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MEGUMI|ご挨拶—幻想と言語—

 モーヴ街3番地、MAUVE ABSINTHE BOOK CLUBの司書として新たに就任しました、川野芽生と申します。司書とは申せ、一歩踏み入れば迷宮のごときこの菫色の庭をご案内することはわたしの手に余ります。いえ、モーヴ街を探検し尽くした者などいまだかつていないに相違ありません。

 わたしがどういう者かというと、歌人・作家・文学研究者といったところでしょうか。ものごころついた頃から物語を書き始め、その後短歌を作るようになり、その間様々な文学形式に寄り道しながら今に至ります。
 六歳くらいの時から将来の夢は「作家と大学の先生」でしたが、当時のわたしは知らなかった、その両立がどれほど大変かということを。現在、文筆業と大学非常勤講師業をしながらなんとか博士論文を書こうとしています。
 要するにあらゆる言語芸術が好きで、「生まれて最初に目にしたものが言葉だった」とよく言っています。

川野芽生 短編小説集『無垢なる花たちのためのユートピア』
川野芽生 歌集『Lilith』

 「言葉」のほかに、わたしの探求しているものを表すキイワードを挙げるとするなら、「幻想」でしょうか。
 人間にとっての世界は思惟と言語によって成り立っており、現実とは実現された幻想である——と思っていて、幻想を言語によって綴ることにより世界の構成を書き換えることに関心があるのです。

川野芽生 長篇小説『奇病庭園』

 さて、これからこの空間で記していくことが、ここまでの自己紹介とどの程度関係があるのか、それはまだわかりません。ゆるやかな読書日記でも紡いでいけたらと思っております。
 でもきっと、わたしの書くことの中心にはそれらがあるはずです。
 気が向いたら覗きにきてください。

川野芽生|小説家・歌人・文学研究者 →Linktree 
1991年神奈川県生まれ。2018年に連作「Lilith」で第29回歌壇賞、21年に歌集『Lilith』で第65回現代歌人協会賞受賞。24年に第170回芥川賞候補作『Blue』を刊行。他の著書に、短篇小説集『無垢なる花たちのためのユートピア』、掌篇小説集『月面文字翻刻一例』、長篇小説『奇病庭園』、エッセイ集『かわいいピンクの竜になる』、評論集『幻象録』、歌集『人形歌集 羽あるいは骨』『人形歌集II 骨ならびにボネ』がある。2024年7月、第二歌集『星の嵌め殺し』刊行。

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