健忘録【18】

入院中、急変してICUで挿管したことがある(口から気管まで管を入れ、人工呼吸器につないだ)。なので、一応、回復してきていても、急変リスク有として、心電図とSpO2(血中の酸素飽和度の目安)モニターが付いていた。

あ、そうそう、動くと脈は直ぐに爆上がりしていたっけね?

しかし、この時は、私は既に1階から10階までを階段で昇って移動していた。

リハビリ、リハビリ。(笑)

元々、自宅も学校も、駅やほとんどのビルは、階段さえあれば、階段で昇っていた。

スポーツ好きなので、常に体力向上を目指したいし、そもそもこういう自分ルールや自分との競争って大好き。

過去の自分とタイムで競争したり、以前よりも多くう運動して、着実に自分に勝つのって、めっちゃ楽しくないですか?

ということで、日常動作目標のうちに、階段を毎日凄い量上り下りできるというのも含まれていた。

本当は、スポーツ好きだからね……

で、ある時いつものようにふっと階段で健忘録【15】で書いた緩和病棟に繋がるエレベーターがある建物にリハビリに行った。

当然、戻ってくるのも階段。

別病棟の探検とそこでのノルマをこなして充実している私は、軽い足取りで1階段を10階まで駆け上った。(軽い足取りとはいっても、リハビリ中。想像にお任せします(笑)。実際には、普通のペースでも汗が噴き出てビショビショになって登っているんだけれども、その辺は、気にしない、気にしない。)

そして、病棟に戻って、パッと自分のモニターを見ると、脈は189。

上がってる。

けど、以前は普通にベッドにいる時に脈が170超えた時とかは、すっ飛んできて、それ以上しゃべらずにちょっと休むように言われた。(昼間だけ人工呼吸器を外しており、夜はまだ人工呼吸器をつけている時の話。声が出せる理由は、首に開けた穴(気切)に挿入しているカニュレと呼ばれる人工呼吸器をつなげる筒に蓋を付けることができたからだ。息を吸うときには、気切から空気を吸い、息を吐く時だけ、弁になっている特殊な蓋が閉まって、空気が声帯を通ることができるという仕組み。)

まぁ、確かに、夜だけ人工呼吸器をつけている状況とはかなり違う。そもそも、運動直後の脈が高いのは当たり前だから、脈が高いこと自体は普通だ。

しかし、スタッフに全く何も触れられないと、モニターを見ていないのかな?と気になってしまった。(なぜ、このような発想になったかは、後ほど……)


なので、聞いてみた。


すると、その日の担当看護師が、「さっきまで、モニターが圏外で拾ってなかったから、突如戻ってきたシグナルが高い脈拍という場合、リハビリ(運動)の影響だろうと思った」、と教えてくれた。


あ、凄い、そこまで見ててくれているんだ!(モニター以上に私の性格や行動パターンまですっごく色々理解してくれている。)


なんだか、すっごく頼もしい。


こういうと、物凄く失礼ですよね。

読者の中には、「モニターなんだから、見ていて当たり前でしょ? 何このクソガキ!」と思うのをぐっとこらえて、聞いてください。

私がまだ人工呼吸器を夜装着していたけれども、比較的体調が安定してきていた時の話です。

ずっと付き添い入院で、私の親は代わる代わる昼も夜も常に病院にいた。(小児科では、よくある光景。)

私も自立心の非常に強い人&年齢だった。

回復してきていることにも、非常に自信を持っていた。

もう、自分の体調は安定しており、悪化することはないと確信にも似た自信に酔いしれていた。

だから、「もう、夜も泊まらずとも大丈夫。必要ならば、(四肢が動くようになったから)自分でナースコールで助けを呼べる。

今晩はもう帰っていいよ!」と父に告げたのだ。

しかし、頑なに帰らないと主張された。

「え、いや、だから、ナースコールも呼べるし!大丈夫だってば!むしろ、一人の時間も欲しいから、帰ってもいいよ。」と訴えた。

最初は親がいなくても、もう大丈夫だよ、安心して、という気持ちがメインだった。しかし、どうしても帰らないと言われると、少し自立させて欲しいとも思う。人って強欲な生き物だよなぁ。人工呼吸器装着中は、昼間意思疎通ができる相手がいることが、発狂せずに済んだ大きな要因かもしれない。

四肢が動かず、首も動かせなくなってしまった時は、顎の開閉を筋電図で拾ってくれるナースコールを備え付けてくれた。しかし、親と口パク(口だけ動かして(声は空気が声帯を通らずに))会話をしていた。なので、リハビリの筋電図を設定してくれる人が帰る前にせっかくバッチリナースコールが機能する位置に筋電図の電極を設置してくれても、しゃべるたびに百回ナースコール鳴らす迷惑行為を避けるため、取り外して家族が夜再度設置してくれていた。

しかし、この設置は、当然パーフェクトではない。また、電極を張り付けているので、最初は鳴る位置でも、途中で汗?など原因は定かではないが、ズレて鳴らなくなってしまうこともある。

そういう時に……親がいれば、何かの異変に直ぐに気がついて、対応が速やかという利点があったのだ。(父がイビキをかいて寝ており、看護師が来てくれて初めて起きたり、アラームが鳴って起きることもあった😅 こういう遅れた覚醒は稀だったから、普段は……特に病状が重い時はとっても心強かった。逆に、母はいつでも直ぐ100%起きて対応してくれた。🤣)

まぁ、元気になってきたら、もう心配いらないから帰ってください、というのも、ある意味傲慢なのだろうか?

とはいえ、ね、やっぱり若いし、良くなってきていれば嬉しいし、ポジティブなことしか考えていないと、もうそのまま改善あるのみって思うじゃん?(その無鉄砲さを抑えるのが親か?)


しかし、ここで登場するのが衝撃の言葉だった。(以下は、過剰な反応ですが、父も目の前で我が子が急変し、人工呼吸器を装着するところを目撃するトラウマがあります。父は言語が100%分からない環境で想像で埋めなければいけないところも多々あったことをご理解ください。ちなみに、父は威厳というか自身の重要性を保とうとするわりに、わりと説得に応じてくれる甘さもあります。)


「俺が帰ったら、お前は死ぬ。俺がいるからお前は生きれている。」


これには、流石に頭にくる。


私の心の声「は? ふざけるな!」

まぁ、反抗期でもおかしくない年齢なんだし、実際死闘を勝ち抜いた時期だしね……

これは、父が自ら灯油かぶってマッチに火をつけたような発言だよね。

読者さんもそう思うでしょ?

それに続く。

「もう、ICUに居た時のことを忘れたのか?

また、ああなったら、俺がいないとダメだ。

俺がいれば、直ぐに対応できる。

動けず、呼吸もできなければ、ナースコールも押せないだろう。

俺がいるから、お前は生きれるのだ。」


それに対しては、反論する。

「いや、忘れたわけじゃないけど…… 

もう、大丈夫だってば。今順調に良くなってるし、このまま良くなるだろうし!

大体、モニターもついてるから、何かあれば、直ぐに駆けつけてくれるよ!

皆凄く良い人達じゃん!

だから、大丈夫だって!ね。

これは、私の自信にもつながるし。

だから、今晩は帰って。」

しかし、その後続いた言葉には、何も言い返せなくなってしまった。

「この部屋から数個先の部屋に入院していた人は昨日死んだ。俺は目撃したのだ。モニターのアラームが鳴っていたが、誰も部屋に行かなかった。俺が帰ったら、お前もそうなる。だから、俺はお前が何と言おうが帰らない。」

(これは、完全なる勘違いだと思います。一つは、その方が本当に亡くなったのか、そもそもそれ自体が勘違いなのかも不明です。もう一つの可能性は、オミトリの方が病棟におられたという可能性。もう、できることはやりつくして、その方に施せる延命措置はなかった。あるいは、延命措置を望まない意向を示しておられた。普通に回復の余地があり、それを望んでいる人をただただ放置しているということは、基本的には考えづらいです。他の可能性としては、夜別の部屋で処置などを行っており、アラームの音に気が付けない状況だった。また別の可能性として、ナースステーションに飛ばしているアラームはついておらず、室内だけのアラームだった。これも、急変リスクを察知できたから、室内のアラームはつけていたと推測され、考えづらいだろう。即ち、死期を遅らせる術が存在しない状況だったと考えるのが自然であり、それと同じ状況が回復期の患者でも起きることは考えづらい。

そもそも、私が何かの症状で眠れないからと、夜ベッドの周辺を歩いて症状の緩和を図るというか、やり過ごすのを待つというか……とにかく、何か症状があり、無視するために動いていると、脈が上がった。夜なのに、普段の寝ている脈拍数と違うというだけで、様子を見に来てくれた。(後日談です)なので、少なくとも、自分の場合には、モニターをしっかり見ていてくれて、普段と違うだけできちんと状況把握と速やかな対応をしてくれていた。とはいえ、モニターに異変が出る状況とは、心拍数やSpO2(血中の酸素飽和度の目安)が異常になり、警報を鳴らす状況だ。もし、こうなる前に異変の兆候などを察知できたら、それが一番良い場合もあるかもしれない。確かに、もしも何か急変したとしたら、モニターが異常値を示す程状態が悪くなる前に、付き添い家族が異変に気が付き、ナースコールを押した方が、対処が速くなる可能性はある。)


父のこの発言は、今でも私の行動や言動に多少は影響を及ぼすトラウマを残しているかもしれない。


まぁ、こう、色々なことがありながらも、着実に回復しており、皆がかなり自分の状態をきちんと見ており、そして、すっごく良く理解してくれていた。


入院って、一見病気だけ対応する場所で、生活空間というイメージからはかけ離れているかもしれない。


しかし、患者が気がついている以上に、スタッフに見守られている。実は、患者の性格まで伝わることも多々ある。


色々な場面で会話もするので、価値観なども結構伝わる。


だからこそ、医療者が仕事としてそこで過ごしているその空間と、患者が治療を受けているその空間は、ある意味で生活空間でもあるのではないだろうか。


するとやはり、行動パターンや性格も患者の自覚している以上に、周囲のスタッフが理解してくれているのかもしれない。そして、患者が察知する以上に、実に様々な場面で対応やフォローをしてくれているのだろう。


見守ってくれていて、普段の行動パターンと予想される行動、今見えている事象から、ピースをつなぎ合わせてくれているのはなんだか嬉しい。


私自身、自分でも気づいていない自分の性格をズバリ理解してもらっていたこともあった。ビックリ😳 でも、理解されているのは嬉しかったな😊


病院は非常に頼りになり、皆が思っている以上にその場にいる全員の時間を共有する人間的な場なのかもしれない。


今を大切に生きよう!




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KG
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