『カモメになったペンギン』を読んでみた
リーダーシップの権威であるJ.コッター氏が、自身の提唱する「組織変革を成功させる8段階のプロセス」を幅広い層に、わかりやすく示したビジネス寓話。組織変革のダイナミズムや、それを成し遂げるためのリーダーシップのエッセンスが、ペンギンのコロニーを舞台とした物語に凝縮されています。
ペンギンのビジョン変革の中に、チームビルディングのヒント、自分の立ち回りや役回りなど様々分野で役立つ内容となっています。
■書籍の紹介
カモメになったペンギン
ジョン・P・コッター、藤原 和博 (訳)
氷山が崩れるというペンギンにとっては危機的な問題
本書のストーリーは南極大陸の氷山で、集団生活を送るペンギンの物語を軸に展開されていきます。そして、好奇心と観察力に溢れるペンギンのフレッドが、「住処である氷山が崩れる」という危機的な状況を予見したことから、話は進んでいくのです。
この「氷山が崩れる」という事象は、我々人間でいえば、会社内の問題点や課題、もしくは家庭内のトラブルと置き換えられるかもしれません。また、徐々に収まりつつある新型コロナウィルスとも近しいものがあるかもしれません。
フレッドは決して人とのコミュニケーションに長けていることはなく、集団生活を送るペンギンの中で何かを進言できるようなポジションではなかった事から、アリスというペンギンに問題の相談をします。
保守的なリーダー議会に進言し、説得を試みる
このペンギンの物語では、リーダー議会というものが存在します。人間でいえば行政や会社の上層部のようなものです。ペンギンは保守的で古くからの監修も大事にします。フレッドとアリスは、氷山が崩れるという危機的な状況を、このリーダー会議で説明し、対策を講じることを決めます。
今回の氷山崩壊は、表面上の問題ではなかったため、リーダー議会のメンバーが、そうたやすく信じるものではありませんでした。しかし、フレッドは自らの創造力で、言葉で説明するのではなく、模型やガラス瓶を使う実験など、工夫を凝らし、見事リーダー議会の危機意識を高めることに成功します。
人間でいえばプレゼンテーションや提案などに類する部分ですが、何も根拠なく理屈っぽい説明をしても、例えそれが事実であったとしても、コミュニティを動かすには足りません。明確な数値や根拠を元に説明をしたほうが、ずっと伝わりやすいのです。
この難局を乗り切るためのチームビルディング
リーダー議会に危機的な状況だという事が伝わった上で、次にこの難局を乗り切るためのチームが結成されます。以下では本書の内容をそのまま記載します。
(E)ルイス:党首ペンギン。経験豊富にて賢明。寛容。少し保守的。めったに動揺しない。そして誰からも尊敬されている。ただし、ノーノ(超保守的、批判家)とティーンエイジャーを除く。切れ者(知識レベルはそれほど高くない)
(D)アリス:実践的。積極派。タフな実行力がある。意志が強く、脅しは通用しない。地位にこだわらず誰でも平等に扱う。切れ者(知識レベルはそれほど高くない)
(C)バディ:少年のように若々しくてハンサム。野心はみじんもない。信用と好感度は抜群(主婦受けするタイプ)。知識レベルは決して高くない。
(B)ジョーダン(教授):論理的(きわめて論理的)博学。様々な問題に関心あり。社交的なタイプではない。
(A)フレッド:若手。好奇心と創造力はけた違い。沈着冷静。くちばしは立派。
本書はこのチームに対して、こんな風に書かれています。
創造性豊かなアイデア(A)を知識と論理(B)が支え、好感度(C)を伴った行動(D)を尊敬を集める党首(E)が統率するなら、A+B+C+D+Eは協力なグループとなりうる。
保守的なペンギンがカモメの生き方をヒントにする
氷山が崩れるという問題に対して、色々な考えを募らせるものの、なかなかジャストアイディアが浮かばない状況が続きます。そして、時間も限られていました。今回の氷山が崩壊する要因は、氷山の下に洞穴が出来ており、夏場は洞穴の中は水が溜まっているものの、冬になれば凍結し体積が増えることにより、崩壊するというものです。
そのため、穴を掘って水に圧力をかける、新しい完璧な氷山を探すなどのアイディアが立案されていくわけですが、そうするためには時間がかかるという次の問題が出てくるのです。
そんな中、フレッドは上空に1話のカモメが飛んでいることを発見します。カモメは南極には存在しないものの、迷子になった様子でもないことから、「土地から土地に移動している」という結論に達し、ペンギンの生き方そのものを変えるというアイディアに結び付けていくわけです。
「新しい生き方」というビジョンの共有
カモメに直接話を聞くという結論に達し、5人はカモメを呼び止めます。そこで分かったことは、このカモメは一族の仲間に先立って飛び、次に暮らす場所を探す「偵察隊」だということです。
そこで5人の話し合いが始まります。もちろん、カモメとペンギンは異なる種ですから、まったく同じような生き方はできません。しかし、永遠に安全な氷山はない事から、5人のビジョンが固まっていきます。
溶けかかった氷を元に戻すことはできない、そして、同じ場所にい続けることもできないと、アリスと教授が論戦し、そしてルイスはたった一つのやり方の中で長い暮らしをしていると、新しい生き方を考えることができないと、保守的な自分自身を見つめなおします。
変革するビジョンの周知と戦略
ビジョンを見出したことで、今度はペンギンにそれを周知するための戦略が必要です。今5人が描いているビジョンを、コロニー(氷山)に住む仲間に伝える必要があります。もちろん、保守的なペンギンですから、全員に理解してもらう、納得させることは並大抵のことではありません。
5人がとった戦略は以下です。
①新しいビジョンを伝えるためにルイスとバディが皆の前で演説する
②変革ビジョンを掲げるポスターを提示し、理解と周知を徹底する
③保守的な立場で妨害工作をするペンギンの排除
④偵察隊のボスの座を巡った政治工作をするペンギンへの対策
⑤「自分で取った餌は自分の子供にしか食べさせない」という慣習への対策
①と②はすぐに実行できたものの、その周知を徹底したことにより、③④⑤の新たな問題が発生したという構図です。これもコロナウイルスと関連づけると分かりやすいと考えられますが、「STAY HOME」というビジョンを掲げ、マスメディアを中心に周知が徹底されていきました。
緊急事態宣言が発令されるより以前、メディアで紹介されていたのは、感染者数の拡大情報と、店舗ビジネスや娯楽業の経営難によるリスクや悲鳴が中心でした。そして、深刻な集客減少の問題を抱えたそれらの経営者は、国や地方自治体に指示に従って店舗を閉める者と、強行的に営業を続ける者に分かれていきました。
それに対して、国や地方自治体の講じた策にはまだまだ課題は残るものの、2020年の5月末現在でいえば、感染者数は減少し、緊急事態宣言の解除に至ったわけです。
このように、何か新しい変革をおこす(組織学の導入も含め)場合、反対勢力や古くからの慣習が必ずと言って良いほど、壁となって立ちふさがります。その際に必要なのは、一つ一つの問題を着実に排除していくこと。それが次の項目で描かれていきます。
5人の特性を活かし、障害を一つずつ排除
皆に周知した際の勢いや士気が徐々に低下している事に、5人は頭を悩ませました。そして、それぞれの役割について再度話し合い、戦術を展開していきます。
・保守派ノーノの排除
チームメンバーの紹介時に少し触れましたが、ノーノは保守的で5人の反対勢力です。至るところで妨害工作を繰り返し、新しいビジョンを批判していました。そこで取った対策は、ノーノに対して教授を常につきまとわせて、話のコシを折るという策です。(徐々にノーノ妨害工作から手を引いていきます)
・偵察隊の隊長争いの排除
偵察隊の隊長=新しい変革におけるリーダーポジションになるため、皆がこのポジションを狙っていました。そこでとった対策は、ペンギンの党首であるルイスが「もうたくさんだ!」と一喝し、その議題を強制的に終了させました。
・幼稚園の先生が不安に駆られ、悪影響を子供に与えている問題
この問題にはバディが対応。子どもに悪影響があると、その親にもネガティブ思考が伝達してしまうことから、バディは深く同情し、誠実な対応を心がけました。そこから幼稚園の先生はネガティブ思考から脱し、子供たちに「偵察隊=英雄」だという話を聞かせるようになります。
・偵察隊の食糧問題
上述しましたが、このコロニーでは身内内でしか食糧の供給が許されない慣習がありました。しかし、幼稚園の先生が英雄の話をしたことで、子供から「英雄たち(偵察隊)に感謝する日」というイベント、そして「入場料として魚を2匹持ってくる」という参加条件のアイディアを提案され、それを刊行した事によって古い慣習が撤廃されていきました。
反対派、政治争い、教育におけるネガティブ思考、古き慣習。これらはどのプロジェクトにも存在します。コロナウイルスでもありました。そして会社の方針変更時にも起きる問題です。
特に教育におけるネガティブ思考は、組織を織りなすチームリーダーのポジションの人がその考えを持っていると、自然とチームメンバーにも伝染して組織としても悪影響を及ぼします。
こういった問題を解決するのは、リーダーの考えや思考パターンを変えてあげること。それが一番の近道であり、それによってメンバーの進化や覚醒が生まれることがあります。本書でいえば、進化覚醒に該当するのは「子ども」にあたりますね。
コロニーの大移動、新しいビジョンが行動に移る
上記の問題を解決し、いよいよ新しいビジョンとなるペンギンたちの遊牧民生活が決行されます。もちろん、その中でいくつかな問題は生じるものの、どれも些細な問題でした。
そして、このビジョンが行動に移るまでの流れについて、以下のように記されています。
ルイスは氷山が溶けていることをフレッドが発見したところから話を始めた。
それから彼らが、
(①)困難な問題に対してコロニー全体の危機意識を高めたこと
②変革を推進するチームのメンバーを慎重に選んだこと
③よりよい未来に向けて適切なビジョンを打ち出したこと
④そのビジョンをコロニーのみんなが理解し受け入れられるように伝えたこと
⑤実践的な方法でできるだけ多くの障害を取り除いたこと
⑥早い時期にいくつかの成果をあげたこと
⑦新しい生活がしっかりと確率するまでは変革の手を緩めなかったこと
⑧最後に、凝り固まった古い因習からは変革を実現させる力は決して生まれないこと、を子供たちに話して聞かせた。
ルイスは効果的なリーダーシップを発揮し、バディは不安がる皆を励まし、フレッドはその創造力をいかんなく発揮し、教授は仲間から賞賛され、アリスは相変わらず忙しい生活を送っていました。
ペンギンたちは新しいコロニーに安住するわけではなく、次のシーズンにはより条件のよい氷山を見つけて移動して、とうとう本書でいう「カモメ」になってというお話です。
変革を成功させる八段階のプロセス
本書では、ペンギンの生活になぞらえて「変革を起こすためのフロー」についてストーリーを交えながら解説していきました。最後に、変革を成功させる八段階のプロセスについて、ジョン・コッターは以下にまとめています。
■準備を整える
①危機意識を高める
②変革推進チームをつくる(リーダーシップ、信頼性、コミュニケーション、専門的知識、分析力、危機意識に優れたメンバーが望ましい)
■すべきことを決定する
③変革ビジョンと戦略を立てる
■行動を起こす
④変革のビジョンを周知徹底する
⑤行動しやすい環境を整える
⑥短期的な成果を生む
⑦さらに変革を進める
■変革を根付かせる
⑧新しい文化を築く
本書の使い道としては、これをチームメンバー全員が読み、意見を出し合うことにあると記載されています。自分のポジションや役割はどこか、それを考えつつ、新しい変革を起こすために必要なものを考えていくヒントになるはずです。
まとめ
本書を選定した理由は以下の通りです。
①ウィズコロナ、アフターコロナの変革の経緯を辿るため
②御社のWebチームというある種サービス変革を、どうやって根付かせるか考えるため
③クライアントのチームとしてのリスプラのポジションを確認するため
④自分の役割、チームメンバーの役割を考えるため
⑤ティール組織をいち早く取り入れ成長するため
今の自分の状況において『チーム』という括りは、決して御社のWebチームという課だけはありません。社内も一つのチームであれば、クライアントも一つのチーム。DM事業部、NNGも一つのチームです。
その中でそれぞれのポジションと役割は変わってきて、御社のWebチームのサービスでいえば、私たちはクライアントのチームの一員になります。そうすると、とるべきポジションや役割を変えなければなりません。そして、御社のWebチーム自体がまだ根付いていないという事。これはここでいう変革やビジョンに近しいものがあるかもしれません。そして、御社のWebチーム自体がまだ根付いていないという事。これはここでいう変革やビジョンに近しいものがあるかもしれません。
その中で、本書はたくさんの気づきが詰まった一冊でした。①~⑤の自分の回答をそれぞれ書いてみたいと思います。
①保守的な立場でモノを考えると、対応できない、そして進歩的な思考がコロナ環境下において一番の変革をもたらした。そして、周知して皆を納得させるためには「繰り返すこと」「早く結果を出すこと」「反対勢力を潰すこと」これらが必要。
②御社のWebチームはまだまだ発展途中で周知には至っていない。自分がリーダーとして冷静沈着にメンバーに役割を与え、結果を出し続けることが必要。
③クライアントのチーム側にどんな人がいるのかで、役割を変えなければいけない。絶対に必要な要素は「分析力」「創造力」。リーダーシップや行動力は、代表がチームに入っている場合は担ってくれる可能性が高い。
④少なくとも私はリーダーをやる必要がある。その中でメンバーの長所を見極め、配置する。そして、御社のWebチームというサービスの特性上、制作やビジネスモデル設計以外に「リーダーシップ、信頼性、コミュニケーション、専門的知識、分析力、危機意識」この要素を満遍なくクリアさせる必要がある。
⑤ティール組織は、実現するためには何年もかかるという共有を受けているが、それをいち早く導入させ、プロジェクトの浸透、変革の浸透を図るチームが御社のWebチームでなければならない。反対勢力やネガティブ意見を超越するパフォーマンスを出す必要がある。
上記となります。それぞれの視点で見て、たくさんの気づきを得られたので、本書をチームで共有して皆で作戦を練る機会を作っていきます。