ピーター・セージ『自分を超える法』を読んでみた
本書は世界No1コーチであるアンソニー・ロビンズの史上最年少トレーナーであるピーター・セージ氏が、自分を超える5つの法則についてまとめあげた一冊となっています。
単なる自己啓発本ではなく、成長法則の根拠が隅々に詰まっており、より具体的に、再現性もあるノウハウが満載となっています。
資金なしから22社の企業を成功に導いたピーター・セージ氏の目線だからこそ、本書を読めば、より分かりやすく、短期間で成果に繋げることができるでしょう。
■書籍情報
自分を超える法
ピーター・セージ 著
(訳 駒場 美紀、相馬 一進)
『人間の6つの欲求』が行動を起こす動機となる
本書では、人間の6つの欲求が、動機や要因として起因すると解説されています。自分が成長したい、変わりたいという時に、6つの欲求の関係性を認知した上で行動すれば、より成長の可能性が広げられるとのことです。
6つの欲求は以下となります。
①安心感:安定したいというニーズ
②不安定感:変化が欲しいというニーズ
③重要感:価値ある存在でありたい、自分は特別でありたいというニーズ
④愛とつながり:愛されたい、誰かとつながりたいというニーズ
⑤成長:成長したいというニーズ
⑥貢献:何かに貢献したいというニーズ
本書ではこの6つの欲求をシックス・ヒューマン・ニーズと称し、しっかりと要素を近いすれば、現在おこっている問題をいとも簡単に解決することができるとしています。
安定感と不安定感は表裏一体
安定感と不安定感は言葉の通り、正反対の考え方です。安定感はリスクをできるだけ負わず、自分のペースを守る事。対して不安定感は全て完璧である状態に人間は耐えることができず、新しい領域を広げたいとする心です。
人によって安定感と不安定感のバランスはそれぞれであり、どちらかに偏ったバランスをとっています。しかし、人生の質という観点では、居心地の良さを感じられるのは不安定の量に正比例すると本書では語られています。
たいしての人は安定感に傾いた生き方を望みます。例えば公務員や大手企業など、給与がある程度保証され、業績によって変動することは少ないです。しかし、安定感に囚われすぎると、人生の充実度としては低くなります。
自分を成長させるのは「不確実性」を前向きにとらえること
不安定感に傾いた職種の代表格といえば、やはり起業家です。自分主体でビジネスを立ち上げ、公務員や大手企業に比べれば安定感は感じられないものの、一つ一つの問題を不安定感⇒安定感に移行できた時の達成感は一入でしょう。
人によってバランスが異なるので、普段は安定した仕事をしてプライベートを充実させることで、人生の充足度を感じている人ももちろんいます。自分にとっての安定感と不安定感のバランスはどちらなのか?その視点をもつことで今の自分の課題が見える化していきます。
今、自分にとって居心地が悪いと感じているのであれば、安定感と不安定感のバランスがとれた行動をしていないからです。人生の質は不安定感に正比例すると上述しましたが、質を高めるのであれば不安定感を増やすことが必要になってくるということです。
歴史は常にリスク(不安定感)を取る者の味方をする
もう一つ重要な要素があります。それは、これまでの歴史をみると、常にリスクをとった者こそが、賞賛され後世に語り継がれているということです。安定感しか考えられない人は、自分の領域拡大を恐れ、他の人とは違う事にチャレンジができません。その分、成功や結果をつくることが必然と少なくなるのです。
その点を踏まえると、起業家に必要とされる要素は、特別な能力ではなく、不安定感に対処できる能力を持っている事とも言えます。ビジネスを立ち上げる視点で見ると、他のどんな分野よりも「確実さを見つけることができない領域」とも言えます。予想外のことや事業計画書通りにいかないことが山ほどあります。
不安定感にうまく対応できるようになれば、人生の質はあがっていきますが、これは経験の中で培われ、その経験を何度乗り越えてきたかで、自分なりの安定感を手に入れることができるからでしょう。
不安定感と恐怖の関係性
人生の質は不安定感の量の依存するという点が上述までの紹介でしたが、不安定感の欲求は常に恐怖と隣り合わせであることを覚えておく必要があります。新しいことを学んでも、人がすぐに行動ができないのは、この恐怖に起因することが大部分を占めます。
本書の中では、著者がスカイダイビングの講義を受けたが、飛ぶまでに精神的な葛藤があったというエピソードからこの恐怖をの説明をしています。また、恐怖を前にすると次々と「やらない言い訳」が出てくる点も解説しています。
「自分はよくやった」「自分には他の魅力もあるし」など、人はこれまで経験したことがないことを行動しようするときに、一種の負荷がかかる場合に頭の中に言い訳が浮かびます。
ここで重要なのは、実行動を伴って恐怖を打ち消すことができるという点です。そして「怖いという感情は行動を開始する瞬間だけ」だという事。瞬間的に恐怖に打ち勝つ勇気さえあれば、日々訪れる壁をチャンスと受け入れられるという事です。
「不安定感」を積極的に受け入れれば人生が好転する
ここまでの関係性を振り返ると、以下のことが分かります。
・人生の質を高めるには「不安定感」の量を増やす
・不安定感を得るためには「恐怖」が伴う
・恐怖を克服するには「一瞬の行動への勇気」が必要
・一瞬の行動への勇気があれば「チャンス」を掴める
という図式です。ということは日々感じている「不安定感」「恐怖」「壁」「負荷」という問題は、全て克服すればチャンスだということです。そして「不安定感と安定感が表裏一体」だとすれば、安定感を求めることは行動せずに何もしないことにもなります。
人生の質を高めるために「行動するのか」「行動しないのか」それを決めるのは、自分自身です。不安定感を積極的に受け入れられる能力を身につけられれば、まったく別次元の人生を送れるということを認識しましょう。
愛情の量がたくさんあれば心のダメージに耐えられる
6つの欲求の中で一番シンプルなのは「愛とつながり」です。恋人や家族、友人などを思い浮かべれば、想像がしやすいでしょう。本書の中でもピックアップすべきは、たくさんの愛を持っていれば少々の愛を取られても大丈夫だという点です。
本書の中では全財産1000円の人と1億円の人がそれぞれ同じ「1000円」という金額を強盗から盗られた場合の感情の違いを例にしています。愛情も同じようにたくさんの愛を自分の中に蓄積していれば、多少心を傷つけられる出来事があったとしても、耐えられるのです。
愛情の出どころは、どの関係性でも良いでしょう。ただ、人の欲求の中では「バランス」はやはり重要なので、現在の悩みの軸「仕事」「恋愛」「交友関係」などそれぞれの軸で愛をたくさんもらえる行動をとっておいたほうが、より心の補完がしやすい可能性が高いです。
「重要感」と「愛とつながり」の関連性
安定感と不安定感と同じように、実は「重要感」と「愛とつながり」もまた正反対のニーズだと言えます。重要感は自分は「ユニークな存在であり、特別だということを強く求めるニーズ」を指します。
ということは、他人とは分離した存在であることを示唆しているのです。自分の価値を人に分かってもらいたいという欲求は、「社会的」にみれば賞賛や尊敬などの愛を得られそうですが、それでは人の欲求を満たすことはできません。
なぜなら、本当に欲しい「愛とつながり」の欲求は家族や恋人、友人などから得られるものであって、上記の状態は「孤独」を示してしまうからです。重要感を求めすぎると、本当に自分が求めている「愛とつながり」は得られなくなってしまうことを知っておくべきでしょう。
多くの人は4つのニーズの良バランスの状態を求める
ここまで「安定感」「不安定感」「愛とつながり」「重要感」の4つのニーズを紹介してきましたが、それぞれの表裏一体の組み合わせであることも記載してきました。本書では4つのニーズは「4方向に伸びるシーソー」だと言います。
そして、多くの人が4つのベクトルが最適に釣り合う絶妙なポイントが、人生の頂点だと考えて、生涯それを追い求めるということです。しかし、当たり前のように「人生で望むもの全て完璧な形で手に入れている人」は存在しません。
また、全て手に入れたと感じる瞬間はありますが、それはずっと続くものではありません。人生を一種のゲームとしてとらえるならば、「このゲームは、常に当たりが出るように設計されていない」ということです。
4つのニーズとは別に「成長」「貢献」にエネルギーを注ぐ必要がある
ここまでの流れで、まだ解説がない欲求があります。「成長」と「貢献」です。4つのニーズが釣り合った状態だけでは、本当の心の充足感は得ることができず、成長と貢献があって初めて実感することができるのです。
本書では「コップ」「水」の関係性で、上記を説明しています。それは、人生で起きる出来事や、手にすることができるものを「水」として、それらを保持するのが「コップ」ということです。
家族、友人、お金、貧乏、車、宗教、信念、仕事、趣味などが水であり、コップは心構え(マインドセット)という関係性です。多くの人が出来事や得られるものに対し、行動を重ねてしまいますが、本来はコップ(心構えや人生の捉え方)を変えていくべきだと本書では語られています。これが成長と貢献を指しています。
リーダーシップは育てた数で決まる
これまでは自己成長のための章をまとめてきましたが、以下からはリーダーシップの章をまとめます。本書では、リーダーシップの定義について、以下のように述べています。それは「リーダーシップは育てたリーダーの人数で決まる」というものです。
よくリーダーシップの大きさは部下の人数で決まると定義づけている本などがありますが、部下の人数は任せられている事業や部署の大きさに左右されることもあるため、マネジメントの領域にフォーカスをあてた「育てたリーダーの数」のほうが、能力の定義としては正しいでしょう。
リーダーシップを発揮するには、必要な3つの鍵と高めるための5つの柱があります。
第1の鍵:基準を上げる
第2の鍵:信仰を持つ
第3の鍵:ビジョンを持つ
第1の柱:自分の価値感を知る
第2の柱:人間関係をマスターする
第3の柱:時間をマスターする
第4の柱:意味づけをマスターする
第5の柱:感情をマスターする
以下からは特に重要だと感じた点をまとめていきます。
リーダーシップを発揮する上で重要なビジョンの持ち方
リーダーシップの第3の鍵がビジョンですが、本当に意味のあるビジョンを持つためには、「個人の枠を超えたもの」にすることが重要です。そのためには、これまで紹介してきた「貢献」がヒントになります。個人の一人の価値観ではなく、何かのために尽くそうという強い意志があるビジョンが必要となるのです。
また、自分のビジョンが何であるか分からずとも、自己成長のために奮闘していれば、身体の細胞レベルで「これが私が求めてたビジョン」であると感じる瞬間が絶対にきます。
自分の器(コップ)を広げる動きをとり、「成長」「貢献」を視野にきちんと入れれば、おのずと目標は明確になり、それがビジョンへと繋がります。
リーダーシップの柱、感情をコントロールする
不の感情が襲ってくる時は誰しもあります。しかし、感情も自己処理できることを知っていれば、決して悩む必要はないと本書では書かれています。その対処方法とは、今湧き上がっている感情を全て一度出すという事です。
そこで重要なのは感情に対して「正しい」「悪い」など善悪のレッテルを張らないということです。感情に良い悪いを判断してしまうと、立ち上がるまでに時間がかかります。
そうすると、感情は60秒ぐらいでキレイになくなります。感情にそこまでの持続時間がないことを知っておくことが重要です。感情に抵抗したり、無視したり、評価したりすると、感情はパワーを持ち始め、自分自身を振り回してしまうという事を知っておきましょう。
上位2つのニーズを「成長「貢献」に置き換える
成功の心理学では、6つのニーズがあることは、これまで何度も紹介してきましたが、協力に自分自身を突き動かしているのは、上位2つのニーズとなります。安定感と不安定感から一つ、愛とつながりと重要感から一つというケースが多いでしょう。
本書では「安定感」「重要感」が上位2つのニーズとなっている場合は、自分の成長のための世界観が弱々しい状態になっていると言います。そのため、上位2つのニーズを「成長」「貢献」にした上で、「安定感」「重要感」を下位2つのニーズへ入れ替えることで、自分の世界観を変えることができます。
成長と貢献に意識を向けると、矢印が内向きから外向きに変わり、どうすれもっと成長し、貢献できるか?という視点で物事を見ることができるのです。
まとめ
本書を選定した理由は、今の自分の成長過程の「本質理解」と次の「成長段階」を決めるためです。
現状、自分で変わり始めたというのは確かに実感していて、また周りにも影響力を持ち始めたことも理解しています。正直なところ「成長はした!じゃあ次はどうする?」というのが、分からなくなってきています。現状に満足しているわけではない、まだまだ成長欲求があるが、成長前の自分が感じた「負荷」に比べると、今はそれほど辛い、キツいという感情が無くなってしまっています。
本書を読んで、今の自分を支えているのは「成長」「貢献」を上位2つのニーズにしているからだという気づきがありました。現状のウイルス拡大の流れもあって、今は自分が止まると会社、クライアント、家族が、全員危ないというマインドになっており、それが自分をひたすら突き動かしています。
上記の本質を理解したことで、負荷が小さいのではなく、負荷を感じないマインドセットに徐々に移行しつつあるという気づきがありました。もちろん、親しい間柄の人だけになれば、負荷を感じている発言もでると思います。
また、次の成長目標についてですが、本書でビジョンは「成長」「貢献」のニーズを高くしておけば、おのずと見つかるという事を知ることができました。今のビジョンは「私が携わる事業の拡大」「自分が関わる人が不幸にならない現実を作る」という事に重きをおいていますが、引き続き上位ニーズを変えずに突き進み、より貢献度が高いビジョンを明確化していきます。
次に必要な要素は「リーダーシップ」だと認識しているので、周りを巻き込み、引っ張り、寄り添える、そんなリーダー論を次回から学んでいきます。