クレイグ・ウィットロック著 河野純治訳「アフガニスタン・ペーパーズ」夥しい量の肉声の記録 評者・池上彰
夥しい量の肉声の記録
アメリカは、どうしてこうも失敗を繰り返すのか。失敗の経験をきちんと記録しているのにも関わらず。
アメリカは2001年9月の同時多発テロを引き起こしたオサマ・ビンラディン(本書ではウサーマ・ビン・ラーディン)を捕縛するため、アフガニスタンに軍事侵攻します。ビンラディンがタリバン(本書ではターリバーン)政権によって保護されていたからです。
圧倒的な軍事力によって、タリバン政権はあっけなく崩壊します。しかし、米軍はビンラディンを発見できません。ビンラディンを捕まえることができなければ、アフガニスタンから撤退できません。いつの間にかタリバンが主敵となり、ズルズルと泥沼の戦闘に巻き込まれていきます。結局、米軍がアフガニスタンから撤退できたのは、20年後の2021年8月でした。米軍統治に協力したアフガニスタン人スタッフを見捨てて、米軍は撤退しました。無様なものでした。
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