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LIBRARIAN|高田怜央の小部屋

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モーヴ・アブサン・ブック・クラブの司書、高田怜央の小部屋。詩人・翻訳家。「詩のある生活」を通して、ともに「言葉とはなにか?」という謎を探りませんか。
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#菫色の実験室

LEO|ご挨拶ー他者としての自己ー

 こんにちは。詩人・翻訳家の高田怜央です。このたびミストレス・ノールにお誘いいただき、モーヴ街3番地「MAUVE ABSINTHE BOOK CLUB」の司書になりました。これより皆さまに「詩のある生活」をご紹介しながら、ともに「言葉とはなにか?」という謎に迫っていけることを楽しみにしております。 *  私は、詩を書きながら翻訳をする日々を送っています。子どもの頃に夢みていたのは画家でしたが、いつの間にかこうなっていました。自らの「国語」を構築する段階でイギリスに暮らして

松下さちこ《2》|私のお気に入りの、ほんの一部《2》

  松下さちこさんの引き出しの秘密の菓子箱。甘やかな旋律はまだまだ続く、まだ続く。アイスクリーム、ショートケーキ、マカロン、パフェ。さちこさんの魔法は、わたしたちの心をデザート皿に変えてしまう。  「甘く/冷たく/澄み渡る/ダンス」(高田怜央「ジェラート」『SAPERE ROMANTIKA』)。アイスクリームをひとくち。もうひとくち。胸にすっと溶けゆく感覚。冷たい宝石になるわたし。 *  砕けない宝石、やわらかな宝石、包み込んでくれる宝石。ショートケーキ、ささやかな休日

金田アツ子|名曲喫茶のブーケ

 東京にはまだ、訪れたことのない名曲喫茶がたくさんある。うっかりしているうちになくなってしまった場所もある。さみしい。  けれども金田アツ子さんの出してくれる昔ながらのデザート菓子は、いつまでたってもなくならない。遅くなってもいつも出迎えてくれる、わたしが来るより少し前の街の記憶。 *  まるで塔のようにそびえ立つ色とりどりの花々。しかしそれは花器ではなく、デザートプレートに載せられてやってきた。  終わりもなく始まりもない純白の円形に、いつまでも褪せることのない菫色