短歌15首連作「さざなみ」/髙山准
「泊まるなら要クッション」がもう楽しい 金輪際ないパーティになる
全員がケーキを買って ばかみたい ケーキで全部埋まる冷蔵庫
こんな鍋家庭科でしか使わないみたいな鍋が戸棚から出る
選ばれし者はこたつに選ばれぬ者はベッドに最初はグー
豆乳とごま坦々の議論ののち、寄せ鍋になる関係性だ
ヘーそれで? その人って今何してる? 脈なしじゃない? クリスマスだよ?
じんぐるべ新しい恋を始めなさいエノキを多く入れておくから
サンタって、からの会話はそれぞれのサンタを思いかえすさざなみ
終電で帰る子たちを見送って買い足す缶チューハイの重量
売れ残るケーキどんどん値下がって明日には無料になりそうな
酔っ払い通報されてもしらないよジャングルジムに引っかかる足
うわ雪じゃん、チャリ乗れない、のチャの声が掠れて冬が喉元に来る
手渡せば「サンタだね」って笑われる こんなチョコレートの一粒で
また一人また一人と閉じていく瞼ケーキの残りしまっておくね
雑魚寝雑魚寝、雑魚寝の海に揺蕩ってこのさざなみも思い出になる