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日本語探偵「『鑑みる』の前の助詞『に』『を』どっちにするか」飯間浩明

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。

【か】「鑑みる」の前の助詞「に」「を」どっちにするか

日本語の助詞は揺れ動く。「水を飲みたい」か「水が飲みたい」か。前者が新しいと思っている人もいますが、実はどちらも室町時代からある用法です。私たちの『三省堂国語辞典』(三国さんこく)第8版の「たい」の項目にも書いてあります。

では、「かんがみる」はどうか。「内外の諸情勢( )鑑みて」。ここに「に」「を」のどちらが入るかも揺れています。少し前までは「~に鑑みる」が一般的でしたが、最近は「~を鑑みる」も多くなりました。そこで、『三国』では〔「を鑑みる」は新しい言い方〕と説明しました。

でも、この説明は不十分でした。『日本国語大辞典』第2版には、「鑑みる」の古い用例が出ています。たとえば、14世紀の「太平記」には〈臣が忠義をかんがみて〉。また、17世紀の浮世草子「新色五巻書しんしきごかんしょ」には〈さる天文これを鑑み〉。このように、古くは「~を鑑みる」が普通に使われていたのです。

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