2次元表の数え上げは得意でしたか?
カバー写真は、UnsplashのNick Fewingsが撮影した写真です。
前回までで、1年生から3年生までの、学習指導要領D領域「データの活用」の整理を終えたので、今回は4年生です。1年生から3年生は、データを数え上げるという同じ課題について、少しずつ難易度が上がっている感じでしたが、4年生から6年生までは、明らかにモードが変わります。どの学年でも、新しい事柄が登場し、だんだんと統計学らしさが増していきます。
4年生
4年生では、おもに2つのスキルを身につけることになっています。順に見ていきましょう。
2次元表への数え上げ
1つは、3年生までの「数え上げ」スキルの延長線上にある、2次元表での数え上げです。2つの属性をもったデータを正しく数え上げるのは、けっこうな注意力が必要です。たとえば次のようなデータを数え上げるとします。
形が3種類、色が3種類で、合わせて9種類ありますから、「えーと赤の三角形は…」と数えるのは、総数が少ない場合にしか使えません。ではどうするかというと、たとえば左から順に、
・「青い円」(「青」の「円」つまり3行目3列目に正の字を1画追加)
・「黄色い三角形」(同様に2行目1列目に正の字を1画追加)
というように処理するわけです。これを根気よく続けるのがとても苦手な子どもは、それなりにいます。大人の皆さんはいかがでしょう。
重なりや落ちがないようにするための工夫として、「解説」では、次のように書かれています。
数え上げた後は、行ごと、列ごとの合計を計算し、全体の合計を計算します。行ごとの合計の総和と、列ごとの合計の総和が合わないこともあります。どこかで足し算を間違えているのです。計算が苦手な子にとっては苦行の時間です。大人の皆さんはExcelが使えるので、計算式さえ間違えなければ大丈夫ですね。
見えにくい課題
ところで、この数え上げは(これまでもそうですが)、どんな値が登場するのかわからない、という見えにくい課題があります。上に示した例だと、最初から表の枠が提示されていて、形も色も3種類だとわかります。
しかし、たとえば100名からアンケートの回答を得たとして、そこに何種類の回答があるのかは一見しただけではわかりません。一意の値が何種類あるのかを正しく数え上げることは、重要な課題です。このことは、上に引用した「解説」222ページでも指摘されていました。
(選択肢を示して答えてもらうアンケートではこのような課題は生まれにくくなります。また、統計ソフトを用いると、このような心配をすることがなくなります。)
折れ線グラフ
もう1つは、折れ線グラフです。棒グラフが「量の比較」であるのに対し、折れ線グラフは「量の変化」を表すことが特徴です。何かの値が変化すると、それに伴って別の値も変化する、という事象をとりあげて、グラフにするのです。
小学校4年生では、この「伴って変わる量」が、C領域でも取り上げられています。こちらは一次関数的な関係を取り扱っています。たとえば、正方形のタイルを一列に並べて敷き詰めていくときに、タイルの枚数がふえると、その周囲の長さはどのように変わるのか、などです。
一方、D領域では時系列の変化を扱っています。一日の気温はどのように変化するか、身長や体重や毎年どのように変化してきたか、などです。
傾きを読む
折れ線グラフの読み取りで特徴的なことは、折れ線の「傾き」に注目することです。線が右上がりであれば、量が「増加」しており、右下がりなら「減少」、水平であれば「変化なし」です。傾きが急であるほど、増加または減少の程度が大きいことになります。
ただ、心理統計のなかで、折れ線グラフで何かを表現することはあまり多くないように思います。
演習問題
ある学習センターの新入学生に、所属コースと年代を回答してもらったところ、次のようになりました。所属コースと年代別に人数を集計してください。
心理と教育,40代/生活と福祉,30代/自然と環境,30代/生活と福祉,10代
生活と福祉,50代/情報,50代/心理と教育,60代/人間と文化,30代
心理と教育,30代/心理と教育,40代/人間と文化,70代/情報,20代
情報,20代/生活と福祉,40代/情報,10代/心理と教育,70代
人間と文化,60代/生活と福祉,30代/自然と環境,80代/情報,60代
情報,60代/人間と文化,40代/自然と環境,40代/情報,40代
情報,50代/生活と福祉,50代/心理と教育,50代/人間と文化,40代
社会と産業,40代/自然と環境,20代
いつものとおり、解答例をここに示すことはしません。当然ですが、手作業でなんとかしようとは考えないでください。Excelなどに貼り付けて、そこで何とかすることを練習していただきたくてのせています。
ヒント
上のデータをコピーしてExcelに貼り付けて、「区切り位置」で分解すると、7行8列にデータを整理することができます。
しかし、そのままではピボットテーブルを使えません。「1人分=1行」という形に整理することが必要です。