大きなお口のシグマくん
シグマ(Σ)ってむずかしい?
シグマ(Σ)は、「ぼくの後ろにある数を全部足してね💗」という記号です。まあ、別にハートマークはいらないんだけどね。「全部足してね」という意味なので、「総和」と呼ばれる。ここから後の文章では「総和」と書くこともあるよ。Σという字を使うかもしれない。
だったら足し算の式でいいじゃん!😡
それはまあ、その通りですね。だから、Σの説明のとき、統計の教科書ではこんなふうに書いてある。
$$
\sum_{i=1}^5 x_i = x_1+x_2+x_3+x_4+x_5
$$
ほーら、長くなっちゃうでしょ。これ5個だから簡単に書けるけど、データが100個もあったら大変でしょ? だから、Σって書くのねえ~。
という説明があったりする。とはいえ、
$${x_i}$$ って何なんだよ~!
というモヤモヤした気持ちには、あんまり答えていない感じがする。
足し算の筆算したことある?
ところで、足し算の筆算、したことあるかな? こんなやつ。
そろばん(珠算)を習ってた人にはおなじみでしょう。
なんでこれを出してきたかというと、Σって、こっちのイメージの方がいいかなって思うから。つまり、こういうこと。
気をつけたいのは、シグマの記号で囲まれたところを「ひとまとまり」に見ること。真ん中の行だけ見て、「234=702」って何だあ? とか思ってしまうのは間違いね。
で、Σの形を、大きなお口をあけて、数をまとめて「あ~~~ん」と食べているように見たいわけさ。まとめてごっくんと飲み込むと、合計を教えてくれる、そんなキャラクターとして見てみよう。
みんなのおやつは、合計いくら?
大きなお口のシグマくんのイメージを、より具体的にするために、こんな場面を考えてみる。
5人の子どもを連れて、おやつを買いに行った。あきちゃん、いくちゃん、うみちゃん、えなちゃん、おとちゃんの5人は大喜び。「さあみんな、好きなおやつを選んでいいよ」。5人の子どもは、こんなものを持ってきた。
さて、合計いくらでしょう。ここでシグマくんの登場。
うん、これでいいんだけど、これだと、シグマくんがおやつをみんな食べてしまいそうだ。食べられてはかなわない。だから、書き方は、こう。
そう。シグマくんが興味があるのは「数」の部分だけ。じゃあ、みんなに、自分のおやつの値段を教えてもらおう。(当然だけど、架空の値段だよ。)
では、シグマくん、お願いします。
それぞれの値段は表に書いてあるし、最初にも言ったように、子どもが100人になったら、シグマくんのお口に入りきるかどうか心配になる。だから、もっと簡単に、こんなふうに書いたりする。(シグマくんに表を見せるのを忘れないように!)
最後に、これをもうちょっとだけ、数学っぽく書いてみよう。こうなる。
$${\sum ねだん = 1100}$$
さあ。シグマのイメージがつかめたかなあ。
補足1
わざと書かなかったことを、ちょっと補足しておこう。
すぐ上に書いた式だと、シグマくんが「ええと、5人とも合計したらいいのね?」と不安になったりする。だから、「合計するのは5人全部だよ」ということを伝えるために、こんなふうに書く。
$${\sum_{i=1}^5 ねだん_i = 1100}$$
ここに突然出てきた $${ i }$$ ってのは、5人の子どもを区別するための番号で、5人が区別できるなら、どんな順番でつけても問題はない。「5人に番号をつけといたから、1番から(Σの右下の$${ i=1}$$の部分)5番まで(Σの右上の$${5}$$の部分)、全員分合計してね」という意味になる。
補足2
教科書で使われている式表現につながるように、もう1つ補足する。ここではおやつの値段の合計を考えたから、シグマ君のお口の中に「ねだん」と書いた。5人の子どもの身長を合計したいと思ったら(なぜか思ったのだ)、シグマ君のお口には「身長」と書けばいい。友達も集めて10人分の今日の気分を合計したいと思ったら(なぜか思ったのだ)、今日の気分をむりやり数字にしてもらってから、シグマ君のお口の中に「今日の気分」と書けばいい。
つまり、シグマ君のお口の中には、「何を合計するか」を言葉で指定すればいい。専門用語を使うと、変数名のラベルを書けばいい(お、なんかかっこいいぞ!)。変数名とかラベルとか、今はわからなくていいけど、「ねだん」とか「身長」とかがそれにあたる。
で、要するに数で表せるならなんでもいい。
だから(ここ大事)、とりあえず $${x}$$ とか書いておく。$${x}$$ ってなんやねん!とか言ってないで、「ああ、合計したい好きなものをつっこんだらいいのね。」と思ったらいい。というわけで、
$${\sum_{i=1}^n x_i}$$
みたいな式になるわけさ。
いつの間にか $${ 5 }$$ が $${ n }$$ になってる。よく気が付いた。だっていつでも子ども5人とは限らないでしょう。中学生35人かも知れないし、大人293人かもしれない。だから(ここも大事)、とりあえず $${ n }$$ って書いておく。「ああ、人数に合わせて変えたらいいのね」と思ったらいい。
お話終わり。伝わったかなあ~。