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アートナビゲーター ・金融マンの週末美術館巡り雑感の記

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過去30年ほど国内外での仕事に刺激と癒しを与えてくれたアートを巡る出会いをベースに、最近の美術館巡りの雑感を掲載します(コロナ禍が収まるまでしばらくは国内ですが、、、)。
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琳派と印象派展

琳派と印象派展

新春はアーティゾン美術館「琳派と印象派」展から。

なかなか難しい展覧会。「東西都市文化が生んだ美術」と銘打つも、市民革命を経た近代パリと未だ封建時代の近世江戸を「都市文化」として並列的に括ってしまうことの大胆さに、ちょっと違和感が残るという意味で。

それでも、モネの≪睡蓮≫の向うの酒井抱一≪松島図屏風≫、セザンヌの≪サント=ヴィクトワール山≫の隣の鈴木其一≪富士筑波山図屏風≫、それらが醸し出す

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STARS 展

STARS 展

11月最後の土曜日、「STARS展: 現代美術のスターたち-日本から世界へ」を見る。

草間彌生、李禹煥、杉本博司、宮島達男、奈良美智、村上隆(失礼ながら年齢順に並べるとこんな順)。一番若い村上隆と草間彌生との間には優にワンジェネレーションあるし、それぞれの作品に共通性があるとも思えないけれど、6人が6人日本から世界に打って出て、その世界で認められ、今なお現役バリバリのアーティスト、確かにSTAR

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原美術館

原美術館

快晴の土曜日午後、原美術館。

散歩がてら立ち寄る身近な美術館だったけれど、それもいよいよおしまい。閉館が来年1月に迫っている。

最後の「光-呼吸 時を救う5人」展、佐藤時啓はじめ、美術館をモチーフにした作品が同館の最後に相応しい。森村泰昌、宮島達男、奈良美智の常設も健在。名残り惜しいが見納め。

この美術館、仕事で疲れていた時も、不思議とエネルギーを充電してくれた。中庭のカフェに座って東京の空

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Domestic Affairs 伊藤隆介

Domestic Affairs 伊藤隆介

金曜夜、天王洲アイルの児玉画廊で伊藤隆介の「Domestic Affairs」を見る。

ご案内を頂いたギャラリーのKさんによれば、壁に映し出されたスナック菓子の商品棚や火事現場のリアルな映像は、実は眼前のミニチュア模型を巧みに映し出したものとの説明(なるほど!)。

作家の意図はともかく、普段からTVに映し出される映像も、実は精巧に作られたフェイク映像かもしれないよ、そんな警鐘さえ聞こえて来るよ

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宮島達男|クロニクル 1995-2020

宮島達男|クロニクル 1995-2020

定期的に見たい作家がいる。宮島達男もその1人。2016年、訪問先のシドニーでたまたま見た「Connect with Everything 」展から4年、千葉市美術館に「宮島達男 | クロニクル1995-2020」展を見る。
仕事がら、物事は数値化・計量化すれば具体的になるんだろうという発想をしがちだけれど、宮島作品の「数字」に込められたメタファーの多様性に触れると、物事そんなに単純ではないように思

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「桃山天下人の100年」展 東京国立博物館

「桃山天下人の100年」展 東京国立博物館

雨降る土曜日の夜、東博の「桃山天下人の100年」展に出掛けた。

同時代を彩る200点余の出品物の中、見入ったのは等伯の国宝≪楓図壁貼付≫(10年前やはり東博の「没後400年長谷川等伯」展でも見たはずだけど)。中央に楓、向かって右には濃密な秋草、同左には一転金箔の空間と、この画面処理、緻密綿密な計算に基づいているんだろう、それでいて見る者の気持ちをスッと動かす。これぞプロ。

能登から上洛して保守

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「江之浦奇譚」 杉本博司

「江之浦奇譚」 杉本博司

注文をしておいた杉本博司氏の新著『江之浦奇譚』(岩波書店)が届いた。「江之浦測候所」を巡る同氏の一代記の模様。

江之浦測候所を訪れたのは丁度2年前の晩秋。広大な敷地の中に再現された杉本ワールドに大いにinspireされた。今もそうか分からないが、確か図録のようなものはなく、少し寂しい思いをしたことを思い出した。

これからの季節、格好のbedtime readingの一冊になりそうだ(写真もふん

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ピーター・ドイグ展

ピーター・ドイグ展

ピーター・ドイグ展、会期終了が近い金曜夜に何とか飛び込む。前売券は1月に買っていたにもかかわらず。

ピーター・ドイグ、多才な人だ。具象と抽象、遠近法と平面的な画面処理等々、確かで多様な技術を駆使しつつ、見る者にはひたすら自由な想像力を提供する。看板の1枚《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》の前では、そこに込められたストーリーに思いを馳せる。

電光ギトギトインスタレーションなど何でもあ

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Reforming Perceptions展 児玉画廊

Reforming Perceptions展 児玉画廊

金曜夜、天王洲の児玉画廊に立ち寄る。ちょうど9月上旬から「Reforming Perceptions」と銘打った新進気鋭の作家の抽象絵画展が行なわれている。

その内の1人、鈴木大介の抽象絵画は、現実のモチーフのイメージに依存しない、それそのものとしての絵画が追求されたものだと言う。抽象画に作家のモチーフが持ち込まれると、見る方はそれを分かろうと悪戦苦闘することがままあるけれど、鈴木大介はそうでは

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artTNZ

artTNZ

artTNZと銘打たれたアートフェアに出掛けてきた。今年中止になったアートフェア東京の代りと言うこともないのだろうが、現代アートのギャラリー40店強が天王洲アイルにオープンしたTerrada Art Complex IIに集結。元倉庫の高い天井は現代アートの展示にはうってつけ。

フェアに行ったからといって、必ずしも買うために見るわけではないけれど、買うことのできるアートを見ることはやはり楽しい。

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オラファー・エリアソン ときに川は橋となる

オラファー・エリアソン ときに川は橋となる

久しぶりの雨の土曜日、会期終盤になってようやく「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」展を訪れることができた。

光や色彩の仕組を通じて、予期もしなかったようなイメージを視覚出来るようなインスタレーションがずらり。

現代アートって作者の意図や製作方法を文字情報で読まないと、作品が何を表現しようとしているのか - 例えば環境保全がテーマとか - どうにも良く分からないことが多いけど、逆にその

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9・11

9・11

7月の日経新聞連載の杉本博司の「私の履歴書」、21回目は「9・11」。筆者撮影の写真「ワールド・トレード・センター」と共に、杉本さんは「私はあの朝、ニューヨークにいて、スタジオの屋上からタワーが崩壊していくのを見ていた。あんなに空が透き通るように青い日はなかった」と記している。

当時ニューヨークに勤務していた私にとって、あの現場の様相を知ったのはメディアで見た後付けの映像だが、ミッドタウンにある

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「東京モダン生活」展@東京都庭園美術館

8月最後の土曜日、午後少し時間が空いたので、白金の東京都庭園美術館「東京モダン生活」展を訪問。
 
1933年竣工の旧朝香宮邸美術館本館は、まさにアール・デコの館。すっきりとして都会的でモダンなアール・デコの様式美は、この建築が、朝香宮邸から戦後の外務大臣公邸、更には迎賓館と、常に時代のニーズに応えてきたことの理由と無縁ではないだろう。アール・デコは機能美を追求したものではなく、一種のスタイルとし

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毎日の積み重ねが、わたしをつくる。 「#習慣にしていること」note10選

毎日の積み重ねが、わたしをつくる。 「#習慣にしていること」note10選

今回のお題企画特集は、「#習慣にしていること」のすてきな作品を集めました。

仕事で培った時間の使い方や、じぶんを癒やすための習慣など、みなさんの日々の工夫がつまった10記事を紹介します!

・・・

■ 自宅で一人で20年働くフリーランス・デザイナーが実践している習慣術 / しんぱち。さん

■ リモートで働くPM10年目の私が、いまも続けてる14の習慣 / オカダヤスヒロ(岡田康豊) | プロ

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