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中学校で学ぶデータ処理スキル概観

Cover Photo by Wim van 't Einde on Unsplash

今月から、文部科学省が平成29年に告示した学習指導要領を参照しながら、現在の小中学生が学んでいる算数・数学の統計に関する部分を読み解いています。文部科学省による学習指導要領解説は次のリンクから読むことができます。今回からは中学校の「数学編」を参照していきます。以下「解説」と略記します。中学校数学の4つの領域のうち、「D データの活用」をおもに読み解きます。

今回は、1年生の内容に入る前に、小学校までに指導した内容を整理し、中学校でおおむねどのような内容が指導されるのかをまとめておきます。

指導の意義など

「解説」前半では、各内容の指導の意義などが記述されています。「データの活用」指導の意義としてまず出てくるのは「情報化社会」であり、「不確定な事象についてデータに基づいた判断」という言葉です。分解すると、「不確定な事象」および「データい基づいた判断」の2つです。これらが、中学校数学「データの活用」で取り上げられている内容の2つの柱です。

不確定な事象について

数学では、方程式のように解が明確に定まるもの(そういうものしか中学では扱いませんね)以外にも、不確定な事象も考察するのだと、と述べられています。このあたり、「数学は答えが一つに決まる」みたいな学習観をもっていると、つまづくポイントかも知れません。
では、不確定な事象とはたとえば何かというと、次の3つが挙げられています。

  1. 集団においてばらつきのある事象

  2. 偶然に左右される事象

  3. 全体を把握することが困難な事象

1は小学校でも扱われていました。一人一人身長が違うように、同じテストをしても一人一人結果が違うように、データには個人差がつきものです。これをどう表現するかについて、小学校では基本的なグラフや代表値が扱われてきました。
2は確率について、3は標本調査についてです。どちらも、統計学の基礎をなすと同時に、「なんとなくイメージするのは、そう難しくはないけれど、細かく議論するとひどく面倒くさい」テーマです。

データい基づいた判断について

データに基づいた判断に関して、何度も登場している用語が、「傾向や特徴の読み取り」と「批判的な考察」です。
傾向や特徴の読み取りは、小学校低学年からずっとやってきていることです。簡単な棒グラフを作り、どのカテゴリが最も多い、どのカテゴリとどのカテゴリにどのくらいの差がある、という読み取りと、なぜそのような差があると考えられるのか、という話し合いがくり返し出てきました。こうした読み取りをもとに、中学校では次のような考察が求められています。

  1. 問題解決過程の振り返り(適切なデータを適切に分析したか)

  2. 調査方法などの多面的吟味(データの集め方は適切だったか)

  3. 予測や判断の根拠は明確か(データのどの部分からそう判断したか)

当然と言えば当然の内容なのですが、実際に自分が集めたデータが手元にあると、ついつい集計結果や統計量ばかりに注意を向けてしまい、こうしたメタな視線を忘れがちになります。
また、ネット上には毎日さまざまなアンケート結果が流れてきますが、つい見出しに引きずられて、上記のことを吟味せずに結論だけを受け取ってしまいがちです。だからこそ、義務教育の中でこうしたことをきちんと指導すべきだ、ということなのでしょう。中学生も大変だ。

動画教材など

学年別の読み解きは次回以降にゆずるとして、ネット上でみられる動画教材をいくつかリストしておきます。

まず、言わずと知れたNHK for Schoolから。下のリンクでは、「中・高」対象の番組およびクリップから、「データ」を検索した結果です。対象学年を「小6」などに変更すると、また別の番組やクリップが見つかります。

「家庭教師のトライ」が運営しているTry Itでは、授業動画を無料で閲覧することができます。リンクしたのは、中学校1年生の「資料の整理」単元の授業一覧です。