黄色い翼

『本日の試合の結果を受けまして宇都宮ブレックスの東地区優勝が決まりました』

涙でぼやける私の視界には、みんなの笑顔はとても輝いていた。そんな最高の1日の記録。

残り3試合までもつれる大混戦だった。
シーズンのほとんどを2位で過ごし、勝てども勝てども追い越せない、そんなシーズンだった気がする。周りからは強すぎると言われたけれど、そんなことは誰1人として思ってなくて常に反省と前進を繰り返し長いシーズンを戦ってきた。それが結実した気がして本当に嬉しかった。

優勝のかかった前節のアルバルク戦、ホーム最終試合だった。ペースを掴めず、追い上げるけど追い越せない、リーグワンツーを走る2チームの地区優勝争いは熾烈を極めた。結果は敗戦、ホームで優勝を決めることは叶わなかった。ホーム最終節の挨拶、笑顔はあれどどこか全員悔しそうだった。

迎えた翌週、相手は千葉ジェッツ。ブレファンならあのバレンタインのトラウマがまだ消えていない。真っ赤に染まる敵地でなんとか1勝を挙げた。千葉ジェッツ戦はブレックスファンにとっても選手にとってもきっと何としても勝ちたい試合だった。試合後笑顔で退場する選手たちを見れて幸せだった。少しだけ2月のトラウマが晴れた気がした。

そしてその夜、私は居酒屋で仲間とアルバルク東京戦を観ながら打ち上げをしていた。相手は群馬、一進一退の攻防で息を呑む展開だった。なんで関係ないチームの試合を？と思うだろうが、この試合の勝敗によって明日ブレックスの地区優勝が決まるからだ。頼んだ料理が全て冷めるほど食い入るように試合を眺めた。残り30秒が永遠に続くそんな試合だった。そして群馬が勝利した。

明日必ず優勝しよう、祝勝会は決起集会に変わった。

そして次の日、優勝がかかった一戦。
ファンも気合が入っていた、これは体感だが前の日の2倍声が出ていたと思う。こう言ってはあれだけど、あの因縁の地で優勝を決めたいと言う気持ちも多少あった気がする。

流石千葉ジェッツ、そう上手くはいかない。
一進一退の展開で、なかなか突き放せないゲームだった。それでも大きくなる声援、それに応える選手たちブレックス一丸で戦ってたと思う。後半の立ち上がり、魔の3Qなんて言われるほど苦手だったのに、カチカチのディフェンス一気に点差をつけた。それでもあのトラウマを抱えた我々は一切気を抜かずに最後まで黄援した。

そして迎えた試合終了20秒前、自然と涙がこぼれ落ちてきた。目の前で嬉しそうにハイタッチするブレメンをみて、何かが決壊した。いつも通りマコはギャビンに押し潰されたりしてるけど、心底嬉しそうなみんながそこにいたから。ずっと最強を背負ってくれたこのシーズンが一つ記録として残ることが心底嬉しかった。

周りからは最強だって言われたけど、楽に進んだシーズンでは決してなかった。怪我人だってたくさん出た。エースで負けた試合もあった。最後の最後に逆転した試合もたくさんあった。連勝は気にしてないとは言っていたけどきっと見えない何かがのしかかることもあったと思う。そんなチームが東地区最強として刻まれる、こんなに嬉しいことはない。

敵地でひっそりと行われる地区優勝セレモニーはブレックスらしく少し様子がおかしかった。でもそれも含めて私の大好きなブレックスがそこにいた。おちゃらけDJにTシャツぴちぴちエース、賞金ボードをいの一番に持って帰るサッサノリオ、天敵もいつも通り天敵していた。ああ、この人たちを応援してきてよかった。こんな景色を見せてくれてありがとうだった。

ベンチ裏ではコールリーダーさんを中心に泣きながらみんなで喜びを分かち合った。苦しいシーズンだった昨シーズンを乗り越えてみんな共に戦った仲間だ。新参も古参も関係ない年齢も性別も関係ない、あったかい空間だった。私はここにいれて幸せだと思った。ずっと涙が止まらない私たちに、ほら泣かないのまだ本番はCSだよなんて声をかけてくれる人たちも目が真っ赤になっている。黄色い翼はあったかくて優しくて強い人たちだ。

完全に調子に乗っていた私はコールリーダーさんにじゃあ、優勝しましょう！！またCSで！！なんて声をかけて帰った。今思えば相当浮かれていた。地区優勝はゴールじゃないけどやっぱり優勝という響きは最高だから仕方ない。

そのあと友と合流し、本当の祝勝会をした。
この瞬間が今シーズンのハイライトだ。

また横浜で会おうそう誓った。

この願いは来シーズンに持ち越しとなってしまったけれど、幸せなシーズンだった。たくさんの人に出会い楽しくシーズンを送れた。ブレックスに出会わなければ交わらなかったと考えるとすごく大切な巡り合わせに感謝したい。


来シーズンも黄色い翼となってブレックスの背中を押したい。できることなら一番上でみんなで笑えますように。

最高のチームだった23-24シーズンのブレックスに愛を込めて。