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嫁以前バレンタイン、絶望仕事人
ありがとう、は言われるより言う方が多いかもしれない。
口癖になっている。
先輩に頭を下げた。
時間を割いてくれたことに、
真摯に向き合ってくれたことすべてに
感謝したい気持ちだったから。
それは当たり前のことかもしれない。
仕事だからそうしているのだ。先輩も同僚もみんな。
自分がこの世を去る時に、
この人たちとの関わりは当然ではなく
得難い縁だったろうと思うのではないか。
私は焦燥感に囚われることがよくある。
自分の至らない点に、後になって気づく。
どうしたって、先にいるひとたちには敵わないのだ。
仕事人としてのスイッチを、
私は手帳を書いたり
お花を選んだり
noteをかいたりして切り替える。
勤務中に、LINEが13件きていた。
すべて婚約者からで、
私は落ち着いたタイミングでそれを読み笑ってしまう。
スタンプの連投、猫の写真、手料理の写真。
それから、バレンタイン当日にチョコが貰えなかったことへの不満がジョークまじりに書かれている。
期待していたか、あるいは
仕事先でもらったか聞かれたのかもしれない。
それで、なんて嫁だとか言われたのかも。
ジョークにはジョークと、
ありがとうで返す。やっぱり。
「妻になったら毎年手作りするからね。」
とハート付きで送る。
彼の返信は疑いというか、
なんというかのものだった。
これもジョーク。
女性性が優位になっているのかも。
寂しいということかな。
彼がこんなにLINEをするのは久しぶりだ。
転職前はストレスのあまり
食欲不振になっていたし、
自分の洞窟に篭っていた。
愛情表現も、相手が受け入れられる土壌が整っていないと
きちんと響かないのは
男性も女性も一緒のようである。
よかったねと私は思う。
LINEする余裕が出るんだから、やはり彼の選択は適切だった。
疲れたから迎えにきてほしいと送ると
「これからどこそこの友達と是を食べに行くけど分かった」と返信があった。
私は電車で帰る旨つたえるが途中で連絡がきてしまう。
私のために、彼の動きに制約がかかるのは
望むところではなかった。
でも、余計に気を回すと
それは彼のプライドを傷つけ、2人がすれ違うことになるのを過去の経験から学んでいる。
聞かれたことだけに答える。
彼がお願いを叶えてくれたことだけに感謝すればよいのだ。
ただしオーバーに。
ありがとう、は相手のためにある言葉であるから。
「色んな人がいるけど、あなたが思うようにやっていいんだから。」
「ここを辞めたとしても、あなたに役に立つことを教えるからね。」
厳しくて有名な先輩に言われた言葉だ。
私はその言葉の裏の意味を読み取り、傾聴し尊敬する。
「ありがとうございます。ここで吸収できることは全てやります。」と答える。
時給、月給、歩合、フリーランス。
すべて経験したうえで
私の働くことの意義をしっかり見出すことが出来た。
安定して権利が守られ、何のストレスも不安も無い状況というのは
私には魅力がないとわかった。
経験や気づき、自分への挑戦こそが私のストレスレベルを下げ生きることをやさしくさせる。
すべて彼という安全地帯があるからだ。
1人でも乗り越えられると思うけれど
彼のもたらす精神安定や幸せは
奇跡としかいえない。
感謝してもしきれない。
これまでの経験で、感覚が研ぎ澄まされ
少しのことが幸福に感じるのだから
いま絶望している人も
それ以上落ちることはない。
おいでましたね、ありがとう。
そのようにして
絶望をよろこぶスタンスでいようと思っている。