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【一灯照遇】No.50 人生の名優たれ

人は誰でも社会的な営みの中で、ある「役」を与えられて(あるいは自ら立候補して)演じている生き物ではないでしょうか。

私生活で言えば、「親」「子供」「夫・妻」「兄・姉」「弟・妹」「友人」など。仕事であれば「経営者」「管理者」「新人」「若手」などなど。立場や役職の違いは様々あれど、一人の人間は様々な役柄を演じながら社会生活を営んでいます。

そして日頃から仕事や生活をする上で、私たちが発揮している基礎的な能力に「読む」「書く」「聞く(聴く)」「話す」「考える」があります。これを弊社では基礎5能力と呼んでいます。

この基礎5能力を複合的に活用しながら、私たちは理解力や表現力、数値化、判断力、決断力、コミュニケーション能力などを日常生活の中で発揮しています。いわゆる仕事や生活における実務能力です。

これらの実務能力以外にも、仕事や私生活を営んでいく上で欠かせないものが態度能力です。礼儀や礼節、一般常識や素養を行動や言動にして実践できているか否か。この能力は「コミュニケーション」に深くかかわってくる領域です。


話は少し変わりますが、私も講師として人前に立つこともありますので、多くの方の職場での悩みを聞くことがあります。そして皆さん(主に新人~中間管理職)の悩みの根っこは、ほぼすべてコミュニケーションにあるというのが、私の体感です。

「上司や先輩とうまくやっていけるか…」「年上の部下との関係が…」「若い部下とのギャップが…」「部下の話を聴かなきゃいけないのはわかっているが…」など、このような悩みがわんさか出てきます。

実務能力と態度能力、どちらも非常に大切で、どちらか一方が低くても人生において何かしらの不利益を被ることがあるでしょう。そしてそれを自分では自覚できる時とできない時がある、というのが、くせものですね。

こんな例があります。
A「イヤー急に寒くなりましたねー。秋どこ行った?って感じですよねー」
B「そうですか?私は暑がりなのでちょうどいいです」
A「あ、そうですか…」

コミュニケーションを媒介するのは「言葉」です。しかし、言葉だけでは不十分。情報や意思・感情の100%すべてを相手に伝達することは至難の業でしょう。ここでは、発信者側の配慮や工夫も必要ですが、コミュニケーションは「やり取り」ですから、受信側が「発信者の心を汲む」というスキルや習慣も大切になってきます。

上の例で、BさんはAさんの問いかけに答えてはいるものの、心には応えることができていません。Aさんの立場になって考えてみると、「共感してもらいたい」「寒いという話題で盛り上がりたい」というつもりで話しかけたのかもしれません。しかしBさんからは逆の反応が。

おそらくBさんは、普段通りの反応で言葉を返したことでしょう。しかし、AさんのBさんに対する印象は、悪くはないかもしれないが、良くもない。いや、もしかしたら、もうBさんと雑談するのはやめとこ、と考えるかもしれない。

そして、そんな気持ちは当然Bさんには言いません。お互い大人ですから。知らず知らずのうちに、自分の評価が下がっていってしまうこともありうる少し怖い例えです。


やり取りを続けるためにも、Bさんは一度肯定的に受け止める方が良かったのかもしれません。「そうですねー。でもね、私は・・・」とか、言葉の終わりに「でも、寒がりの人には堪えるでしょうねー」と言ってあげれば、会話の回数は増えたかもしれません。

これには相手がどう思って話しかけたのかをこちらで咀嚼して返してあげる共感力が関わってきます。さらに、「わざわざ自分に話し掛けてくれた」という感謝や謙虚な気持ちを日頃から持っていないと、相手の気持ちには応えられなくなってしまいます。

共感することは、信頼関係を構築する上で、なくてはならないセンスです。一時期マスコミを賑わした「忖度」や「空気を読んで言わない」などマイナスな文脈で語られることもありますが、プラスになることの方が多いと思います。

感受性が豊か(喜怒哀楽に富む)な人は誰とも仲良くなることができます。
A「昨日、営業中に偶然うまいラーメン屋見つけたんよー!」
B「え、どこどこ?」

A「昨日、営業中に偶然うまいラーメン屋見つけたんよー!」
C「え!それは嬉しいね!ラッキーやん!」
さて、BさんとCさんではどちらが共感力が高いと思いますか?当然、Cさんですね。Cさんは、Aさんの言葉からは見えない気持ちを汲み取って代弁しています。

かたやBさんは、イキナリ自分本位の反応(言い過ぎかもしれませんが)。「じゃあ、俺も行ってみよ」となるだけでしょう。Cさんのように反応する人は「何がうまかった?麺?スープ?」とか「チャーシューはどう?」など相手の嬉しい気持ちをさらに増幅させてあげようと、記憶を具体化する質問をすることで会話を弾ませます。


さて、初めに戻りますが、社会生活を営む上で、私たちは何かしらの「役」を演じて仕事・生活をしています。父親という役、夫という役、社長という役、課長という役…。役を与えられている限り、演技を求められます。演技力が低いと、良い関係が作れないでしょう。

そこには、コミュニケーションを取る誰かがいるわけで、役から解放されるのは一人になった時だけ。孤独は自由の象徴かもしれません。

しかし、わがまま放題、独りよがりばかりでは美味しくて温かいご飯が食べられません。良い関係を作るためにも、良い研修がありますよ。

いきなり宣伝失礼します。
共感、傾聴、ストロークなどの受信・受容の力を身につける。
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最後にシェイクスピアの『マクベス』より
人生は舞台。人はみな大根役者。

以上

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