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LEO|ご挨拶ー他者としての自己ー

 こんにちは。詩人・翻訳者の高田怜央です。このたびミストレス・ノールにお誘いいただき、モーヴ街3番地「MAUVE ABSINTHE BOOK CLUB」の司書になりました。これより皆さまに「詩のある生活」をご紹介しながら、ともに「言葉とはなにか?」という謎に迫っていけることを楽しみにしております。

 私は、詩を書きながら翻訳をする日々を送っています。子どもの頃に夢みていたのは画家でしたが、いつの間にかこうなっていました。自らの「国語」を構築する段階でイギリスに暮らしていたことが主な要因かもしれません。思考の流れに大きく分けて2つの言語、英語と日本語があることは、身体の弱い私にとって仕事をする上での強みでもありますが、それ以上に自分自身のうちに深い謎を呼び起こすものです。

私とは一個の他者である。[Je est un autre.]

アルチュール·ランボオ「見者の手紙」より

 詩人・ランボオの遺した一文にはさまざまな解釈がありますが、これは「言語と自己」のありように関する手がかりのようにも思えます。いま私が語っている言葉は、私がつくったものではありません。けれどもそれを離れて考えることはできず、私の存在自体、言葉なしに存続することはできない。私の言葉は私そのものでありながら、他者でもあるのです。

 この感覚はきっと私だけでなく、歴史的に受け継がれてきた「他者の言語」を学び、自ら使用するようになった皆さんにも身に覚えのあることではないでしょうか。つまり私たちはいつもーーそれが母語であってもーー自分の言葉で話しながら、自分のものではない言葉を話しているのです。そしてこれは一体、どういうことなのでしょう。言葉の正体は謎めいています。

 言語という他者と、自己との関係を探ること。私はこの探求の手法を詩作と翻訳に求めています。ぜひ皆さまと、その途中で見つかる驚きや喜びを分かち合うことができますように。

高田 怜央 Leo Elizabeth Takada|詩人・翻訳者 X
横浜生まれ、スコットランド育ち。上智大学文学部哲学科卒。言葉の秘密を探っています。第一詩集『SAPERE ROMANTIKA』、対話篇『KYOTO REMAINS』。翻訳に映画『PERFECT DAYS』など。2024年、霧とリボン コラボZINE 詩と短編小説『黎明通信』(川野芽生 共著)を刊行。

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