勾配が異なるセクションを最速で走る為の最適パワー~バイク個人TT(トライアスロン)~
前回の記事で、同じ標準化パワー(NP)で速く走る為の基本的な考え方について書きました。
今回は具体的に勾配に合わせてパワーをいくつにするのが最も早いか説明したいと思います。※NP一定、ドラフティングのない個人TTを想定。
1.NPで一定でペース最適化計算例
例として勾配4%距離1000mを登って下る下図のようなコースを考えます。
いつものように計算はZwiftベース。私の身長168cm、60kg、Zwift TT+32mmCarbon の想定です。簡略の為加速は無視しています。
NP(W)の計算は実際の定義と少し異なりますが、今回のように簡略化したモデルでは以下のように求めればほぼ同等となります。
Tn : 区間nの時間(s)
Pn : 区間nのパワー(W)
最適化計算はエクセルを使ってNP一定になるように出力を変化させ、最もタイムが良くなるようにしました。
結果は上の表の通りです。
登りも下りも180W一定の場合は261.3秒かかります。
最適化後は登りを192.7W、下りを114.8Wにすると登りで10.5秒短縮し、下りで4秒遅くなるものの、合計では6.6秒短縮できて254.7秒となります。
標準化パワーNPは180Wなので、同じ疲労度でペーシングの工夫だけで、6.6秒を稼ぎ出せた事になります。比率にすると2.5%ものタイム短縮です。
尚、標準化パワーNP≧平均出力の関係があるので、平均出力は171.4Wと大幅に落ちています。この事から少ないエネルギーで速く走る事ができているともいえます。
この条件で勾配を変えていけば、勾配によってどれくらい出力を変化させていけば良いか分かる・・・かと思いましたが勾配が上がってくると下りが早すぎてすぐ終わるので、下りの出力を登りにあまり回せなくなることが分かりました。
登って下ってだけのコースも現実的ではないので、次のようなコースを考えました。
2.勾配による最適化イメージ
5000m平坦があって50m登って下る。登坂距離は勾配によって異なり、2%なら2500m、4%なら1250mになります。一般的なコースでありそうな平坦と登りの比率で考えました。
このコースは、平坦・登り・下りと3つのセクションに分けられます。先程と同様に、180W一定で走った場合とNP=180Wの条件で最適化した場合を下の表にまとめました。
コースの勾配はA 2%、B 4%、C6%、D8%です。
コースAを例に見ていきます。
平坦 180W ⇨ 175.5W +5.2秒
登り2% 180W ⇨ 197.6W -19.8秒
下り-2% 180W ⇨ 152.5W +7.7秒 合計-6.9秒
平坦と下りの出力を登りに回した方が全体としてタイム短縮できるという結果です。
基本的にはこの傾向は変わらず勾配が急になるに従って、登りへの配分がどんどん大きくなっていきます。それに比例して、勾配が急になる程タイム改善率も大きくなっていきます。
ざっくり言うと
ターゲットNPに対して(今回の例ではNP180W)
2%の登りでターゲットNPの1割増し
8%以上の登りではターゲットNPの2割増し程度で走るのが良さそう
※その分平坦のベース出力を少し下げる。
速度の出る下りで休む
次回はもっと具体的にコース全体を最適化する方法について書いていきます。
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