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シュツットガルト・バレエ団「椿姫」11月8日 感想

出演

マルグリット:エリサ・バデネス
アルマン:フリーデマン・フォーゲル
マノン:アグネス・スー
デ・グリュー:マッテオ・ミッチーニ
プリュダンス:マッケンジー・ブラウン
ガストン:アドナイ・ソアレス・ダ・シルヴァ
ムッシュー・デュヴァル:ジェイソン・レイリー
オランプ:ディアナ・イオネスク
伯爵N:ヘンリック・エリクソン

https://www.nbs.or.jp/publish/news/2024/11/-2024117.html


ノイマイヤー版『椿姫』シュツットガルト・バレエ団が狂おしいほどの恋物語を描く

バレエ『椿姫』は、シュツットガルト出身の振付家ジョン・ノイマイヤーが手がけた作品で、アレクサンドル・デュマ・フィスの小説を基に1978年に初演されました。ショパンの旋律にのせて、高級娼婦マルグリットと青年アルマンの愛の悲劇を描き出しています。

ショパンの名曲とノイマイヤー革新の演出で魅了する舞台
ユルゲン・ローゼによる舞台装置は、最小限の家具でシンプルに構成され、1840年代の雰囲気を巧みに再現しつつ、マルグリットの華麗で儚い衣装もまた、美しく優雅な舞台の象徴です。
ノイマイヤーの演出も独特で、オーケストラピットの両側にある観客席に向かってステージが伸び、観客を一層深く物語に引き込む没入感が生まれています。
全編を貫くショパンの美しい旋律が、キャラクターたちの内面の葛藤や激しい愛の物語を際立たせ、舞台を包み込みます。当時としては斬新だったリフトや照明演出が多用され、場面ごとのドラマチックな感情を視覚的にも引き出している点が『椿姫』の見どころです。

キャストの演技と物語の核心

物語は、マルグリットの死後、彼女の所有物がオークションにかけられる回想シーンから始まります。映画『オペラ座の怪人』を彷彿とさせるこの設定は、1世紀前の恋人たち、マノン・レスコーとデ・グリューの物語との巧みな対比を生み出し、主軸の物語に深みを加えています。
エリサが演じるマルグリットは、凛とした存在感と儚げな雰囲気を纏い、流れるようなポールドブラと美しいシェネが印象的でした。
フリードマン・フォーゲルが演じるアルマンは、少年のような純粋さと無謀な自己顕示欲に満ち、マルグリットへの愛に夢中です。彼の豊かな表情とボディランゲージは、美しいラインを際立たせ、観る者を魅了しました。

物語の核である3つの豪華なパ・ド・ドゥでは、多くの難度の高いリフトや床に倒れこむような振付が愛の行方をドラマティックに表現し、宙に舞うマルグリットは愛の始まりから別れまで複雑な感情を繊細に描き出していました。最後には、マノンが恋人の腕の中で、マルグリットが孤独に、それぞれの悲しい結末を迎えます。この場面は、マルグリット、マノン、デ・グリューの3人によるパ・ド・トロワで演じられ、涙が止まりませんでした。

3時間という長さを感じさせない充実した舞台で、『椿姫』は本当に素晴らしい夜を演出してくれました。

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