2024年秋 最低賃金改定と年収の壁について考えてみた🤔
こんにちは。
メタップスHDでre:shineと人事労務を担当しているフリーランス・イケダ(@m_ike)です。
今年も47都道府県ごとの最低賃金の改定が決定しました💴
各都道府県の引き上げ額、東京都は50円Upの1163円、最も引き上げ額が大きかったのは徳島県の84円Upの980円です。
「自分は時給制じゃないから関係ない!」と思わずに、基本給やみなし残業代が最低賃金をクリアしているかどうかも、あわせて確認してみましょう👆
最低賃金の改定と、これに伴って毎年のように話題になる『年収の壁』とのせめぎ合い……🔥
政府は年収の壁・支援強化策により年収の壁を気にせずに働ける環境づくりを後押ししていますが、まだまだ周知されていないように感じます。
賃金が上がるのはうれしいけれど、税金や社会保険の負担が増えて手取りが減るのは困る😢
今回はそんなお話を深堀りしてみました。
最低賃金って?
毎年少しずつ引き上げが行われている最低賃金ですが、そもそも最低賃金って何なのでしょう?毎年の改定は何のためにするのでしょうか?
最低賃金制度について見てみましょう👀
最低賃金法という法律があり、違反すると罰則(50万円以下の罰金)がある強力なものですね。
最低賃金の改定の背景・目的には、物価上昇や人手不足への対応、働き方改革実行計画の目標(年率3%程度Up、全国加重平均1000円)達成などがあり、最低賃金審議会で審議・決定されます。
※このnoteでの最低賃金は『地域別最低賃金』のことを指します👈
いつから改定になるの?
都道府県ごとに発効日(最低賃金改定の効力が発生する日)が決まっています。
例えば、今年2024年の場合は、東京都は10月1日、青森県や福島県などは10月5日、最も遅いのが徳島県の11月1日です📅
何か手続きは必要?
従業員の方は、基本的には必要な対応はありません。ただし、事業主である企業から時給改定・給与改定の雇用契約書などの締結を求められたら対応をしましょう。
その際は以下の点に注意してください。
改定後の最低賃金が守られているかどうか確認
「私は月給(年俸)制だよ!」という方も、基本給やみなし残業代が最低賃金の改定額に触れていないか確認しましょう。
計算方法はこちらを参考に👇
改定日の確認
時給や給与の改定日は発効日より後では違反になります。勤務先の所在地の都道府県、または管轄する支店や本社のある都道府県などの発効日を確認しましょう。
東京商工リサーチの2024年「最低賃金引き上げに関するアンケート」調査によると、回答した全企業のうち2割が今年の最低賃金の改定額を下回っているという結果が出ています👀
時給制以外の方も、最低賃金を下回っていないか、ぜひチェックをしてみてください!
また、最低賃金額も発効日も、勤務地が〇〇県だからこれ!とは限りません。支店や本社で給与計算を一括管理している場合などは、勤務地以外の最低賃金額などが適用になることがありますので「🤔??」と思ったら人事担当者や労働基準監督署などに確認をしましょう。
最低賃金が上がると困る人がいる?
最低賃金が上がれば、給与が増えますから「ヤッター🙌」となりそうなものですが、そうならない人も世の中にはいます……。
例えば、配偶者や親御さんなどに扶養されている人などは、時給がUpすることで年収が増え、扶養から外れてしまったり、社会保険に自分で加入することになり社会保険料負担が増えてしまったりして困る人もいるでしょう。
そうならないために、年末近くになるとシフト(就労時間)調整をして、年収が一定額を超さないようにやりくりが発生することも。
こうなると年末で人手が欲しい企業は困ってしまいます……😓
なぜ、こういうことが起きるかというと『年収の壁』と呼ばれる税法上の扶養や社会保険上の扶養でいるための、年収の上限額(壁)が決まっているからなのです💴
『年収の壁』って?
年収の壁という言葉をよく耳にすると思いますが、実は壁は一つではなく、次のようにいくつもあります😲
100万円を超えると住民税、103万円を超えると所得税、106万円・130万円を超えると社会保険料の負担が発生します💴
収入が給与所得のみの場合
103万円を超えると働くあなた自身に所得税が発生するだけでなく、あなたの配偶者や親御さんなどの税法上の扶養から外れることになり、所得税が増えてしまう……という影響があります。
※配偶者に扶養されている場合は、配偶者控除・配偶者特別控除という別制度がありますので、次の税法上の壁は150万、最後の壁は201万円となります。
また、130万円を超えると社会保険上の扶養から外れることになり、社会保険に自身で加入しなければならず、社会保険料負担が発生します。
壁の額は30年変わっていない?
税法上の壁103万円という金額は、1995年に決められ29年間変わっていません。また、社会保険の壁である130万円も、1993年に決められ31年間変わっていません😲
しかし、最低賃金は1993年(平成5年)から2024年の改定までで543円引き上がっています。
例えば、週20時間(月80時間)働いた場合、1993年と今年2024年の収入を試算・比較してみると👀
すでに、2022年の最低賃金の改定で、税法上の扶養の範囲内で働くことが難しくなっていましたね。
今年(2024年10月)から社会保険の適用拡大🏢106万円の壁
年収の壁に関する法改正が今秋あります。
これまで、企業の従業員数が101人以上の企業だった短時間労働者の社会保険加入が、今年10月1日から51人以上の企業に適用拡大になります。
加入対象となる要件の一つ、所定内賃金88,000円/月以上、年収で約106万円これも壁の一つになりました。また、この51人以上という基準人数も下がっていくことが見込まれています。
「もう!最低賃金が上がったって税金増えて、社会保険料も増えて、いいことないじゃない😡」
「こんな壁ばっかりで、もっと働けるのに時間減らすしかないじゃない😡」
そう思われるかもしれませんが、ちょっと待ってください✋
年収の壁・支援強化パッケージを利用
社会保険料の負担増や手取り額が減ることを避けるため、企業・働く人ともに働き控えをしてしまうことに対して、政府は年収の壁を意識せずに働ける環境づくり支援『年収の壁・支援強化パッケージ』を2023年10月から開始しています。
①社会保険適用拡大(106万円の壁)の対象となったら
手取りが減らないように賃金をアップしたり手当を支給した場合に、最大1人当たり50万円(中小企業の場合)の助成が受けられる。
週の所定労働時間を4時間以上延長するか、賃金を増額かつ週の所定労働時間を1〜4時間未満延長した場合、1人当たり30万円(中小企業の場合)の助成が受けられる。
※助成を受けるのは企業になります。従業員の方は事業主である企業から賃金アップや手当金の支給、労働時間の延長などの対応を受けましょう。
②一時的な労働時間の増加により社会保険加入対象(130万円の壁)となったら
事業主から証明(一時的な収入変動に係る事業主の証明書)を受けることで、社会保険の被扶養者として引き続き適用を受けることができる。
支援パッケージを利用するには、制度を整えたり助成金の申請をしたりと、事業主(企業)の対応が必須です。
すでに、企業側から提案を受けている方もいるかもしれません。そうでない方も、就労時間の調整を決めてしまう前に「こういう制度があるようですが、私には適用されますか?」と人事担当者に相談してみてはいかがでしょうか?
なお、この支援措置は令和7年(2025年)度末までの時限措置となっています。それ以降については検討中のようなので、これからもチェックが必要ですね👆
年収の壁を越えて社会保険に加入することは、年金額の増額や受けられる健康保険の給付が増えるなどのメリットもあります。
こちらのイオン銀行のタマルWebも参考に😊
人件費の上昇の対策は?
最後に、最低賃金の上昇や社会保険適用拡大による人件費負担が企業活動に与える影響について少し。
前述の東京商工リサーチの調査によると『最低賃金の上昇に対して、貴社はどのような対策を実施、または検討していますか?』という質問に対して『商品やサービスの価格に転嫁する』が48.55%と一番多い回答となっています👀
このように最低賃金改定と物価上昇の関係は、いたちごっこのように見えますが『賃金と物価の好循環』につながることをイケダは期待しています🙏
今後も続くと見込まれる賃上げ・年収の壁を越えるか越えないか?🤔
政府が掲げる目標「2025年以降に物価上昇を上回る賃上げを必ず定着させる」や「2030年代半ばまでに全国加重平均を1,500円となることを目指す」を見ると、扶養の範囲内で働くか・年収の壁を越えて働くか、働く人も雇用する企業も、しっかり検討する時期に来ているなと感じます。
過渡期は負担がより重く・大きく感じやすいです。
政府の支援パッケージの延長や新たな制度などをぜひ検討してほしいですし、人事労務としては申請しやすい使いやすい制度であってほしいと考えています✨
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