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LIBRARIAN|高田怜央の小部屋

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モーヴ・アブサン・ブック・クラブの司書、高田怜央の小部屋。詩人・翻訳家。「詩のある生活」を通して、ともに「言葉とはなにか?」という謎を探りませんか。
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#松下さちこ

松下さちこ《1》|私のお気に入りの、ほんの一部《1》

 蓋を開けると、ハミングが聞こえる。甘やかな旋律。かすかな声が、だんだんと大きくなる。そして歌になる。はっきりと聞き取れるようになる、魔法の言葉。  松下さちこさんのイラストは、まるで秘密の菓子箱のよう。鏡台の引き出しにひっそりと仕舞ってあるとっておき。それもひとつではない。「これは私のお気に入りの、ほんの一部」。さちこさんは、私たちにこっそりウィンクする。  花だけでは足りない私のもとに、純白のお菓子がやってくる。耳元で歌を歌い、目の前で踊りを踊ってみせる。いつか古い映

松下さちこ《2》|私のお気に入りの、ほんの一部《2》

  松下さちこさんの引き出しの秘密の菓子箱。甘やかな旋律はまだまだ続く、まだ続く。アイスクリーム、ショートケーキ、マカロン、パフェ。さちこさんの魔法は、わたしたちの心をデザート皿に変えてしまう。  「甘く/冷たく/澄み渡る/ダンス」(高田怜央「ジェラート」『SAPERE ROMANTIKA』)。アイスクリームをひとくち。もうひとくち。胸にすっと溶けゆく感覚。冷たい宝石になるわたし。 *  砕けない宝石、やわらかな宝石、包み込んでくれる宝石。ショートケーキ、ささやかな休日