【5分で読む】コロナ禍における「スポーツ興行」の今後について考えてみる。
皆さん、こんにちは。神村です。
前回は読書の意義など触れつつ、6冊の本を紹介しました。
読まれた方、そうでない方いるかと思いますが、まずは手にとって欲しいなと思います。
さて、今回は開幕して1ヶ月が経過したJリーグについてお話していきたいと思います。
本稿リリース時点(4月中旬)では、まだホームゲームが数試合しか開催されていませんが、クラブの現状と今後、さらにはスポーツ興行のあり方や東京五輪についても触れながら、皆さんと一緒に考えていけたらと思います。
(本稿は「Off the pitch talk 」第71~73回の放送内容のまとめです。今回はインタビュー小出さん&文責:神田さんでお届けします)
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#71 : https://stand.fm/episodes/60619994b5b866445b09b6e2
#72 : https://stand.fm/episodes/60645451b5b866c1c709ecc3
#73 : https://stand.fm/episodes/606839669e0dbec7aabf3477
開幕から1ヶ月、モンテディオの今
(神村):先日のホーム開幕戦に来てくれてありがとう!率直にどう思った?
(小出):東京から日帰りで行ったのですが、新幹線から在来線への乗継が結構大変で、スケジュール的にも結構ギリギリでした。ただ、スタジアムに隣接する公園は緑も多くとても綺麗で、東京には無い良さを感じました。
(神村):僕も本当にそう思います。かつて大分トリニータが J3 に居た頃、同カテゴリのアウェー全試合を現地観戦しにいきました。その際、ホームページを見てスタジアムまでのアクセスを調べるのですが、とにかく分かり辛いというのが率直な感想でした。各クラブは単純なアクセス方法だけでなく、地元以外の方に来てもらいやすくする導線をつくることが極めて重要です。コロナでたくさんお客さんを呼べない状況ではありますが、その中でも創意工夫が求めらます。また、山形の自然は本当に豊かです。僕が着任した秋はスタジアム周辺の紅葉がとても綺麗で感動しました。今は、桜が満開ですし、これから木々が緑に変わっていくのも楽しみです。山形以外の都道府県からお越しの方にも是非五感で味わっていただきたいです。
(小出):四季折々の風情があるのは良いですね!是非また行きたいです。
(神村):ところで、先日の試合の入場者数が公式発表では約6,200人でした。山形のスタジアムは20,000人収容ですが、コロナ禍での制限がある時期は10,000人を上限としています。実際の応援風景はどうでしたか?
(小出):実際の人数よりも多くいるように見えました。去年、現地観戦していた J3 のロアッソ熊本の試合と比べると山形の方が多い印象です。
(神村):既にJリーグでは5試合ほど終えていますが、どのクラブも集客に関しては苦戦しているように見えます。実際スタジアムに来てみて何か感じる部分はありましたか?
(小出):ファンの皆さんがマナーをしっかり守っているのが印象的でした。コロナ対策もしっかりしていましたし、これなら僕も安心してスタジアムで観戦できるなと思いました。
コロナ禍におけるスポーツ興行の今後
(神村):個人的な意見も分かれる部分だけど、コロナ禍が続くと仮定した場合、スポーツの仕事に関わる身として小出君はどう思う?
(小出):コロナ禍でもファン・観客を呼ぶための仕組みづくりをするか、観客が来なくてもよいようなデザインづくりをするか、チームはいずれかの決断をしないといけないと思います。
(神村):僕もまさに、経営者の中では選択が迫られている段階に来ていると思います。実は山形では、ホーム開幕戦と同じ日に自治体独自の緊急事態宣言が出されました。この状況下で今後、本当にお客さんが来てくれるのかは分かりません。我々の選択肢は「プロモーション費(広告費など)をかけてでも人を呼ぶ」若しくは「人数は来なくても、来てくれた人に徹底的にサービスを充実させる」の2択だと考えています。
(小出):たしかに、まずはそこから検討してみることが必要そうですね。
(神村):一方で、どれだけコストを掛けても人が来ないなら、あるいはプロモーション自体が憚られる中で、どう収益モデルを確立するか?が至上命題とも言えます。これは過去の放送で「二律背反じゃなくて両方を追求する大切さ」を語ってはいますが、経営目線ではどちらかに振り切る必要があるだろうと思っています。
(小出):なるほど。その上で2点お聞きしても良いですか?スタジアムに来る人数はある程度予測が立つという意味で売上にも上限があると思いますが、デジタルコンテンツは世界中に映像を配信できるので、限りなく母数を大きくできると思います。これについてどう思いますか?また、先ほどの話で2択どちらかに振り切る場合、いつまでに決断しますか?
(神村):1つ目の質問から回答すると、スタジアムは収容人数が決まっているので、売上上限はある程度想定できます。事実コロナ以前もスタジアム収益以外にライブ配信などを模索・試験運用しているクラブはありました。しかし、コロナでスタジアムにファンが来なくなった現状では、スタジアムに一定のお客さんが来る(収益が見込める)という前提が崩れてきています。まずは、どうやってスタジアムに戻ってきていただけるか?どこまで戻ってきていただけるかについて経営シミュレーションをしなければいけないと思います。その想定・判断はなるべく早い方が良いですね。
(小出):それは、なぜですか?
(神村):従業員にとって成果を早く出すことが大切だからです。それが達成感や満足度、やりがい等にも付随しますし、逆にやっても成果がなかなか出ない仕事というのは誰もがやりたくないのが当然です。頑張っても成果が出ないかもしれない、という不安感は仕事へのモチベーションを下げます。モチベーションが欠けていれば能力を発揮することが難しいのも事実です。そして、モチベーションの源泉となるのは、「頑張れば自分でもできる」とか、「やってみたいな」という気持ちになれるかどうかです。
(小出):そうですね。非常に勉強になります。
(神村)同時に、デジタルシフトというか、「来場を前提にしないマネタイズ手法」の確立について、どこまで突っ込んでいけるかも、ここ1~2ヶ月で決めていかねばならないと思います。来場しない、関心が薄れる、デジタルでも観ないという完全なる負のサイクルに入ってしまわぬように、これも早い意思決定が望まれると思います。
聖火リレー開幕、東京2020を考える
(小出):いよいよ今夏に迫った東京五輪についても、決断の時を迎えていると思います。つい先日、聖火リレーも始まりましたが、聖火ランナーの辞退者が相次いだり、コロナの影響で各自治体ごとに意見が分かれるなど混乱しているようにも見えます。
(神村):まず指摘したいのは、やる/やらないの是非論やどちらが良いのかという議論はさて置き、何故その決断をとったのか、また決断に対してどのような対応をするのかが大切ではないでしょうか。聖火リレーについても、そもそもいつオリンピック開催が決まったの?ってふと思ったんです。
(小出):僕も全く同じことを思いました(笑)
(神村):政府はオリンピック開催に向けて安全を確保しながらやるとは言いつつも、ワクチン接種は遅々として進まない現状があります。一方で、オリンピックを中止すべきという意見は最近聞かれなくなりました。なぜなんでしょうか?
この、皆と違う意見を言いにくい空気感にこそ違和感を覚えます。個人的には、やる/やらないの結論はどちらでも構わないと思ってます。ただ、違う意見を言えない、いわば同調圧力が世の中に広がっている気がしてなりません。たとえば今、やるべきではないという報道や公の発言が出たら、「選手が可哀想だ」等の感情論が出まれるのは容易に想像できます。
(小出):僕は以前、仮に開催しても皆が思い描くような盛り上がる祭典には出来ないと思ってたので、開催反対派でした。でも聖火リレーが始まった今では、どうやったら無事に開催できるか?という方向に考えがシフトしつつあります。
(神村):たしかにね。でも、仮に五輪前にコロナの状況が悪化してでも断固やると、国民に対して公に説明された訳じゃないよね。聖火リレーが始まっちゃったから、やらざるを得ないという空気感にいつの間にかなってしまったというのが本音ではないでしょうか。この点については、最近『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』、『空気が支配する国』という2冊を読んで色々と考えています。
(小出):似たようなタイトルの本ですが、どちらの主張も納得できそうです。
(神村):自分たちで考えるために必要なデータや知識を与えられないまま、社会の流れにただ追随する感じって怖くないですか?盲目的に付いていくことへの違和感がないと、いつの間にか自分の意見を持つことすらも憚れるんじゃないかって。
(小出):たしかに少しゾッとします。答えが見えない中でどちらの意見が正しいとか無いと思いつつ、少なくとも個々人の意見はあって然るべきだと思いました。
まとめ:違うことを恐れず、自分なりの意見を持とう
(小出):今回も様々なテーマで神村さんのお話を伺いました。
(神村):コロナ禍におけるJクラブの動向、将来のスポーツ興行、そして東京五輪を取り上げましたが、いずれにも共通して言えるのは、スポーツの一事象からも、データ分析・物事を俯瞰する力・意志決定力・反対意見への寛容性などを磨けるということです。そのために日常生活でも常に考える癖をつけることが大切です。それがひいては、仕事やキャリア選択でも活きてくると思います。また今回以外のスポーツテーマやスポーツ以外のことについて、小出君と色々と語る日を楽しみにしています!
(小出):はい、次回も楽しみにしています!今週もありがとうございました。