教員不足の対策は「働き方改革」
今の状況下で「教師になりたい」と思う大学生はどれほどいるだろうか。
教職をやるだけやって、あとは紙屑同然で押し入れの中に眠っている教員免許はどれだけあるだろうか。
教員免許を持っている人はあれだけいるのに、ニュースでは「先生が足りない」と言っている。
今の取組では教師不足の解消は無理!
教育新聞の「教員不足に対する行政の取り組み」を一通り読んでみたが、まあ無茶苦茶極まりない。
要するに、教員が学び続ける姿を児童生徒に見せましょう、より専門性の高い教員を養成しましょう、というのが言いたいことなのだろう。
他にも2年で教員免許(二種免)が取れるようにしましょうとか、教員採用試験を複数回設けて教員になれるチャンスを増やしましょうとか、民間人材から探しましょうとか言っている。
前者と後者は矛盾していないか。
前者で「より質の高い教員」を作ると言っておきながら、「二種免の制度を拡充しましょう」だの「教採や外部からもっと採りましょう」と言っている。
要するに質の高い教員がほしいのに、質の低そうなところから採ろうとしているのだ。
そもそも一種免は四大卒レベル、二種免は専門卒、短大卒レベルである。種の違いは地域によっては給与やキャリア形成にも大きく影響する。
そして、二種免は一種免に比べて少ない単位数で取れる=その分教育に関する知識は薄いということだ。
保護者も同じ能力、人柄で二種免しか持ってない人と一種免を持っている人なら、一種免を持っている人を担任にしてほしいと思う人が多いだろう。
我が子には質の高い教育を受けてほしいと願う親御さんが、より質の高い教員を求めるのは当たり前である。
「受験のチャンスを増やす」というのも疑問である。
そもそも一発目に教採に受からない時点で「あなたは教員になる実力・資質が不足しています」と言われているようなものだろう。
そこから臨時採用などで毎年受けている人を私は何人も知っているが(特に中学・高校に多い)、何度も受けて30手前で正規教員1年目…となるくらいなら、民間の塾なり私学の教員になったほうがまだマシではないか。
特に1回目落ちたけどリベンジして受かりましたという人はなおさら教員の質に疑いがかかる。一度落ちてるじゃん。
1年くらい時間を空けて受けるならまだしも、短期で2度も受けて、最後は付け焼き刃のようにして受かった試験に価値はあるのか。
今の若者は「働き方」に敏感
今の若者は「働き方」に敏感である。
何よりワーク・ライフ・バランスを大切にする。
仕事は最低限だけして、プライベートとしっかり両立したい。
有給も使いたい。残業もきちんとつけてほしい。
産休育休などの福利厚生もしっかりしてほしい。
じゃあそれが教員になったところで叶うかと言われたらはっきり言って無理である。
勤務時間外に教材研究や授業準備をしなければならない。
それ以外にも連絡帳の返信、日頃の指導記録、掲示物の飾り付け、会議、研修、登下校指導、給食指導、休み時間の見張り、費用の回収、校外学習の下見、行事の準備電話対応、いじめやトラブル対応、諸作業…
中学高校ならここに部活動の顧問としての引率などがついてくる。
残業はもちろん、家に持ち帰ってするような準備もある(もちろん無給)。
残業代は申し訳程度にしかつかないし、プライベートとの両立なんて夢のまた夢。
教育系の仕事をした人ならわかるが、家を一歩出たら(特に校区内なら)「先生」として見られているため、変なことはできない。プライベートなんかないも同然である。
産休育休はあれど、子どもの熱で早退…なんてことはそう簡単にできないし、妊娠したら同僚よりも保護者からのマタハラがある。
こんな状況で「教員になりたい!」と言う人は増えるのか。
授業の流れとTC表(授業の台本)だけは全国統一で用意して教材研究の時間を短縮する、部活の指導は外部からコーチを招聘して引率等を委託することで顧問の負担を減らす、ペーパーティーチャーからは時短勤務の教員を何人か雇って正規教員の代講(或いはその逆)に入れる仕組みを作る、登下校指導は緑のおじさんおばさんに任せる…など任せられるところを外部業者や時短勤務の教員に任せて、正採用の教員の負担を減らす方向にシフトしていくべきである。
「可処分所得」の底上げ
そして給与の底上げである。
これは一般企業でもそうだが、賃金を上げるのはもちろん、控除額(税額)を減らすことが大事である。
国民が望んでいるのは手取り給与、可処分所得の底上げである。そこは間違えないでほしい。
額面が上がったところで、税金で大幅に持って行かれたらなんの意味もない。減税までして手取りが増えることで、国民は初めて給与の底上げを実感することができる。
国民が一番見ているのは手取り額である。
そこを国会議員の皆様がわかっているのか少し疑問である。
そして、103万の壁を176万に底上げするとかしないとか言っているが、するならばそれに沿って基礎控除額もかなり上げて貰わなければならない。
名目上底上げはしても、176万1円以上稼いだら何十万も損するとか、そういうやり口を今の政治なら平気でやりかねない。
基礎控除額を大幅に上げて、年収の中央値を上回る年収400〜500万くらいの人たちまでにも恩恵がないと困る。
私は一般企業勤めだし、中央値にも及ばない安月給であるが、安月給であればあるほど、働けば働くほど苦しくなる。そこはよく考えてもらわなければならないと思う。
話はかなり逸れたが、教師になりたいと思う人を増やしたいのであれば、質を上げるとか場を設けるのではなくて、働き方と給与の面で待遇を上げる必要がある。
学校教員に時短勤務を導入して働き方に多様性を作る、外部機関を活用して正採用教員の負担を減らす、有給使用をフォローできる代講システムを拡充する、残業や有給は一般企業と同じシステムにする…
これだけでも学生さんが教員を目指すハードルは大幅に低くなると思うし、ペーパーティーチャーのセカンドキャリアを考える際に教員を視野に入れてもらうきっかけになると思う。
現場の先生方、ペーパーティーチャーの当事者達、教職を取ってくれている学生さん達の声を聞いて、ちゃんと反映させなければ「教員不足」は今後も解消されるどころか、悪化の一途をたどるのは確実である。