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上手な休職期間中の過ごし方


この記事を回答してくれた人:宮園さとみ(公認心理師、精神保健福祉士、キャリアコンサルタント)

休職直後の方へ

もし休養直後の方がこの記事をご覧になるとしたら、どんなことをお伝えしたいかを考えながら書きました。
症状によっては、文字を数行、目で追うことがお辛い方も多いかと思います。
読んでいて、すぐ疲れる、頭が痛くなる感じがあれば、無理をせずに休んでください。

……そうお伝えするだけなら簡単なのですが、メンタル不調による休職において厄介な点は、「休まらない」場合があることです。

主治医や周囲から、「ゆっくり」「無理せずに」「休養してください」といった言葉をかけられても、眠れなかったり、とても強い不安や焦燥感が辛かったりといった症状に悩まされて、心も身体も、休めた感じがしない……
そんな休職直後特有の辛さを感じる方も、多いのではないでしょうか。

それは、心身に負担がかかっていることで「普段の自分」と違うと感じることが関係していると思います。

例えば、休職することで長期間仕事を離れることになり、いつも以上に強い自責感や、他の人に迷惑をかけたと罪悪感を感じたりする場合。
いずれも、メンタル不調の症状によって気持ちの切り替えや、割り切ることが難しくなるためだと考えられます。

また、メンタル不調の状態は、「普段の自分」とのギャップに戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。


休み方は、身体的なケガの場合も参考に

目に見えないけれど確かに感じている「不安」や「辛さ」とどう付き合うか、カウンセリングに来られた方と一緒に抱えて考えることも、カウンセリングの役割なのかなと、思っています。

では、休職期間中の休み方とは、具体的に何をすれば良いのでしょうか。

心の問題は目に見えずイメージしにくいですので、「スポーツ選手の怪我」を事例に考えてみましょう。

例えば、長距離ランナーが骨折をした場合、骨折の痛みという症状の他に、思い通りに足を動かせない「普段の自分との差」へのショックや、以前と同じように走れるようになるだろうかといった、未来への不安を感じるかもしれません。

このような点から、メンタル不調と身体の怪我の間には共通点が多く、よく例えに用いられています。

そして、よく似ているのであれば、休み方や回復の方法についても参考になる点があるように思います。

怪我をした直後は、とにかく病院のベッドで安静にして「休養」に専念するのが一般的です。
骨折の痛みという「症状」に対しては、痛み止めなど必要な「対処法」をとりつつ、それでも痛みが完全にはなくならない中で、じっと安静を保つことも必要かもしれません。

休養をとる中で骨がくっつき始めたら、程よく負荷をかけながら「リハビリ」を始めて、立つ、歩く、走ると順を追って回復していきます。

この「休養」→「リハビリ」という流れは、メンタル不調での休職の場合も同様です。
これには、メンタルの不調にも身体的なダメージが関わっている場合が多いことも関係しているかと思います。例えば、何日も不眠が続くと脳が普段どおりに活動できなくなることや、長期的なストレスが健康リスクにつながることが知られています。


メンタル不調の初期は、肉体的な回復を重視してみる

「不調」というと、漠然としていて、どう対処すれば良いかモヤモヤするでしょう。
不安が大きくなる場合は、まずは身体の怪我と一緒だと考えて、初めの頃は肉体的な回復を重視してみるという今回紹介した骨折を例にした考え方は参考になるかもしれません。

なるべく、寝心地の良い環境で寝てみる。身体が受けつける胃に優しく栄養価のある食事をしてみる。
そして、不眠や不安などの症状で、肉体が休まらない等の場合は、主治医の先生と相談した上で、薬の力を借りることも助けになるかと思います。

そして、睡眠と栄養の休養を十分に摂った後は、リハビリについて、いつから、どれくらいの負荷で始めていくか、主治医の先生と相談しながら進めていく流れになることが多いと思います。
主治医の先生や職場によっては、リワークをお勧めされる場合もあるかと思います。

さて、この記事では休職直後に注目して、「上手な休職期間中の過ごし方」を考えてみました。
次回は休職のリハビリについてご紹介します。日常生活を取り戻そうといきなり100%の力で働こうとすると、かえって心には逆効果です。
どのように復職していくことが自分にも周りにも適切なのか、一緒に考えたいと思います。

最後まで、読んでいただき、ありがとうございました。

文:宮園さとみ
編集:メザニン広報室

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