割合の学習はお好きでしたか?
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私はずいぶんな年数、小学校の教員をしていましたが、小学校5年生を担任すると、毎回、割合の指導に四苦八苦していました。この内容は、5年生の子どもたちにとって、本当に「鬼門」なのだと思います。(単に私の指導が下手くそだっただけ、という可能性もあるのですが。)
ところで、割合の学習は、D領域ではありません。しかし、割合をそれなりに理解していないと、D領域もまた難しいだけのものになります。
5年生D領域
D領域には、「円グラフや帯グラフの特徴とそれらの用い方を理解する」としか書かれていませんが、これらのグラフは百分率を用いて表現されることから百分率(%)について理解していないと正しく読み書きできません。その指導については、C領域に書かれています。
5年生C領域
類似した学習に「単位当たりの量」というのがあり、速さを「1時間当たりに進んだ距離」に直して比較するとか、部屋の込み具合を「1畳あたり何人」に直して比較するという学習をします。(他には、1haあたりの収穫量の比較など)
これも重要な学習なのですが、「割合」とはやや質が異なります。
「割合」では、「全体と部分」の関係が重要で、「クラス全員のうち、風邪で欠席したのは何%か」のように、全体を100%とすると、部分は何%にあたるかを考えます。%だけでなく、小数で表したり(40%=0.4)、歩合で表したりする(45%=4割5分)ことも学習します。
うわー、こういうの苦手だったあ!と思う大人の皆さんもきっと多いと思います。はい、私も苦手でした。たぶん自分が習った時も、そして、教えていた時も。
度数分布表やクロス集計表の「相対度数」で使います
割合はどこで統計の学習に登場するかと言うと、度数分布表やクロス集計表で「相対度数」を求める時に使います。特にクロス集計表の「相対度数」で苦労した方(している方)も多いのではないでしょうか。行ごとの比率、列ごとの比率、全体に対する比率、と3種類ありましたからね。いずれきちんと取り上げることになると思います。
(5年生では、クロス集計表の相対度数を取り上げていません。はっきり言って、そんな余裕はないと思います。はい。)
帯グラフ・円グラフ
で、D領域、グラフの話に戻ります。帯グラフも円グラフも、グラフの形状が異なるだけで、役割は同じです。読み方・書き方も良く似ています。
どの部分が何%であるかを読み取ることは、慣れれば比較的容易ですが、2つのグラフを比較するとき、比率の差が量の差を反映していないことには注意が必要です。どういう意味かと言うと、
A高校では、全校生徒300人のうち、75%が進学した。
B高校では、全校生徒500人のうち、60%が進学した。
というときに、比率としてはA高校の方が高いのですが、進学した人数(実人数)ではB高校のほうが多くなります。
(A高校:300×0.75=225、B高校:500×0.6=300)
慣れれば何でもないのですが、習いたての小学生には難しい問題でしょう。
注意点として、とくに円グラフでは、半径で区切られた部分の面積の比較がしにくい点があります。帯グラフでは、どの部分も長方形ですが、円グラフではどの部分も扇形になり、しかも向きがばらばらです。どれが最も面積が(つまり比率が)大きいのか、正確な判断ができないことがあるのです。
また、グラフの下半分にある扇形の方が、上半分にある扇形よりも大きく見えやすい、という傾向(錯視?)もあるようです。
そして、3Dグラフにすると、誤った理解を与える可能性があることもよく知られています。たとえば下の2つは同じデータですが、右側のグラフでは、オレンジの部分が強調されて、最も大きく見えてしまいます。
「統計的な問題解決」
5~6年生のD領域には、重要な用語が出てきます。それが「統計的な問題解決」です。これは何かというと、次のようなステップを踏んで問題解決をするといいよ、という指針のようなものです。
★「統計的な問題解決」
① 興味・関心や問題意識に基づき,統計的に解決可能な問題を設定すること(P:Problem)
② どのようなデータを,どのように集めるかについて計画を立てること(P:Plan)
③ データを集めて分類整理すること(D:Data)
④ 観点を決めてグラフや表に表し,データの特徴や傾向をつかむこと(A:Analysis)
⑤ 問題に対する結論をまとめるとともに,さらなる問題を見いだすこと(C:Conclusion)
英語の頭文字をとって、「PPDACサイクル」と表記したりします。よく耳にする「PDCA」と似ていて混乱しますね。ちなみに、放送大学の教科書「身近な統計 '18」でも、「PPDACサイクル」は取り上げられています。
「解説」では、学校で起きているけがについて、データを集めて、いろいろな観点から分析してみるといいよ、という活動案が紹介されています。が、総合的な学習の時間を活用するのでもないかぎり、算数の時間内でこうした活動をすることは、時間的にも難しいと思われます。
さて、5年生のD領域にはもう一つ「平均」についての指導があります。これについては、別の記事にしようと思います。
演習問題
ある日の面接授業(合計3クラス)に参加した学生に、所属コースを答えてもらい、棒グラフに表しました。グラフをもとに、各コースの学生の割合を求めてください。(割り切れない時は、適当な位で四捨五入してください。)