組織における問題発見のススメ
先日、遅ればせながらではありますが、『ニュータイプの時代』を拝読しました。
書籍の中に、今の時代「問題が希少になる」という記載があり、とても印象に残っています。
組織開発や人材開発に取り組む中で、問題の解決よりも、問題を発見する事の難しさに直面する機会が多く、問題を発見する事が組織支援の重要な要素だと感じます。
そこで、組織開発における問題発見に関して、感じるところを書いてみようと思います。
※組織開発、人材育成など細かい区分はあまり意識せず、組織を支援する上での問題発見というイメージで書いています
1.そもそも問題とは何か?
ここは教科書的になってしまいますが、問題とは「あるべき姿と現状の差分(ギャップ)」という定義です
2.どうして問題を発見する事が難しいのか?
ここも教科書的になってしまいますが、問題は「あるべき姿」と「現状」から構成されていますので、これらの具体化が何かしらの要因で難しい場合、問題発見の難易度は上がります。
3.組織開発における問題発見が難しい理由は何か?
以下の特徴が、組織開発における問題発見の難易度を上げていると感じます
※以下、問題と課題という言葉が混在しています
※問題と課題は異なる意味ではありますが、「組織問題」とはあまり言わない印象がありますので、ここでは気にせず使っています
・組織の課題は目に見えない事が多い
→採用や退職数など定量的に可視化できるものもありますが、個人のパフォーマンス、関係性、チームコンディションなどになると、状態を直接的に可視化する事が難しく、各自が「感じる」事がスタートになる
・問題への感度(感じ方)が人によって大きく異なる
→組織課題への感度は、その人の原体験やこれまでの職業経験から来る前提や価値観によって異なる
→組織に対する前提や価値観が大きく異なる人達が集まると、そもそも、それが問題であると共通認識を持つことに時間がかかる
・大きい問題ほど、ダメージは未来になってやって来る
→組織課題の多くは、未来の時間軸で考える事が大事だと思いますが、将来やってくる問題を予測して現在から対応する事は、今起きている問題に対応するよりも難易度が高いです
→例えば、中長期的な管理職の育成、組織文化、人材ポリシーの醸成などは、その代表的なものかと思いますが、前述の共有認識を持つ難しさを克服し、緊急度は低いが重要度が高い未来の組織課題に取り組む事への難しさには、いつも悩まされます
4.では、組織開発における問題発見に取り組むか?
これ!という妥当解はないのですが、複数の取り組みを愚直に続ける必要があると思っており、以下、これらは続けたいと思っている取り組みです。
・とりあえず、色んな打ち手を試してみる
→時間をかけて設計をし、狙いを定めて計画的に施策を打つ事は、何となく時代にあっていないと感じています
→人事制度運用や、管理職育成施策など、人事の取り組みは伝統的に企画、運用、効果測定の時間軸が長い印象がありますが、より軽快に思った事は試して見て、短い時間軸で補正して時には停止する方が時代に合っている印象があります
→そのようなPDCAをスピーディーに回す中で、問題の具体化や関係者の認識を合わせる事が重要だと感じています
・社員と組織に関する対話の機会を持ち続ける
→これまでの経験の中で、組織における問題の感度を高め、施策の精度を上げる事は、周囲(事業と組織の担い手である社員)との対話を続けた結果、生まれるものだと思っています
→地道ではありますが、ここは急がば回れが最善だと感じていまして、対話を繰り返す、ちょっとした取り組みのヒントが生まれる、やってみる、また対話する、というプロセスを繰り返すことで、お互いの信頼感も高まり、より精度高く問題を発見しやすくなると思います
→このプロセスは、前述の「やってみる」に対して理解を得る意味でも重要です
・複数の物差しを同時に当てる
→組織の状態や問題の発見に組織サーベイを用いる事があります。もちろんそれも重要ですが、様々な要素、認識、感情などを構造的に見て感じる必要がある組織運営において、一つの物差しだけに頼る事は、不十分な印象があります
→サーベイ、評価結果、1on1の履歴、360°など、複数の物差しを追いながら、何が現在及び未来の問題かを探る、そして、そこから得た視点を、前述の「対話」や「とりあえずやってみる」に還元する事が、より取り組みの精度を上げるのではないかと感じています
やや長文になってしまいましたが、組織における問題発見に関する雑感でした。