不穏のいなしかた。




まだ夜が明ける前に起き出して、
じぶんを整える。

軽いヨガをし、アップをして
履き潰したスニーカーとジャージで走り出した。

ほんの30分。
でも沢山のランナーやウォーキングをしている人たちとすれ違う。
これまでは知らない世界だったけど、同志だ。今日から。


むかし。ジョグが苦手だった。
専門外だし、ただのアップだと思っていた。
常にやらされていると感じイヤイヤやっていた。

でも今は違う。
軽く走っただけなのに、血や酸素が全身をめぐるのが分かる。
こんなに走れなくなっているとは、と愕然とするけれど
その分即日実行した、という満足感があった。

他の誰でもない。私が決めたのだ。
毎日ジョグを始める、ゆったりペースで。



目標の大会がある。10キロのマラソン。
それは付き合いで出たいと思っていて、笑顔で完走できるようになりたいと考えた。
今回は出ないが、次の大会までに体づくりをしたいと思ったのが昨日のこと。


思い立ったが吉日だ。
逃げ回っていたことにケリをつけたいと思った。




ジョグの後の宅トレは、思ったより楽だった。
苦手なことをしてきたから、比較対象になってそう感じるのかもしれなかった。

そんなに時間を割けないから、小さく積み重ねていく。




どうやるか、は走りながら考えればいい。
非効率だとしても、走らないでぬくぬくしている自分よりは成長しているはずだから。





汗を流して、カステラを食べていると
彼がどこにいっていたの?と聞いてきた。

昨日の不穏はいつの間にか消えていた。
それで、「ああ、ジョグに。」と答える。
彼は驚いていた。ランシューを買ってからにすると思っていたのだろう。

私は化粧を始めた。
どこか行くの?というので
「どうしても一緒に行きたいっていうなら、考えてもいいよ。」と笑った。



受け身の彼の顎を持ってこちらを向かせる。
素早くキスをした。


彼は笑う。
ごめんね。

私も笑う。
いいよ、そう言う時もあるよと。


したい時にすればいい。
いろんなことを、こうやって。



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