【読書メモ】営業未経験の私が営業の極意を学んだこと(「なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?」)
先日「なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?(フィリップ・デルヴス・ブロートン)」を読みました。
私は仕事で、オウンドメディアやセミナー運営を担当しています。そこからお問い合わせを作り、営業に顧客リストを提供するマーケティング職です。
※最近クライアントのコンサルティング業務も兼務し始め、マーケとコンサル(現場)の両方を担当しています。
そのため社会人2年目の現在、営業経験はありません。
ただ自社サービスの良さを紹介するため営業資料やランディングページを整理したり、セミナーやイベント参加者に宣伝したりして、「売り込み」には少なからず関わってきました。今回は同書の内容と感想をまとめてご紹介します。
■■そもそもどんな本なのか
本の原題は「The Art of the Sale」です。筆者は営業活動を再現性が少ない芸術として捉えているんですね。
本書の趣旨は、先行研究の整理や取材を通じて、産業や人種を問わず営業に必要な資質を解き明かすというものです。作中、十数人のセールスパーソンが登場します。
※「産業や人種を問わず」という普遍性を証明するため話が重複したり、人物の紹介エピソードのなかに学者の引用が入ったりと、若干読みづらさがあります。。
愚痴っちゃった。今回はそのなかでも私が個人的に気に入った3名のセールスパーソンをご紹介します。
■■土産物屋のマジード
■ポイント:打たれ強さと柔軟性
序盤に、モロッコで土産物店を営むマジードの話が出てきました。マジードは父親も商売人で、幼いころから自分もビジネスに携わっていたようです。
優秀なセールスマンは、いちばん重要な顧客の特性を掴み、売上を伸ばし、頭のなかのピラミッドに確信を持ち、その結果ますます顧客を見る目が冴えてさらに成功を重ねるという好循環を繰り返す。
(中略)
マジードは観察し、耳を傾け、相手に合わせ、感情をコントロールしながら、客の出すヒントを正確に読んでいる。ストレスや欲や感情の揺れは、素早い判断の妨げになる。
「優秀なセールスマン」たるマジードの強みについて、具体的に見ていきます。
・店内の銀食器に文句を言ってきたり乱暴に振り回したりしたお客を冷静に諭したら、翌日そのお客が気持ちを改め話を聞きに戻ってきた。結局複数個のお土産を買って帰っていった
・「『最高』の絨毯が欲しい」という男性のオーダーを聞き、「帰国後友人に自慢する用の『値段の最も高い』絨毯が欲しい」と解釈して、臨機応変に対応できた
このお客に対する傾聴と分析スタンスは、長年の現場経験の賜物ではないでしょうか。商材がtoCでもtoBでも、この感覚は養っておいて損はなさそうです。
■解釈:「買いたい」という感情はすぐ表に出てこない
本の内容を深堀り、自分なりに解釈してみます。
私は革靴が好きなのですが、学生時代の4年間、大手スーパーで革製品を販売していました。地域の人で知らない人はいない大型のモールでした。
その4年で色々なお客さんを接客してきました。そこで学んだことは、人の「買いたい」という感情はすぐ表に出てこないという視点です。
話したいだけのおばあさんには世間話をして、気持ちが満たされたタイミングで、ついでに孫の入学式のローファーを買ってもらうとか。
2点で迷っているというお客さんは話を聞けば「本当はこっちの靴が欲しいんだな」という心の声が分かるので、背中を押してあげる言葉をかけるとか(ex. これからの季節、服装が暗くなりがちなので、足元を少し明るくするだけです。派手過ぎることなんてないですよ)。
この機転やしたたかさは、確かに「芸術」かもしれません。
■■美術商のデュヴィーン
■ポイント:駆け引きと根回し力
本の終盤に出てくる美術商のデュヴィーンも駆け引きができ、準備周到なセールスパーソンです。
美術作品の「原価」って絵具や画材、アーティストの作業工数などですが、「販売価格」はそこに付加価値が乗っかってきますよね。その価値を創出するのが、デュヴィーンたち美術商の腕の見せ所です。
以下、デュヴィーンの駆け引きです。
・お金持ち夫人のご友人を、ドアマンに頼んでわざと30分待たす。また、相手が欲しい作品を、価値がわからない人には売らないと言って断る
・照明や展示にこだわった空間で作品を飾り、お客一人だけ対峙させる。買わない判断をした人には、「無教養な行いだ」と煽る
また付加価値の創造のための駆け引き以外に、根回し力も彼の強みです。
・下働きの人たちにも十分な支払いと手厚いチップを用意して信頼関係を作っておいた。そのため、お客の執事たちに主人のお財布状況やプライベートのことをヒアリングできた
・口説きたいお客には、その執事を相手に会話の予行練習まで徹底的に行う
■解釈:誰に、いつ売るかを考え尽くす
デュヴィーンはビジネスで成功した富裕層をターゲットにしていたと思いますが、根回しを見ると、いつ口説くかをよく考えていますね。
革靴の例がたまたま続いて恐縮なのですが、私は新卒一年目で某革靴メーカーのプロモーションに関わったことがあります。
その時の経験から国内の革靴市場に興味を持ち、研究して、初心者靴磨きセットの販売など布教活動を行っているんですが、先日某メーカーの執行役員の人にこんな話で盛り上がりました。
・今の店舗販売(toC)には限界があるので、まず企業の広報や秘書に掛け合って、まず役員クラスに革靴を売り、従業員にも時間差で販売するtoB戦略はどうか?(私)
・面白い。実は企業のエグゼクティブが利用する国内のホテルに対して営業をしたことがあった(某社執行役員)
モノが売れづらくなったこの時代、特に高関与商材は賢く販売したい。
もし自分が革靴メーカーの営業なら、美術商のデュヴィーンのように、革靴も「できるビジネスマンの必須武器」「丁寧な仕事は足元から」「履き込むほど成長していく相棒」など、もっと情緒的に価値付けして販売したいですね。
■■生保の柴田さん
■ポイント:ポジティブ思考と自己暗示
最後に紹介するのは、中盤に出てきた第一生命の柴田さんです。本書のなかでも若者が毛嫌いしそうな泥臭い、まさに「営業職」という印象を受けました。
同じ章の初めに、こんなセールスパーソンの資質が紹介されていました。
自分の行動とその理由を理解し、どんな見返りがあるか、また誰をよろこばればいいかをはっきり認知しているセールスマンは成功していた。
(中略)
顧客に耳を傾けてその頭の中を理解する共感力と、成約にこぎつける自我の強さが必要だ
自分の役割を認知し、相手への理解と自分の売りたい気持ちのバランスを取る。柴田さんはまさに上記の実践者と言えます。
・生保の仕事がお客様のため、その安心と健康のためだと自分を説得した
・現在と未来のお客様の利益のために闘っている、と言い聞かせた
・納得しているからこそ妥協はしない:「お客様が掛けるべきだと私が思うお金を掛けるまでは、絶対ありがとうございますとは言わないんですよ。」
■解釈:自社商品サービスを信じられるからこそ、売り込みに自信が持てる
前述のとおり私は営業経験がないのですが、柴田さんのように粘り強く営業に打ち込むためには、自社の商品やサービスを本当に勧められないと無理だと再認識しました。
私の部署では「SNSのマーケティング支援(コンサルティング)」という無形商材を扱ってます。そこで定量定性的な実績を作ることが、営業活動の一助になると感覚的に理解しています。
以前、顧客にヒアリングして満足度を調査したことがありますが、その時のポジティブなフィードバックにはチーム皆で喜びました。今後も「クライアントに対してビジネスパーソンが誇れるサービスにするためには?」を追求していきたいです。
■■まとめ
冗長になってしまいましたが、マジード、デュヴィーン、柴田さんからの学びをまとめると下記です。
・買い手の心を見極め、適切に応対して売る判断力
・買い手が売り物に釘付けになる仕組み作り、段取り力
・自信を持って買い手と向き合い続けられる精神力
ちなみに、本書を読むにあたって、田端学長から有難い鉄拳が。
イケてる営業は自分がフォーカスする部分と無視する部分を大胆に決める。「提案をまとめる」とはそもそもそういうこと。内容の万遍ない要約など誰も求めてない。
くうーー本当その通りです。この課題に限ったことではないですよね。気を付けます。
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