全な銀行の一兵卒になったのである。無駄で非効率な雑用も率先してやったし、先輩や上司との飲み会にも全て参加した。仕事は退屈だったが、職場の人に会うことが不思議と楽しみであった。今振り返ってこの時期に戻りたいかと聞かれれば、僕は「戻りたくない。」と即答する。しかし、女性社会の中で過ごした支店研修時
2019年9月7日 12:00
彼女が支店に来なくなって以降、気のせいかもしれないが周りが妙に優しくなった。おそらく支店長が上席会議で新人の扱いを見直すように話したのだろう。支店の評価には新人教育という項目があり、退職に至った場合にはそれが減点対象となるのである。「これ以上辞めさせるわけにはいかない。」という支店全体の空気感がちょっとしたことから感じられた。その影響は仕事内容にも現れた。先輩の補助が付く形ではあるが窓口に出る
2019年9月7日 11:57
長期休暇を終えて支店に顔を出すと、職場の話題は彼女で持ちきりだった。「どうして来なくなっちゃったの?」「まだ数ヶ月しか経ってないのに。」「この程度でダメになるならこの先どうせやっていけない。」等々、みんなが口にする言葉はどれも彼女への思いやりに欠けるものだった。僕も人のことは言えない。確かに仕事は退屈そのものであったが、逆に楽すぎてストレスもほとんどなく、何がそこまで彼女を追い詰めたのかいくら考え
2019年9月7日 11:53
集合研修後、独立遊軍武蔵はばらばらになった。3人は関西、2人は関東へ。そして、僕は都内のある支店に配属された。ここでは、あおぞら支店(仮称)と言っておこう。個人富裕層も顧客として来店するような、いわゆる大型店である。あおぞら支店への出勤初日。僕は見慣れぬ駅の改札前で配属同期の女性を待っていた。改札を通る一人一人が同じ職場の人かもしれないという妙な緊張感の中、どうも落ち着かなかったことを覚えてい